14話 襲撃
また黒い鎧の連中か。
狙いは前回と同じくミリアだろう。
こいつらは以前、俺から逃げた。
あの時、俺が守護騎士になったことを知っているはずだ。
同じ連中なら、勝ち目がないのは理解しているはず。
何か対策をしてきたか、あの時、襲ってきた連中ではないので、俺が守護騎士になったと知らないのか、どちらかだろう。
知らないのなら蹴散らせば済むが、対策を取ってきたのなら面倒だ。
ただここは逃げるのも簡単ではないし、蹴散らすか。
俺は部屋の前に立って、連中が近づくのを待ち構える。
この中にはミリアが眠っているし、なるべく起こさないようにこいつらを倒さないとな。
連中が剣を抜き近づいてくる。
廊下は狭いので一人ずつしか攻撃できない。
俺は腰に差していた剣を構える。
「それ以上来たら斬る」
「……っく」
脅しに黒い鎧の連中はひるんだ。
俺がただの冒険者であると思っていたら、おかしい反応だ。
こいつら俺が守護騎士になったこと知っているな。
ということは、何か対策をしてきたのだろうが。
それでも怯えるのは不自然だな。
あまり頭が良くない連中で、対策も立ててないまま来たという可能性もあるか。
「はあああああああ!」
先頭の黒い鎧の奴が、斬りかかってきた。
遅い。
俺は完全に動きを見切り、心臓に剣を突き刺した。
鎧などないかのように剣は、すっと突き刺さる。
すぐに引き抜くと、大量の血を噴き出しながら黒い鎧の男は倒れた。
これでまた去ると思ったが、なぜかもう一人飛びかかってきた。
同じように殺して死体が積み重なる。
「ふーん、やっぱりあなた守護騎士なのね。こいつらじゃまったくお話にならないみたい」
いきなり女の声が聞こえてきた。
「下がりなさい」
黒い鎧の連中が下がって行く。
そして代わりに女が姿を現した。
黒い、扇情的な服を着た長身のスタイルの良い女だ。
肌の露出が非常に多い。
右腕と左足、腹の辺りに黒い変わった模様のタトゥーがある。
黒いロングヘアー。顔は美人としか言いようがないほど整っている。
……この女。
黒い鎧共の親玉か何かか?
かなり嫌な雰囲気を感じる。
俺も男なので、肌の露出の多い女には反応してしまうが、こいつはまったくそういう気にならない。
こいつは危険な奴だと、俺の本能が全力で訴えかけてくる。
「初めまして。アタシは、メーリス・バライシャよ。よろしくね」
お辞儀をして、自己紹介をしてきた。
「突然だけどあなたを殺さないといけないの。ごめんなさいね」
「俺を殺す? ミリアを狙っているんじゃなかったのかお前らは」
「ミリア? 聖女の子かしら。あなたが守護騎士になる前は、聖女の子を連れ去ればそれでよかったんだけど、今は最初にあなたを殺す必要があるわね」
離れられないという制約があるから、先に俺を殺さないと連れていけないということだろうか。
無理矢理引き離そうとしても、あの壁のせいで絶対に離れられないのだろう。
ならば確かに先に俺を殺しておいた方が、いいのだろうな。
「でもあなた中々好みの顔してるわね。死ぬ前に良いことしてみない」
いきなり誘うようなことを言って来た。
応じるわけもなく、俺はメーリスを睨み続ける。
すると、メーリスは地面を蹴って俺に飛びかかってきた。
凄まじい速度だ。
人間が出しているとは、とても思えないほど早い。
ただ俺も今は人間を超えた能力がある。
動体視力やスピードも強化されている俺は、その動きを見切った。
そして剣を振り、メーリスの腕を斬り飛ばした。
床にメーリスの腕がコロコロと転がる。
「あら、つれないわね」
何だこいつ。
腕を斬り落とされたというのに、その反応は。
妙に思っていると、
「!!」
驚くべき現象が起きた。
メーリスの腕が一瞬にして再生した。
どういうことだ。
まるで、俺の持つ【超回復】のようだ。
「仕方ないわね。じゃあ、殺し合いをしましょう」
 




