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13話 逃亡

 エメルテアは俺の額から指を離すが、視線はずっと額に注がれていた。


 何があった?

 今の光は?

 なぜこんなに俺の額を見ている?

 額に何かあるのか?


「この模様……」


 ミリアの声だ。

 さっきまでエメルテアを怖がっていたが、今は俺の額を見ている。


「ミリア、俺の額に何かあるのか?」


 小声で尋ねてみる。


「えっと……もようが描かれています」

「模様ってどんな模様だ」

「どんなですか……。うーん口でどう説明したら……。でも、この模様……。あ、消えました」


 どうやら消えたようだ。

 見ることは出来なかったが、俺の額に謎の模様が描かれていたらしい。


 守護騎士の紋章ってエメルテアは言っていた。

 つまりなんだろうか。

 それが額にあって見られたということは何か。

 ばれたってことか。俺が守護騎士で、ミリアが聖女であると。


「あなたは守護騎士ですね。状況的に考えてその子が聖女の力を持つ子と見て間違いないでしょう」


 やはりばれている。

 しかし歓迎されているようならいいが、相手の表情は険しい。

 歓迎されているようにはまるで見えない。


「その紋章、忠義の聖女の紋章……。その紋章は確か、ギャレク教の連中が盗んでいったはず……。適合者が見つかったという噂は聞いていましたが、あなたたちがそうですか。新参者の犬が、我々アレスト教に何のつもりで来たのですか?」


 エメルテアは俺を睨みつけながらそう言う。

 何を言っているのかまったく理解出来んが、怒りをかっているのは間違いない。

 たぶん誤解で怒っていると思うので、ここは晴らしておかないといけない。


「おい、正直あんたの言っている事は理解出来ないが、たぶん誤解だと思うぞ。俺たちは聖女について何も知らないんだ」

「無知を装い私に取り入りますか。残念ながらその手には乗りませんよ」


 エメルテアは、二回手を叩いた。

 するとガシャガシャと、鎧を装備した者たちが走ってくる音が聞こえてくる。

 扉が開き、白い鎧を装備した者たちが、部屋に次々と入ってきた。

 二十人くらいはいるようだ。完全に囲まれた。


「そのものたちを捕らえなさい。男の方は守護騎士ですので、加減は無用ですよ」

「はっ!」


 問答無用か!

 どうする? こんな有名な建物内で、大きな騒ぎを起こすのは非常にまずい。

 逃げた方がいいな。


 囲まれているがどう逃げる?


 俺は剣を抜く。

 そしてエメルテアに斬りかかるそぶりを見せる。

 騎士たちは咄嗟に、エメルテアをかばうように動く。

 そこで包囲に隙が出来た。

 ミリアを抱えて、その隙をつき包囲を脱出した。


「逃がしてはいけません! 追ってください!」


 エメルテアの怒声が聞こえる。


 騎士たちが命令に従い追って来るが、正直スピードが違う。

 俺の方が全然早い。

 あっさり騎士を撒いて大聖堂を出た。

 念のため大聖堂から大分離れた位置まで走り続ける。


「ここまで来れば大丈夫だろう」


 もう騎士は来ないだろうという場所まで走りきり、抱えていたミリアを地面に下ろす。


「う、ううううー」


 ミリアが凄くグロッキーな表情になっていた。


「だ、大丈夫か!?」

「は、早すぎます~……」


 早く移動しすぎたみたいで、ミリアは気分が悪くなっているようだ。


「す、すまん」

「い、いえー。しかたのないことですから……」


 フラフラなミリア。

 俺はミリアを再び抱っこして、今度は速度に気をつけて宿に向かった。



 その日の夜。

 ミリアは宿で休んで体調を取り戻した。

 今は寝る時間なので、すやすやと寝ている。

 俺は今後どうするか、起きて考えていた。


 あんないきなり捕まりそうになるとは思わなかった。

 ベルシンは、アレスト教は最もまともな教義の宗教だと言っていたが、本当なのか?

 まあ、何か誤解している風だったが。

 ただああも問答無用に来られたら、誤解を解くことも出来ないだろう。

 大聖堂から聖女の情報を聞くのは不可能だろうな。


 一つ分かったのは、黒い鎧の連中はやはり聖女と関わりがあるということだ。

 あいつらに関する噂も、真実の可能性が高い。


 これ以上の情報を知るためにはどうすればいいか。


 別の方法で調べるか、ほかの宗教の本拠地に行ってみるか。


 どちらがいいか……。


 その時、部屋の外がいきなり騒がしくなる。


 俺の泊まっている場所は二階で、一階に酒場があるのだが、一階から悲鳴が聞こえてくる。


 何だ?


 そして大勢の人間が階段を走って登る音が聞こえてくる。

 鎧を着ているみたいだ。


 まさか、大聖堂の騎士たちが、俺の居場所を嗅ぎつけたのか?

 いや、それだと悲鳴は何だったんだ?

 俺は一旦部屋の扉を開けて廊下に出てみる。


「お、お前ら!」


 黒い鎧を装備した連中が、ゾロゾロと廊下を歩いてきていた。




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