22話 結論
さて、どうするべきか。
部屋に戻り俺は悩む。
正直、話としては受けた方が得が多いと思う。
奴らを信用出来るかどうかがすべてだ。
仮に連中が俺をだましているとすれば、どうなるだろうか?
危険で普通はやらないような仕事をさせらるとか。
もしくは、何らかの実験の材料に知らず知らずのうちに使われるとか。
非道な任務をやらされるとか。
どれもあり得なくはないな。
そう言えば真実球と言うのがあったな。
あれを使って、それらの仕事をさせる気はないと、確認してみるか?
いや、駄目だ。
真実球が実際に、嘘と本当を見分けることが出来ることは、間違いないだろう。
あれは奴らの所持している道具だ。
結果をいじることが可能かもしれない。
信用してはいけないだろう。
やはり連中が信頼できると確信を持つということは、難しいかもしれない。
連中が信用できないとなると、エルシーダ会というのも事実なのかというのに、疑問はあるが……。
ただあれは実際に、襲われているからな。
俺たちのところにピンポイントに攻撃してきたし、聖女の居場所を特定する何らかの方法があるというのも、嘘は付いていない可能性が高い。
連中がかなり強いというのも事実だろうから、やはり自分たちだけで身を守るのは難しいという結論になる。
やはり最初は連中の仲間になると言って、やばいことをされそうなら逃げる、というのがベストな選択かもしれん。
イリーナは、守護騎士には特殊スキルがあり、仲間になればそれを使えるようにするとも言っていた。
本当かどうかは分からないが、強くなれるというのは悪くない話だ。結局最後に信頼できるのは、自分たちの力だけだからな。
「あの……リストさん……」
ミリアが不安げな表情を浮かべながら、俺の名を呼んできた。
考えているあいだ、一言もしゃべらなかったから、不安にさせたかもしれない。
「ミリア大丈夫だ。結論は出た」
「そ、そうですか……わたしはリストさんのきめたことなら、たぶん正解だと思います」
そう信頼されると、逆に不安になってくるな。
正直、俺は何度も人に裏切られていたような人間だからな。
他人の裏とかを読むのは、あまり得意ではない。
それでも、ここは一度仲間になるという選択をした方が、安全だと思うが……。
ここで不安になったらミリアに伝わってしまう。
これが間違いなく今の最善だ。
頭の良い方ではない俺の選択など、間違っている可能性は低くはないとは思うが、今はその選択を信じることにした。
翌日。
「お前らの仲間になる」
イリーナにそう告げた。
「あなたは正しい選択をしたわ」
微笑を浮かべながら、イリーナはそう言った。
「早速、特殊スキルを使えるようにしましょう」
「今からか?」
「ええそうよ。嫌?」
「いや、そうではないが」
こんないきなりなのか。
多少は仕事をさせてからだと思っていた。
「特殊スキルがないと、役に立たないのよね。じゃあ、付いてきて」
そう言ってイリーナと、守護騎士のリリナが歩き出す。
しかし、このリリナという守護騎士は、全く喋らないな。
最初脅されたとき、喋っていたが、それ以外声を聞いた記憶がない。
いつも仏頂面で、イリーナのあとに付いていっている。
まあ、そういう人もいるか。喋るのが苦手なのだろう。
俺たちは大きな部屋に案内された。
部屋の中央に魔法陣が描かれている。
「この神聖陣の中央に乗って」
魔法陣ではなく、神聖陣というみたいだ。似たようなものか。
言われるがまま、神聖陣の真ん中に俺は立つ。
ミリアも一緒に来たが、
「あら、ミリアちゃんは陣の外にいてね。そのくらいは離れられるわ」
そう言われ、不安そうにミリアが俺から離れ、陣の外に出る。
「では、始めるわよ」
そう合図をしたのち、イリーナが呪文を唱え始めた。




