30話 これから
メーリスを仕留めた後、俺はイリーナたちと合流した。
二組とも、敵を逃したようだ。
「よく仕留めたわね。やっぱりあなたの分身、結構使えるわ。堕落の聖女が一人仕留められたとなると、連中にとっては大きな痛手よ。これからは積極的に動くことは出来ないでしょうね」
と俺の働きを称賛した。
それから一度隣町まで行き、黒い鎧の連中が来るかを待つ。
拐われた女性たちは帰って来なかったが、黒い鎧の連中が来ることもなかった。
拐われた女は、高確率で殺されているだろうと、イリーナは言った。生かしておくメリットが全くもってないからだそうだ。
俺たちは大聖堂へと帰還した。
「とにかく今回はよく頑張ったわ二人とも。何か報酬を上げないといけないわね」
「そんなもんくれんのか?」
「ええ、いい働きをしたものは当然、良い報酬を貰うべきよ。お金と物と、どっちが良い?」
金と物ね。
夜フラつかない限りは、聖堂の外には出て良いんだよな。今回、メーリスを倒したから、連中の動きも慎重になるだろうし。
ここは金を貰うのが良いかもな。
「金で」
「分かった。ミリアちゃんは?」
「わ、わたしですか? わたしは何もしていないので、もらえませんよ」
「バリアで攻撃を防いだじゃないか」
「あれだけです。あれ以外はまったく何も出来ていません。動きが早すぎて何も見えませんでした」
ミリアは少し悔しそうだ。
どうやらもっと活躍したかったらしい。
「まあまあ、守護騎士は聖女の力を借りて活躍しているんだから、リストの活躍はあなたの活躍も同じみたいなものよ」
「でも、リストさんにはお金わたしているじゃないですか」
「そ、それはそうだけど、もう、細かいこと気にしないの。わたしが上げたいからあげるんだから。どっちがいい?」
何とも強引な理屈を言う女である。
ミリアも観念して、物がいいですと返答した。
後日、俺は結構大金を貰った。予想より大きな金額で驚いた。
ミリアは何やらネックレスを貰ったようだ。
気に入ったみたいで、貰ったその日から常に身に付けるようになった。
ここでの初仕事を終えて俺が考えていたことは、報酬がちゃんと貰えるのなら、この仕事も悪くはない、と言うことだった。
元々俺は冒険者だからな、危険な場所に命がけで行ってきて、金を稼ぐ。
そう考えると、生活としてはそこまで変わらない。
まあミリアを戦地に連れていかなければならないのは、問題ではあるのだがな。
だが結局何をしようと、ミリアを完全に安全な場所に置くのは、それこそ要塞かどっかに閉じ込めるしかないと思う。それは可哀想であるからな。
戦いでは俺が守ってやればそれでいい。
ここでずっと暮らすのも悪くはないと、初仕事を終えて、俺は思った。




