3話
朝起きるとレイナはいなくなっていた。彼女の脱ぎ捨てたパジャマとかそういうものがベッドの横に落ちていた。
僕は眠い目をこすりながら洗面台で歯を磨き、髪と顔を洗った。ぼんやりとした顔の僕がいた。
僕はただ目の前のことに集中することができない。今日も会社に行ってプログラミングの修正を行わないといけない。そのことにどんな意味があるのか到底今の僕にははかりしれない。
僕は部屋で簡単な朝食を食べコーヒーを飲んだ後に会社に出社した。
「おはようございます」
後輩の女性が僕に話しかけてくる。
「昨日の飲み会来ませんでしたね」
「忙しかったから」
「先輩が来なかったんであんまり盛り上がらなかったんですよ」
その女性はそんな風に僕に言ってくれて、僕は少しうれしくなった。ハイスペックなパソコンを立ち上げて、取引先のメールをチェックして必要以上に気を使って返信して、それから十数ページの企画書に目を通して作業を始めた。
無意識のうちにいろいろなデータを検証していく。問題点を探すのはとても骨の折れる仕事だった。問題点を探ることができるソフトがあればいいのにななんて考えた。
「昼ご飯食べましょうよ」
後輩の女性と一緒に会社の部屋でランチを食べる。コンビニのパスタとお茶だった。別に特別おいしいわけでもなかった。
でも後輩と一緒に過ごしている時間はとても安心できる。僕は命がけでいつもレイナと過ごしている。
彼女が発狂でもしたらどっちかが死んでしまうだろう。
「そういえば先輩は同棲しているんですよね? 結婚まじかですか?」
「そんなことないよ」
僕はフォークにパスタを絡めて口に運びそう言った。特に意味があるなんて思えなかった。
食後にコーヒーを飲んだ。後輩の彼女はメイクを手鏡で直していた。
「君は彼氏はいるの?」
「いないです」
彼女はそう言って笑ったが、僕はうすうす彼女がいろいろな男と遊んでいることを知っていた。噂で知ったのだ。
彼女のメイクを見ればそれが一目でわかるくらい派手だった。彼女なりの何か理由を抱えているのだろう。
僕と彼女は部屋の中でただ座っていた。部屋には本棚があった。いろいろなビジネス関連の書類が整理されて入っていた。僕はその中身を見たことがない。それに僕には関係ない知らないことだってこの会社じゃ行われているのだ。僕はただ給料に見合う仕事さえすればいい。