「103話」
あとは荷物から取り出した風を装って、店員さんに渡すのですよっと。
「にゃんこさん。 そのドライフルーツだけど残り少なくてね。乾燥させる前の果物ならあるけどこれ交換じゃダメかな?」
「乾燥してないのがあるのかにゃあ? 見せてほしいにゃあ」
見せて欲しいとのことなのでリンゴをほいっと手渡す。
手に持ったリンゴを見て目をキラッキラさせているあたりお気に召したようである。
ふふふ、見た目でインパクトだそうと割と大き目なリンゴにしておいたからねー、匂いも良いし耐性無い子はいちころだぜ。
「どうかな?」
「……交換するにゃあ」
まあ聞くまでも無さそうだったけどね。抱えて離す気ゼロだし。
「ありがと。 それじゃ卵もらっていくね」
とりあえず卵ゲットだ。
見た目は小さめの鶏卵って感じだけど、普段から美味しいもの食いまくってるタマさんが、あえて美味しいと言うぐらいだからきっと凄くおいしいのだろう。
卵かけご飯にして食べたい……ああ、お米ないや。
……あ、作れるのか? ちょ、ちょっと後で試してみようかな?
タマさんが気に入るかは分からないけど……まあ、醤油とかお味噌あるぐらいだから多分大丈夫でしょ。
その後いくつか露店まわってお肉やらお野菜ゲットしたのです。
見たことない食材が多くて色々買いたかったけど、先にドライフルーツのほうが無くなってしまった。
「……もっとドライフルーツ用意しておけば良かった」
「帰るのは明日の昼過ぎニャ。 今晩用意すればいいニャー」
んむ。
さすがに人前で作るのはあれだしね、宿でなら人目につかずにー……宿あるのかな?
最悪野宿でも良いんだけどね。 その場合はどこかすみっこでやるか、一旦この街からでるしかないかなー。
ん、まあそれは後で考えるべさ。
それよりもですね。
「おー……ところでタマさん。 さっきからむちゃくちゃ良い匂いするんだけど、そこが食堂なのかな?」
「ニャ」
さっきから無茶苦茶良い匂いするんだよね、具体的に言うと醤油の焦げた匂い。
俺たちの目の前にある建物から漂ってきてるんだけど……見た目は食堂っぽくない。
なんか普通の建物に見えるんだけどね、まわりよりも大き目ではあるけど。
でも俺の問いにタマさんが頷いたし、ここが食堂なのだろう。
まあ、入るべかね。
……入口狭いぞ!?
そ、そうか……にゃんこサイズに合わせてるから俺だと入口がむっちゃ狭いのか。
いやー……これ俺椅子に座れるかね? 何か腰掛けるものを借りるか……空気椅子はさすがに辛いものがあるよね? 身体的にというかまわりの視線的に。 興奮しても知らないぞっ?
「入り口にいたら邪魔ニャ」
「ごめんて!」
ちょっと体がつっかえてたんだよぅ。
よっと……頭がごりっていきそうで怖い。
なんとか身をかがめて扉を潜ると……そこは天国でした。
たくさんのにゃんこがにゃーにゃー言いながらご飯食べてるの。
やべえよ俺、天国過ぎて何回死んだか分からないぞっ!?
拝んでたらタマさんに踏まれました。ひどいわ。
「おまたせニャ。 おかわりするなら言うニャ。甘いのいっぱい貰ったからまだ作れるニャー」
「ありがとー。 うひょーうまそー」
とまあ入口でちょっとドン引きされたけど、無事ご飯にありつくことが出来ました。
ドライフルーツ渡した途端に店員さんの態度がころっと変わったからね! 賄賂ってすばらしい。
「うま……この鳥まじで美味しいのね」
「ニャ」
皮がぱりっと、脂がじゅわーって、でもってお肉はぷりっと歯ごたえが良い。
そして皮も脂も肉も全てにおいて何時も食ってる鳥より味が良い。
あ、もちろん卵も美味しいよ。
何個かは卵かけご飯用に残しておいて、シンプルにゆで卵にしたんだけどめちゃくちゃ美味い。
いやあ、ご飯も美味しいし、にゃんこは可愛いし。
ほんとうに天国やぞぉ……お?
「ん? ……な、なにかな?」
こちらをじーっと見てくるにゃんこが……え、ゆで卵食べたい?
「あんたがタマさんの連れかニャー?」
「へ? そ、そうだけど……」
ゆで卵に用事では無かったらしい。
「村長から言伝ニャ。 せっかく来たんだから明日の昼にちょっとした歓迎会をやるでな、できれば参加して欲しい……ニャ」
「おぉ……しますします。 参加しま……してもいい?」
歓迎会だとー!?
ありがてえ、こんな怪しい奴のために歓迎会してくれるなんて……勢いで参加するって言いそうになったけど、タマさん参加してもいいかなー……? チラッチラッと見てみる。
「別にいいニャ」
おう、あっさり許可が出たぞー!
って訳で、村長のお使いに参加しまーすと伝える。
「なら参加ってことで伝えておくニャ。詳しい話はあとで伝えるニャー」
お願いしますっ!
「歓迎会かーうれしいなー。 何するんだろうね?」
歓迎会とかもうね、そんなことされた事ないもんでテンション上がりまくりですわ。
にゃんこに囲まれるだけで幸せだと言うのに……ぐふふ。
「ニャ。 たぶん上で珍しい動物でも狩ってみんなで食べるニャ。 見学するかニャ?」
「あ、そだね。 見学してもいいならしたいかも」
そういう歓迎会か。
にゃんこ達が狩る獲物って……一瞬ネズミとか思い浮かんだけど、タマさんみたいなにゃんこも居るんだし普通に大物狩ってくるんだろうか。
ちょっと見れるなら見てみたいね。
あとで詳細伝えるってことだし、その時に聞いてみようかな?
村長さんのお使いが再び現れたのは夜になってからだった。
俺達は野宿……ではなく、街に一つだけある宿に泊まってドライフルーツを作りまくっているところで、部屋の扉がノックされた。
訪ねてきたお使いさんに、歓迎会の詳細を聞いて、ついでに見学したい旨を伝えるとあっさり許可がでた。
むしろ暇なら手伝えって感じでした。 かん……げいかい?
「明日の朝、広場に集合してから上に行くと……装備持って行ったほうがいいよね?」
「何が出るか分からないからニャー。 してったほうが良いニャ」
森の奥だしね。 どこぞから逃げてきたモンスターがいるかも知れないし、フル装備でいこう。
んで、翌朝。
俺とタマさんは先日買い物した広場に来たんだけど、いやー……昨日の倍ぐらいのにゃんこが集まってるのよ。
「おぉ、こりゃすごい数が集まったねえ……」
「滅多にないイベントだからニャー。 みんな楽しみにしてるんだニャ」
なるほどなるほど。
外での狩りってあまりしないのかな? あ、でも鳥とかあったしそう言う訳じゃないか。
となると特別なものを狩るってことかなー。
何を狩るのか楽しみです。
とりあえずある程度数がそろったところで皆で街の外へと向かう。
俺たちが飛び降りた穴も、難なくよじ登るというか……ぴょいって跳ねて乗り越えていく。
狩りに参加するメンバーだけあって皆さん身体能力高いようで。
「……あれ? みんなバラッバラに散って行ったんだけど……」
登りきるとバラバラに散会するにゃんこ達。
えぇ……ある程度まとまって狩るわけじゃないのか。
てかこれどうやって見学すれば……。
「獲物探しに行っただけニャ。 見つかればすぐ分か……もう見つかったみたいだニャ」
「へ? …………え、えぇぇぇぇえっっ!!?」
もう見つかったってどういうこっちゃ?とタマさんが見ている方へと視線を向けると……。
ははは……いやいや。
俺の見間違いだろうか、それとも目が腐ったのか。
……山が動いていた。




