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26話 覚醒

 五日間が経過した。


 ミリアは一生懸命修行を行い、硬いバリアを張ることが出来るようになった。俺の攻撃を一撃なら防げるほどの硬度だ。


 俺はというと、分身の操作を練習した。

 以前より少しではあるが上達したと思う。


 ここでの生活にもだいぶ慣れてきた。

 大聖堂内で一緒に生活している者たちは多いが、良い人が多いので不満はない。


 ただミリアがあまり俺以外の人間に心を開かないのは、少し困っている。


 大聖堂では、身寄りのない子供達を引き取ったりしており、ミリアと同年代の子供たちも多いのだか、全く関わり合おうとしない。


 一度、子供たちと仲良くしたらどうだ? と促したのだが、


「別に良いです」


 と素っ気なく返事をした。


 まあ、誰にも心を開かない子だったからな。

 俺に心を開いてくれたけど、なかなかほかのものにも同じようにはいかないのだろう。


 もうちょっと時間が経てば、少しずつだが、他人と交流するようになっていくかもな。


 さて、これからいつも通り訓練を行う。


 ここに来てから、まだ仕事をしていない。

 ひたすら訓練に明け暮れていた。


 イリーナとリリナ、そしてもう一組の聖女と守護騎士である、トリシャとロブも、俺と一緒に訓練をしていたので、元々そんなに仕事をするわけではないようだ。


 敵の居場所を突き止めて、倒しに行くのが役割みたいなことを言っていた気がするから、まだ居場所を特定できていないのだろう。


 居場所を探すのは、聖女と守護騎士でなく、普通の聖堂騎士が行なっている。


「あ、リスト、ミリアちゃん」


 背後からイリーナに声をかけられた。


 振り向いて確認すると、イリーナは少し焦っている様子である。

 何かあったのだろうか。


「ちょうどいいところにいたわ。今から初仕事よ。急いで準備をしてちょうだい」



 ○



 数日前。


 エルシーダ会、アジト西支部。


 ロウソクの灯りがわずかにあるだけの薄暗い洞窟の中に、大勢の黒い騎士と、それを従える女が二人。


 一人は堕落の聖女、メーリス・バライシャ、そしてもう一人は、


「ごめんなさい、アイリスちゃん。失敗しちゃったわ。負けたあと、大聖堂に連れ去られちゃったみたい。これじゃあ、もう難しいわね」


 アイリスと呼ばれた女は眉を潜めた。

 背丈は低く細身の女だ。

 髪は赤く、ツインテール。黒く露出度の高い服を着用している。


「例のガキ聖女の事か」

「ええ、そう。怒ってる」

「怒っている。お前は相変わらず戦闘力が低い」

「ご、ごめんなさいね〜」


 メーリスは苦笑いを浮かべる。


「我々は、大陸西側で信仰されているアレスト教の聖女たちを全て堕落させろとの任務を仰せつかっている。そのためにはまず、戦力が足りない。この支部には、お前と私とファシアしか、堕落の聖女がいないのだからな」


 エルシーダ会は世界各地にアジトを作っている。

 リーダーのエルシーダがいる本拠地は、大陸中央にあり、このアジトは西側だ。


 エルシーダの野望は、全ての聖女を堕落させること。

 なぜそんなことをするのかというと、堕落の聖女の特性として、通常の聖女を堕落させたくなる、というものがあるからだ。


 彼女たちは、とにかく酷い目にあって堕落させられる。しかし、堕落した後は、不思議と自身を堕落させた者を憎む事なく、仲間のように慕うようになる。

 そうして、エルシーダ会は仲間を増やしていった。


「間違いなく大チャンスだったのだな」

「だから謝っているじゃない」

「謝って済む問題だと思うな愚か者が」

「むー」

「ここはやはり貴様を覚醒させるしかないようだな」

「え?」


 覚醒という言葉を聞いて、メーリスは先程までおちゃらけていた表情を青ざめさせる。


「あ、あの冗談だよね」

「冗談ではない。今は少しでも戦力を上げなければいけない時期である。お前を覚醒させたあと、大聖堂の奴らを何らかの方法でおびき寄せて打倒する。今できるのはこれくらいしかない」

「で、でも、覚醒は……」

「これは命令だ。私に背く気かメーリス」

「うっ」


 アイリスはこの西支部のリーダーであり、メーリスより実力は数段も上だ。

 普段は友達のように接しているが、命令をされると聞かざるを得ない。


「ね、ねえ、私たち友達でしょ? だったら、こんな事……」

「友達だからこそ願うのではないか。お前が覚醒して強化されるのを」


 メーリスがここまで怖がるのには理由がある。


 堕落の聖女は守護騎士に与える力を、自分で使えるようになっている。しかし、覚醒をしていないものは、特殊スキルを使用できない。覚醒したら使えるようになり、強くなれる。


 やった方が得なのだが、問題は覚醒の方法である。


 簡単に言えば、聖女が堕落した時と、同じような目に遭わなければ覚醒はしない。

 堕落するときは、強烈な拷問を受ける。さらに超回復がある場合は、死ぬ可能性がひくくなるため、拷問は苛烈さをまし、地獄を見せられることになる。


 メーリスは、一度他人が覚醒させられるのを見て、絶対に嫌だとトラウマになっていた。

 彼女が嫌がるのも無理はない。


 しかしアイリスは、やめる気はさらさらない。


「とにかくお前には覚醒してもらう。準備を始めろ」

「い、いや!」


 逃げ出そうとする、メーリスをアイリスは捕まえる。


 圧倒的な力で背後から掴まれて、動くことすらできない。


 黒騎士が、数々の拷問道具を用意する。メーリスの顔は恐怖に歪み、涙がとめどなく溢れさせている。


「では、始める」

「いやあああああああああ!!!!」





 数日後、無事覚醒に成功した。


 アイリスは、拷問中、アレスト教の聖女を堕落させるための作戦を考え、メーリスが覚醒してすぐ、行動を開始した。






次回、今月31日に投稿します。

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