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第7話 初任務完了!

 ボロい砦内のあちこちで呻き声を上げ、痛みを訴える盗賊団。その光景を見てざわつく討伐隊。誰一人殺さず、短時間で頭領のゴルテス以下全員を叩きのめしたのが、ペーペーのホワイトランクのはずの2人だから無理もない。討伐隊を率いるガゼット隊長は、ドヤ顔の俺とユキナに一瞬だけ思考停止状態になってたけど、同様に困惑する部下や他の冒険者に盗賊の捕縛を命じた。


 縄できつく縛られ、門の前へと集められたゴルテス団は総勢23名。(ひざまず)く彼らは一様に項垂れ、あるいは歯を食いしばって痛みや屈辱に耐えているようだった。


「あー、オホンッ。お前達なかなかやるではないか。まさかこれだけの人数を生け捕りする事になるとは……独断専行は本来罪を問われる所だが、その手柄は認めざるを得ないな」


「ありがとうございます」


 口髭を(いじ)りながら、馬上からガゼットが声を掛けてきた。この辺の領主に仕える隊長に功績を認められたのだから、報奨金も弾んでくれるだろう。俺はビシッと斜め45度に頭を下げ、力強く返事をしていた。ユキナも期待に胸を膨らませているようだった。ガゼットが再び口を開きかけた時、俺達は冒険者仲間や傭兵団に取り囲まれた。


「おいヒロト、さっきの姿は何だ!? それにあの塀を飛び越えた身のこなし……門が開いたらもう終わってるとは……!」


「その娘は魔術師(ウィザード)だったのかよ。しかも宙に浮かんでたし」


飛翔呪文(フライ)って一部の高位魔術師(ハイウィザード)しか使えないんじゃなかったか?」


「どこがホワイトランクなんだよ! ブラック……いや、シルバーランクレベルじゃねえか?」


 冒険者のランクは前に説明したけど、更に上なのがシルバー、ゴールド、プラチナだ。上位3ランクは他国へ行っても優遇される事が多い。俺とユキナを口々に褒めそやす男達。特にユキナに鼻の下をのばす奴は多かった。考えてみりゃ、討伐隊の紅一点だ。おまけに滅多にお目に掛けられないほどの美少女とくれば、当たり前の反応だ。


「そいつらが、ホ、ホワイトランク……だと!? 嘘だ!」


 飛び出すんじゃないかと思うくらいに目を見開いたゴルテスが、後ろで声を張り上げた。最低ランクの冒険者2人に自分の盗賊団を叩きのめされたのが信じられないのだろう。俺達が首から下げてるプレートが目に入らなかったのか?


「フッフッフ。それならもう一度だけ、魔剣士の姿を見せてやる」


 すっかり調子に乗った俺は、“魔剣士エルシオン”に変身して炎の魔剣(フレイムソード)を華麗に操る演武でも披露しようとした。俺とユキナを囲む輪から1人離れ、熱い視線をひしひしと感じながらもっともらしく構える。


「はっ!」


 短く気合いを発した声が空しく響いた。あれ? 変身出来ない? 若干キョドる俺。特に疲労感とかないぞ。昨晩は特撮ヒーローみたいとか思ったけど、まさかの制限時間付き? それとも使用は1日1回? 用法用量を守って正しくお使い下さい的な? それは困る!


「おい、どうしたんだよ」


 どこからか声が上がる。とりあえず虚勢を張って無言で腕組みする俺。どう取り繕うべきかとテンパっていると、何かを察したユキナが前に出てきた。


「み、皆さん。ヒロトと私は師匠から『人前でみだりに技や魔法を披露するな』と固く戒められていまして。ヒロトも度忘れしていたんでしょう……ごめんなさい」


「なんだ、お前ら相弟子だったのか?」


「師匠の言いつけじゃ仕方ねえか」


「こんな2人を育て上げたんなら、よっぽど凄い人物なんだろうなぁ」


 ペコリと頭を下げるユキナを見て、特に俺を咎めたてたりする者はいなかった。ユキナの咄嗟の嘘を鵜呑みにして、勝手に納得してくれたみたいだ。それにしても同門の仲間というのは悪くない設定だ。今後俺達の関係性を訊かれたら、そう答えるようにするか。


「もうよい。他に誰かいないか捜索しろ」


 ガゼットの命令で、他に隠れている者がいないか捜索が開始された。俺達も参加したが、可愛い村娘が囚われているかと思えば誰も居なかった。その代わり、建物内の宝物庫にはそこそこの金品が貯えられていた。ここ数ヵ月で近隣から集めた盗品に間違い無い。


 お宝を外へ運び出していると、アジトの陥落を知らずにノコノコと帰ってきた盗賊団の残り数名も捕らえられ、今回の任務は無事終了となった。ファレナの町に使いを出して少し休憩をした後、午後になってから意気揚々と帰還を始めた討伐隊。


 数珠(じゅず)繋ぎのゴルテス団を連行して夕刻前にファレナへ凱旋すると、事前に報せを受けた町の人々は通りに繰り出して大いに歓声を上げた。庁舎へしょっぴかれる盗賊に対しては、罵声を浴びせながら小石や生ゴミを投げ付ける。身長2メートルを超えるゴルテスは、いい的だった。


 冒険者ギルドには町から差し入れがあり、日が落ちると傭兵団の10人も加えて宴が催された。未成年だし現実世界で酒を飲む事など無かったけど、ここは異世界だし。今は書き替えられないけど俺がルールブックだし? 年齢制限など無い。現に誰も何も言わないし。そう自分に言い聞かせて、俺はフルーツやハーブのリキュールやビールを飲んだ。はっきり言ってビールは苦くてダメだった。


 面白かったのは、俺をビビる奴ばかりになった事だ。ホワイトランクと侮って小馬鹿にした視線を送ってたイエローやレッドランクの奴らが、俺が見るとあからさまに目を逸らす。俺と差し向かいで飲んでいるユキナにちょっかいもかけない。それだけ炎の魔剣士のインパクトがあったわけで、とても痛快な気分だ。


「ヒロト調子に乗っちゃダメだよ? 変身すれば強いけど」


「分かってるよ。それよりこれからは、俺達は同門の仲間という事にしよう」


「あー、あれね。ア○ンの使徒みたいな? 一番弟子ヒロト、二番弟子が私」


「そういう発言は控えるように。……ま、この世界の人が聞いても分からないけどさ。そうそう、架空の師匠の名はバイリンにしようぜ」


「それってヒロトの現実世界でのあだ名だよね?」


「何で知ってるんだ?」


「前に話してくれた」


 酒の影響もあるだろうが、白い頬をほんのり染めながら、ユキナは遠い目になった。俺の知らない、俺との旅の記憶。全然語ってくれないのが気にかかる。


「そ……そうか」


 俺は気の抜けた返事をするのが精一杯だった。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。


 酒のせいで少し寝過ごした俺とユキナが宿屋を出る時。受付カウンターで支払いを終えると、主人のオッサンがニヤニヤしていた。


「ゴルテス団討伐で活躍されたそうですね。良くお休みになられたようで……昨夜はお楽しみで?」


 出た。某ロールプレイングゲームの有名なあれ。俺はなんとかの血を引く勇者じゃないし、ユキナは囚われのお姫様じゃない。てか、何もしてねーし。すぐ寝ちまったし! 


「いや~、今も部屋を出るまではお姫様抱っこしてくれたんですけどね。ヒロトは恥ずかしがりやだから」


「そうでしたか。う~ん、若いって素晴らしい」 


「ぶっ!? い、いや!」


 悪乗りするユキナにオッサンが頷き、羨ましそうにこっちを見るので必死に首を振った。居たたまれなくなった俺は、ユキナの手を引いてさっさと外へ出た。


「デタラメを言うんじゃない!」


「そんなにオドオドしなくてもいいのに。私は……」


 何か言いかけたユキナは、可愛らしい唇をキュッと噛んだ。


「……どうかしたのか?」


「ううん、なんでもない。さっ、お仕事の報酬を貰いに行こう」


 ユキナは誤魔化すように、大きく手を振りながら大股で歩き出していた。


 俺達が広場へ向かうと、硬貨の詰まった袋から中身を取り出して確認している男が何人かいた。今回雇われた冒険者と傭兵団は、庁舎で報酬を受け取る手筈になっていた。俺達だけは特別扱いで、2階の応接室に通された。


「おお来たか。ヒロト、ユキナの両名には頭目ゴルテスの捕縛による特別報奨金600,000、取り戻した金品の分配金、成功報酬を合計した800,000ジュエルを授与する」


 上機嫌のガゼットから金の入った革袋を直接受け取った俺達は、挨拶もそこそこに旅立つ事にした。冒険者を廃業して仕官しないかとまで言われたが、丁重に断った。口をへの字に曲げるガゼットに一礼し、(きびす)を返して退室した。


 一応冒険者ギルドにも顔を出したけど、今回の仕事はランク度外視の集団での強制参加だったので、個々の実績には反映されないと説明された。ホワイトランクのままということだ。まあ仕方がない。


「ランクの事はともかく、お金は結構貰えたね。これで暫くは持つかな」


「路銀には十分だ。ユキナ、王都ベルシオンへ行こう。暫くの間拠点にしてた事もあるし、あそこでは何度も『リターン』している。何かしら別のキャラを回収出来るぞ」


「新たな目的地だね。ベルシオン……あれ? 変身した魔剣士の

名前は……」


「エルシオン」


「一文字違いで紛らわしくない? ネーミングは色々と考えなきゃ、創造主ヒロト様」


「う、うるさいな。たまたまだよ!」


「わー、ヒロトが怒った」


 舌を出しながら走り出したユキナを追い掛ける。いいな、こういうの。すげえ楽しい。おっと、旅に備えて道具屋とか市場で保存食でも買わないとな。


 こうして俺とユキナは初任務という名の盗賊団退治強制参加イベントを終え、冒険の始まりから3日目に王都ベルシオンを目指してファレナの町を()つ事になったのだった。

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