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10話

 朝目覚めて僕は一人で笑っていた。あまり意味のないことだった。彼女の脱いだ服がベッドの横にサッカーボールのように丸めて置いてあったのだ。彼女なりのユーモアらしい。それとも彼女なりの何かの皮肉だろうか。


 僕は彼女が僕のために用意した朝食を食べた。雑に作った割にはおいしい。彼女は僕のことを愛していてくれているのだろうか。


 メモに「今日もお仕事頑張ってね!」と書いてあった。


 頑張ろうと思った。特に理由もない。ただ僕は仕事を頑張るしかないのだ。


 僕はスマートフォンを開いた。そして片っ端から女に連絡を送った。


「今日食事してくれよ」


 大体送った。みんなそうやって生きていた。僕は微妙にかすれた音楽をスマートフォンで聞きながら返事を待った。


 誰からも返信なんか来なかった。予想とは違う。そしてそのことを不思議に思う。どうして予測はずれてしまうのだろう。こんな僕を見てレイナは笑うに決まっている。


「あなたっていつも女のこと追いかけてるよね」


 そんなことを言われるような気がした。そもそも彼女が僕のことを愛しているのか興味がないのかもうわからない。


 ただ僕はレイナのそばにいるのが好きだった。そして彼女が吸血鬼で、将来何かで成功することを気づいていた。吸血鬼とはそういうものだ。


 彼女はただ時間を浪費しているだけだった。きっとアイドルにも女優にもモデルにだってなれるはずだ。


 僕はそんな彼女のそばでどうでもいい話ばかりしていた。意味なんかあるのかもしらない。


 ただ返信を待っていた。一人の大学の後輩から返事があった。


「いいですよ。今日仕事終わったら会いましょう」


 僕は少しうれしくなった。どうせなら彼女に全て話してしまおう。それでもうレイナのことを忘れてしまおう。そんなことを僕は朝食を食べながら考えていた。なぜならレイナの朝食に愛がこめられていたからだ。


 僕はうれしくなってしまった。静かに朝食を食べた。窓を開けた。外は涼しかった。冬の風が吹いている。とても心地がよい。すっかり空になった皿をシンクに片づけた。


 僕は洗濯物のかごの中にレイナの来ていた下着を見つけた。別にどうでもよかった。静けさの中にほんのりと生活の温かさがあった。そしてそれで十分満足だった。


 明日はいい天気になるのだろうか。そうすればきっと今日の仕事もうまくいくに違いない。仕事は単調だった。でも僕は夢中になることができた。


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