「80話」
さってはってダンジョンでの釣りを終えてギルドへと戻ってきましたよー。
いやー、ダンジョンからギルドまでの道のりで回りから見られること見られること。 すごかったですわ。
なんで見られるかってそりゃー行きの倍はありそうな荷物抱えてるからデスネ。
巨大魚の切り身や肝、鱗はもちろんのことタマさんが釣りまくって余った魚も持ってきているからである。
るんるん気分でギルドの扉を潜ろうとしたらぎゅむっと荷物が突っかかり、それ以上進めなくなる。
一斉に集まった皆の視線がひどく生暖かく感じられた。
見ないで、俺の痴態!
あー恥ずかしかった。
何とか荷物を引っ張り込んだ俺はリタさんの受付カウンターへと向かった。
あ、タマさんは席確保中です。
例によって横のおっちゃんをスルーしつつリタさんの列へと並び順番が来るのを待つ。
「リタさんこれお土産っす。 こっちのはギルドに卸すやつっす」
「ウッドさんありがとうございます。 ……えっこれ、魚ですか!?」
「ですです」
カウンターに……置けないので背負った荷物を指さしギルドに卸すやつですと伝える。
あ、お土産のほうは個装して渡しておりまする。
その量を見ても表情変えなかったリタさんだけど、中身を確認すると一気に表情が変わった。
やっぱ相当珍しいんだろうね、お魚。
「待って下さい、まさか下層に行ったんですか……?」
あ、いかんちょっと怒ってらっしゃる。
「いや、俺は途中まででそれとってきたのはタマさんです。 俺が魚食いたいっていったもんで……」
「そうですよね、いくらなんでも下層はまだ無謀ですから……えっと、それではありがたく頂きますね。 ありがとうございます」
セーフセーフ。
しかし……そうだよね、やっぱ下層って無謀だよね。
タマさんの魔法があっても無理だろうし、もし行ったとなると例の桃……何かしら感づかれるかもだし、やっぱ言わないで正解である。
んまあ、とりあえずお土産は渡したし、タマさんのところに戻るべさ。
席取っておいて貰ったし、ご飯にしないとだからね。
「あげてきたかニャ?」
席へと戻ると前足を上げ俺へと声を掛けてくるタマさん。
そこにはでっかい骨付き肉が握られていた。
……もう注文して食い始めてたらしい。
タマさんの食いしん坊めっ。
「うん、渡しておいたよ」
「ならご飯にするニャー」
「おー」
俺もお腹すいたしご飯にしよう。
お魚もいいけどやっぱお肉もいいよね。
そんな感じで俺たちは再びダンジョンに潜るための英気を養うのであった。
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ウッドとタマがダンジョンから魚を持ち帰り、周りのダンジョンシシーカーらから大層感謝されたそんな日からおよそ半年後。
草木が鬱蒼と生い茂る森の中を何かを探し歩き回る4人の姿があった。
「ここか」
そう呟いたのはゴリさんことゴリアテである。
彼は地面にしゃがみ込みその先をじっと見つめている。
その視線の先には地面にぱっくりと口を開いた穴があった。
彼の眉間には皺が寄っており厳しい表情を浮かべていた、そのことからその先にあるものが良いものではないのだろうと察することが出来る。
「リーダー間違いないよー、ここダンジョンだね」
程なくして穴の奥から一人の人物が姿を現す。
パーティ内で斥候役を務めるカールである、どうやらこの穴はゴリアテらが捜していたダンジョンであるようだ。
「食料は1週間持つわ。 行くのかしら?」
難しい顔で考え込むゴリアテにマリーが声を掛ける。
ゴリアテはマリーの問いに軽く頷いて答える。
行くこと自体は決めていたのだ。 ただ、初めて行くダンジョンとなると危険もかなり大きい、彼らもベテランではあるが……いや、ベテランだからこそこの先にある危険に対し、考え込んでしまったのだ。
「あぁ……もちろん行くさ、まず事前に決めておいた通り3日で進めるところまで進む。 もし道中の敵が強いようであれば途中で引き返して応援を呼ぶ。 それで良いか?」
「ああ、それで問題ない」
気持ちを切り替えて皆にそう伝えるゴリアテ。
長年付き合ってきたパーティメンバーとならばきっと行けるだろう。
そう思い、彼らはほの暗い穴の中へと歩を進める。
ダンジョンへの侵攻自体は実に順調であった。
半日ほどかけて中層と呼ばれる階層まで彼らはたどり着いていた。
なぜ順調なのか? 理由はいくつかあるが、まずこのダンジョンはそこまで大きくなく、そして比較的次の階層への道のりが分かりやすかったのも大きいだろう。
以前ウッドと共に潜ったダンジョンの様なフィールドタイプではなく、いくつかの小部屋と通路で構成されたダンジョンであった為、ある程度探索すれば次の階層へと進む事が出来たのだ。
そして次が最も大きな理由であるが……。
「……不味いな」
「ああ、不味いぞリーダー」
順調に進んでいるにも関わらず苦り切った表情を見せるゴリアテ。
彼のつぶやきに答えたベルトラムも、いやパーティメンバー全員の顔色が良くないのだ。
それはここまでの道のりで戦闘らしい戦闘がほぼ無かったからだ。
ダンジョンは通常であればかなり戦闘頻度が高い、だがこれまで行った戦闘と言えばせいぜい2~3回と数える程度である。
これは異常である……モンスターが一杯であるはずのダンジョン内にモンスターの気配がほとんど無い、これが意味することは指導者が現れすでにダンジョンを出た後である、と言うことだ。
「ちょっと進むペース上げようかー」
「走るのはあまり得意ではないのですけど……」
ただ実際にそうなのかを確定するには最奥まで行くしかない、幸いなことに敵は少なく走って行っても問題はないだろう。
彼らは進行ペースを上げダンジョンの最奥を目指すのであった。




