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12話 大司教

「大司教様、お客様です。お話がしたいそうですよ」


 俺はシスターに大司教がいる部屋に通された。

 たぶん大司教ってのは偉いんだろうが、部屋は結構質素な感じだ。

 偉い人がいる部屋ってのは、広く中が豪華に飾ってあるイメージだ。

 しかし、この部屋は、広いけど余計な物が置かれておらずイスしかない。

 そのイスに恐らく大司教と思われる男が座っていた。


 いや……こいつ本当に大司教か?


 俺は大司教の姿を見て、状況的に大司教はこの男である、と思うのが自然なのだが疑った。


「話ですと!?」


 男は叫びながら慌てた様子で、立ちあがった。

 そしてこちらに近づいてくる。


「ええ、こちらのお二方です。大司教様に聖女様のお話を聞きたいそうです」

「おお聖女様の! 久しぶりに私と話をしたいものが現れて嬉しいですよ!」


 やっぱこの男が大司教なのか。


 色々事情があって、人が話を聞きに来ないと、シスターは言っていたがその事情を俺は察した。


 見た目のせいだ。


 二メートルはありそうな長身。

 顔はごつい。オークとかオーガみたいな、凶悪な顔の魔物っぽい。

 鍛えているのか、全体的に筋肉隆々。


 なんつーか、普通の人間が見たら確実に恐怖を感じるような見た目だった。

 遠くから、あれは魔物だと言われれば、あっさり信じるかもしれない。

 魔物を見慣れている俺は怯みはしないが、普通の人なら怖がって近づきたくなくなるだろう。


「う……」


 現にミリアが怖がって、俺の後ろに隠れてしまっている。


「私は大司教のエメルテアです。よろしくお願いします」


 顔に似合わず礼儀正しい口調で挨拶をしてきた。


「俺はリスト・バノンだ。後ろのがミリアだ」

「可愛いお子さんですね。いくつですか?」

「七歳だ。あとあんまり顔を近づけるな。ミリアが怖がる」


 エメルテアが、ミリアに顔を近づけると、ビクビクと震えだした。


「すいません、すいません。子供受けしない見た目だと分かってはいるんですがね」


 受けないのは子供だけじゃないがな、とはさすがに失礼なので言わなかった。


「ところであなたたち信者ではありませんよね」

「そうだが、何故分かった」

「格好を見ればだいたい分かります」


 なんか着用義務のあるものでもあるのか?


「信者じゃないと質問は聞かないのか?」

「いえいえ、そんな事はありませんよ。我々の宗教は寛容を大切にしております。違う考えを持つものも認めなければならないのです。決して攻撃的であってはなりません。この寛容こそがアレスト教が、もっとも多くの信者を持つようになった理由なのです。そもそも……」

「あー、すまんアレスト教について聞きに来たわけじゃないんだ」


 何だか長話をしそうになっていたので止めた。

 かなり話したがりな男みたいだ。


「ああ、聖女様について知りたいのでしたね。なぜ信者でないのに知りたいのでしょうか?」

「ちょっと興味があってな」

「そうですか。まあ、私は大司教ですので、聖女様に関してはほぼすべての情報を知りえております。しかしながら、聖女様の情報を話すのは色々問題があるので、一般の方に話せることは限られてしまいます」

「ほう……」


 全て知っているのか。


「一般の方と言ったが、関係者になったら知ることが出来るのか?」

「ふむ、それは私くらいの立場になったら知ることが可能だといえます。ただそれは少々難しいですね。この大聖堂の大司教というのは、かなり高位なのです。自分で言うのもなんですが、中々なることは出来ません」


 聖女に関しては、すべて知ることは不可能か。

 ミリアが聖女の力を持つといえば、教えてくれる可能性はある。

 しかし、やはりリスクの高い行動であると俺は思った。

 まあ、冷静に考えれば俺の知りたい事と言えば、あの黒い鎧の連中のことだ。


 それについて教えて貰えるのなら問題はないだろう。


「とりあえず一つ質問させてもらうが、黒い鎧の連中を見たんだが心当たりはないか?」

「黒い鎧?」


 エメルテアは顔色を変える。元々怖かった顔がさらに怖くなった。


「その連中をどこで見ましたか?」

「どこでというか、狙われたというか」

「狙われた?」


 あ、しまった。口をすべらせた。

 あの黒い鎧が、聖女の力を持っている者を狙っているのなら、それに狙われたということは、ミリアが聖女の力を持っていると、勘のいい者なら気付くかもしれない。

 何とかして誤魔化さなくては、そう思っていると、


「表示せよ」


 そう言いながらエメルテアが、俺の額に人差し指を当ててきた。その瞬間、俺の額が光を放つ。


「守護騎士の紋章……それにこの模様は……」


 エメルテアは、俺の額を見ながら声を震わせてそう言った。


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