「79話」
意を決してタマさんのお腹に手をかけゆさゆさとゆする。
やはりう~っと唸られるが……敵がきて起こさなかったことを怒られるよりは、起こして怒られたほうが良いだろう。
……お腹たっぷんたっぷんしとる。
タマさん最近食べ過ぎなんじゃ……?
はっ、いやそれどころじゃない!
タマさん起きてー!とゆする力を大きくし声もかけてみる。
「ちょっ……タ、タマさん! 寝てるところごめん、何か来てるんだっ」
「……にゃぁ」
あ、起きた。
「んぐぉぉお!? ……あ、足が」
と思ったら膝から飛び降りないでぇぇ! しょ、衝撃で足がっ……!
俺が身もだえてる間にタマさんはくぁぁっと欠伸をして、あたりをキョロキョロと見渡す。
少しの間そうしていかと思うと、半目で俺をじーっと見て口を開く。
「……何も来ないニャ」
「え、あれ? でも近付いてきてるけど……」
タマさんは何も来てないと言うが、実際姿は見えてないけど確かに近づいてきてはいる。
振動がどんどん近づいてきているし……そういや俺根っこどこまで伸ばしたんだろ。
結構な広範囲に伸ばしたつもりだったけど。
だめだ、距離感がさっぱりだ。
「何も聞こえないし、音もしないニャ……本当にきてるのかニャー」
「たぶん。 走ってこっちに向かってるからそろそろだと思うんだけどー」
来てるはずなんですけどねー。
このまま来ないと俺が嘘ついたみたいになっちゃうじゃないか。
はよ来てくれー!
「ニャ。 きたニャ」
タマさんがそう言ってすぐにドスドスと足音が聞こえてきた。
やっと来たかー……思ってたより距離離れてたんだなあ。
さてさてどんなのが来たのかなー?
「……ひぇっ」
ドスドスと足音がすぐそばまで来たとき、暗闇の中炭火の明かりに照らされてモンスターの姿が浮かびあがる。
全身がぬめっと濡れており、緑掛かった肌にところどころ鱗が見える。
その口は大きく裂け鋭い歯がゾロリと並び、その目は大きく飛び出ていて焦点があっておらず、その見た目をより醜悪のものとしていた。
そいつらは俺たちの方をみると大きく口を開け……そのままゴロリと首が地面に転がり落ちる。
「容赦ないねっ!?」
出落ちにもほどがある。
睡眠邪魔されてちょっとご機嫌斜めなタマさん。 出会いがしらに首から下をミンチにしていたのである。
走ってきた勢いそのままに首が転がり、俺たちの足元にコロコロと向かってくる……。
「こいつらモンスターだからニャ。 食べるかニャ?」
「のーさんきゅーです」
マグロとかだったら食べるけど半魚人は勘弁してくだーさい。
出落ち感半端ないモンスターを退けた俺たちは再び見張りを再開する。
今度はタマさんも見張りに参加している……いや、まあ地面に寝っ転がってるだけだけども。
「そうだニャ。 なんでモンスターが近づいてるの分かったのかニャ?」
「あー、根っこを広げっぱなしだったんだよね、そしたら何かどすっどすって感じで振動を感じて……だんだんこっちに近づいてたからモンスター来たのかなーって」
しばらくぼけーっとしてたらタマさんが先ほどの事についてたずねてきた。
そら気になるよね。
俺もびっくりだもん。
たぶんこれってリタさんが見せてくれた資料に書いてたやつなんだろう。
索敵能力が優れてるって最初はそんなことないわーって思ってたけど、実際にかなり遠くにいる相手のことが分かっちゃったからなあ。
「それすごい便利ニャ」
「だね」
うんむ、まじ便利。
これ空中の相手には無力だけど、それ以外の相手は近づいてきたらすぐ分かっちゃう。
動いてない相手が分かるかはちょっと試してみないと分からないけど……便利なことには変わりない。
「あとで色々試してみるといいニャー」
うんむ。
試してみようと思う。
とりあえず今は見張り中なので根っこ張ったままにしておいてっと。
色々試すのは帰ってからかなー。
帰ってからと言えば……。
「そうだタマさん。 この魚ってどうする? たぶん全部は食いきれないと思うんだけども」
どう考えても食いきれないんよね。
さっきさんざん食ったけど、まだ1割も食ってないと思う。
「もう少し食べたら持って帰るニャ。 ずっと同じのだと飽きるニャー」
あ、やっぱ持って帰るのね。
ってことはこの後は普通にお魚釣りすると。いいねいいね。
お魚も持って帰ってギルドにおろすのかな? 皆喜びそうだねー……あ。
「おー……タマさんがとってきた事にしたほうが良いよね?」
「ニャ」
ですよねー。
よく考えればここ下層ですもの。
俺一応まだぺーぺーの新人ですし、もう手遅れ感満載だけどあまり目立つのもねえ?
それにこの巨大魚狩ったとなるとまたギルド証を更新することになるのでリタさんのご機嫌がデスネ……。
んまあ、とりあえず明日は魚釣り楽しむことに専念しませう。
こんな機会そうそうないし、楽しまないとだ。
ちなみに坊主でしたとさ。 ハハハ。




