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序章 公園と猫と私

 大きなスコップが公園の土に刺さり、一粒ひとつぶの定位置を壊す。宙に舞った土は街灯の光に照らされて、神秘的とか、そんな言葉じゃ表せないほど美しくなる。普段は誰からも注目されず踏まれるだけなのに、少し舞うだけ評価される。


 汚れたローファーは力強く踏み込む。チェック柄のスカートは乱暴に揺れる。その度にスコップは地面に穴を作っていく。真っ白なブラウスは跳ね返った土で汚れる。肩に掛かるほどの髪は踊り、口では乱れた呼吸をする。


 大きな瞳は何かを見つめ、小さい頭の中にある脳みそは何かを考える。ひたすら穴を掘っていく。深夜2時。多くの人は眠っている、なんてイメージはすでに古い。多くの人は仕事をして、ひたすらペンを走らせる人もいる。


「できた・・・・・・」


 昼間は子供達が遊ぶだけの公園に現われた大きな穴。少女はスコップを投げ捨て、近くの置いたカバンの元へ行く。チャックを開けるとタオルで包まれた子猫の亡骸を取り出す。


「君はどうして死んじゃったんだろうね。餌も食べてた、誰かに虐待されているわけでもなかった。それでも急にいなくなっちゃう。私ね、猫じゃないから君が何で苦しんでいるか分からなかった」


 早く気付いてあげていれば・・・・・・。なんて意味のない後悔に浸る。そしてふと思う、人は同じ種族なのにお互いの苦しみや不安を理解できない生き物だと。


 自分を第一に考えて、他人の苦しみには目を向けない。何かあれば自分だけが被害者面をするくせに。


「私も猫に産まれたかったな」


 少女は穴の中に子猫を入れると、近くにあった花を添える。コンビニで買ったネコ缶も、ペットショップで買ったおもちゃも。そして自分の涙も。


「なんで・・・・・・。私を助けておいて、先に逝っちゃうの」


 両手を地面につき、静かに泣いた。



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