33話 ギャレク教
俺が転送されたのは、薄暗く陰気な場所だった。
それなりに広い部屋で、窓がないため、太陽の光一切入ってきていない。ランタンがいくつか壁にかけられており、それだけが部屋を照らしていた。
周りに黒いローブを着た者が、複数いる。
「持ってきなさい」
ミエはその者たちに命令をした。すぐさま動き出し、しばらくして緑の液体が入った瓶を持ってくる。
「これが何かわかる?」
「分からん」
「なら教えてあげる。守護騎士は死ななければ、守護騎士を止めることが出来ないと言われているが、この液体『解任液』を飲んだ後、自分の口から守護騎士を止めると言えば、守護騎士を止めることができる」
「……俺を守護騎士からやめさせたいのか?」
「そう。あなたはその子の守護騎士には相応しくない」
「どういうことだ」
「詳しく知る必要はないわ。ただ、忠義の聖女は、通常の聖女とは違い特別だってことは言っておく。あなたなんかが守護騎士になるのは、大きな問題がある」
癪に触る言い方である。
しかし妙である。そんなに俺を守護騎士からやめさせたいのなら、ここで殺せばいい。
ミリアを人質に取られ、手足を完全に縛られた状態では、抵抗など出来るわけもない。
「なぜ殺さないか不思議? それが我々ギャレク教の教えだからよ。いかなる理由があろうと、人を殺めてはいけない。だから殺せない」
やはりこいつらはギャレク教の奴らか。
まあ、分かっていたことではあったがな。
「……それじゃあ、ミリアの首にかけている剣はこけおどしか?」
「そう。まあ、彼女は教えがあろうとなかろうと、殺すことは不可能。痛い目に遭わせるのもやめておきたい」
虚仮威しだろうと、すでに拘束された時点で、もやは反撃することはできない。
「それで、あなたには彼女と一緒にいる資格がないわ。だからこれを飲んで、守護騎士をやめると言って欲しい」
「誰が聞くかそんなこと。俺の何がミリアに相応しくないというんだ」
「単純に力量、知恵、品格、どれを持ってもあなたは平凡。彼女のような特別な聖女には、特別な人間が守護騎士にならないといけない。あなたごときでは不適格」
好き放題言いやがって。
しかし自分が特別な人間でないことは百も承知しているので、言い返すことは出来ない。
所詮守護騎士の力がなければ、俺などどこにでもいる平凡な冒険者に過ぎないのだ。
「とりあえず三日待つ。その時にポーションを渡すから、その時、飲む気になってなければ、殺せはしないけど拷問をする。守護騎士はそう簡単には死なないから、多少厳しい拷問でも、耐えられる。地獄を見ることになる」
拷問。
その言葉に背筋が震える。
密偵をやっていたわけではない俺は、拷問を食らった経験など当然のごとくない。
手足を動かせない状態だと、甘んじて受けるしかないだろう。
「さて三日間牢に閉じ込めておく。三日やるからゆっくり考えることだ。どうするのが最善の道かをな」
ミエの指示にしたがって、黒いローブの者たちが、俺とミリアを牢に運び、閉じ込めた。
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