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ホーキンス侯爵は覚悟を決める


(これは駆け引きだ…………。ヴァージニアさんが言う程この侯爵って人は馬鹿じゃない。生き残る処世術に長けているんだ。これが本物の論戦って奴か。互いの本心を隠して腹の探り合い。貴族って奴はいつもこんな事をやっているのか?)

 

 ハルトは本物の駆け引きに魅入っていた。

 カードゲームにも似た騙し合いのスリルがそこにある。


「然らば、最初の問いの答えです。侯爵様に残された手立ては、他国に亡命するか、全財産を聖教会に寄付して傘下に入るか、身分を捨てて野に下るか、何処かに身を潜めているヴァン公爵と合流して、敵に勝つしか道はございません。今のままでは待っているのは破滅への道」


 上の者へ進言する顔が強ばった。


「むう! 口惜しや。あんな化け物達相手でなければ委託金を払って出陣を辞退したのに。配下の言葉を鵜呑みにするものではない」

「侯爵様は公爵様の居場所を御存知ではないのですか?」

「騎士団長は警戒心の強いお方だ。幾ら同じ上級貴族でも外に情報を漏らすという事は有り得ないのだ」

「………………そうですか」


 シュレリア男爵は娘の前で普段見せたことのない険しい表情するが、それは一瞬で鳴りを潜める。

 周囲の行軍中の騎士達はその迫力でたじろぐが、何を言ったのかは分からなかった。


「話していれば新たな手が見つかるかと思っていたが、分かったのはわしが八方塞がりの絶望的状況だという事を再確認しただけか」

「お役に立てず申し訳ございません」

「よい。それに騎士団長が名うての戦上手でもこの絶望的状況を覆えすのは不可能であろう。そろそろ年貢の納め時か」

「このアルベルト・グリズ・ソード、如何なる状況下であろうと騎士道に則り最期まで貴方をお守りいたしましょう」

「そうかそうか。それは心強い」


 これが建前なのか本音なのか、間近で聴いていたハルトでも判断つかない。

 ただ、これが茶番劇ならお互い相当なタヌキではないかと、溜飲が込み上がるのを堪えながら参考にしようとスマホで書き留めていた。

 ちなみに嘔吐が酷いのは、緊張と食べ過ぎが原因なのはここだけの秘密。


「――――侯爵様、申し上げます! 平原に展開している兵団あり!」


 伝令が先行していた斥候から入った一報を伝えた。


「むう、もう集まっているのか? 早いのう」

「伝令殿、何処の軍団か分かるかな?」

「さあ、承知しておりません」

「陣容は?」

「分かりません」

「旗は?」

「確認しておりません」

「数は?」

「多いです」

「…………この愚か者がぁぁ! それでは斥候の意味がないではないか!」

「ひっ! なんだその言い草は! 私は伯爵家の三男なんだぞ!」


 如何にもなめきってる伝令は口答えする。

 事の重要性をまるで分かってない。

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