7話
レイナは部屋の中で妙なコスチュームを着ていた。
「どう? 似合う?」
僕にそう聞いた。
「似合うと思う」
黒のドレスで胸元がざっくり開いていて、胸が大きめのレイナの谷間が強調されているような感じだった。
レイナは鏡で何度も自分の姿を見ながら少しうれしそうにしていた。僕はそんなレイナの様子をやはりソファで眺めていた。
グラスの中のウイスキーは空になっていた。レイナの後ろ姿を振り向いてみると、ずいぶん短いドレスだな、なんて思った。
別に僕はレイナがどうしようと勝手だと思っていたし、レイナ自身、僕に束縛なんかされたくないだろう。
レイナはコスチュームを着たまま、僕のソファの隣に座った。
「ねえ」
いつもよりしんみりとした声でレイナが僕に言った。
「何?」
僕は極力胸の高鳴りを抑えながらそう言う。
レイナはソファから立って、二つのワイングラスに白ワインを注いだ。フランスの富豪のメーカーのやつだった。
レイナはワイングラスを持ったまま僕の隣にまた座る。
「一緒に飲みましょ」
「いいよ」
「乾杯」
僕らは二人でそうしてワインを少しずつ飲んだ。アルコールがのどをあたためていく。僕らはそんな風にして生きていた。
「もし私が普通の女だったらね」
レイナは語り始めた。
「きっと幸せな家庭を築くと思うの。隣には優しいあなたがいて、私は毎日あなたのために料理や洗濯をして」
「それでね。いつか子供を産んで二人で育てて遊園地に行って、子供がすくすくと育っていくのを二人で眺めていて、休日には家族でピクニックに行って」
「そうだったら、今よりは幸せかもね」
僕はそんな風に言った。
「そんな幸せもあるのかなあなんて思ったの」
レイナはそう言って肩に高級バッグを担いだ。黒いフランス製のやつで二十万くらいするやつだった。
こんなレイナがガールズバーで働くのもなんだか奇妙だななんて思った。僕は彼女が家を出るときそっと玄関まで付き添った。
「いってらっしゃい」
僕は言う。
「楽しんでくるわ。そういえば私あなたの友達の経営者にはまだ会ったことがないのよ」
彼女はそう言って笑う。
「いいやつだよ。あっさりしてる。何もかもが。物事の考え方から仕事まで」
「じゃあそんなに気をつかわなくてもいいかもね」
「その辺は心配しないでいいよ」
レイナはマンションの鉄のとても頑丈で高級な扉を開けた。静かな鈍い音が響きわたる。
「行ってくる」
レイナはそう言って部屋から出ていった。




