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漢の戦い

 召喚されてまだ三日目なのに、俺、ボロボロ過ぎませんか?

 異世界ものの主人公って、こんなハードな感じだったっけ?

 

 最初からチートスキルやら何やらで俺つええええ! 

 してるやつもいるのに、ちょっと俺の扱い酷すぎませんか?

 ねえ、神様聞いてます?


「遥人さん。血を失って体温が下がってますから、今夜は私が添い寝しますね」


 神様聞いてます?

 不満とか一切ないんで、さっきの文句は聞き流して下さい。


 千沙は部屋の隅にあった小さな灯篭に火を灯すと、代わりに

 天井から吊り下げられていた、大きな灯篭の中で揺れる炎を消した。

 照明が小さなものに変わったことで、一気に部屋が暗くなる。

 

 彼女は寝巻き――白い無地の華美でない着物の帯をほどいた。

 着物がはだけ、彼女の白い胸元、太ももがあらわになる。

 部屋を照らす小さな明かりが、彼女の肌を艶やかに照らし出す。

 ムードが有り過ぎて、

 

 俺の異世界転移は官能小説だった!? と頭が混乱した。


「……んっ」


 ぱさっ……と、

 体の柔肌を頼りなく隠していた白い布が床に落ちる。

 今や彼女が身に纏っているのは純白のパンティ―だけで、

 腕を抱くようにして、大きな胸を隠していた。

 思った通り、千沙は着痩せするタイプだった。


「体を温めるには、肌が触れ合うようにするのが一番ですので

 ……失礼します」


 彼女は俺が寝ている布団に潜り込んできた。

 心臓が早鐘を打って、うるさい。

 彼女に聞こえないかと心配になる。


「……温めますね」


 言っておくが、俺はパンツ一丁で寝かされていた。

 そりゃあそうだろう。

 俺の装束は血だらけだったからな。

 

 彼女は横から、俺の身体を抱くようにくっついた。

 彼女の肌と俺の肌が直に触れ合って、

 ……ちょっとこれ、年齢制限大丈夫ですかね!?


「……私のこと、はしたない女だと思いますか?」


 耳元で、呆けたような彼女の声。色っぽい。


「……違いますから。

 私、こんなことするの、遥人さんだけですから。

 また、命を助けられちゃいましたね」

「あ、あのさ。お礼のつもりでやっているなら――」


 本能と理性が戦いながら、俺は彼女に言った。

 無理をさせているなら、嫌だった。


「違います……好きです…………大好き……」


 熱に浮かされたような、囁く声。

 彼女の吐息が耳に、首筋にかかる。

 

 かかってこいよ、運営。

 俺は限界を超えるぜ?

 

 俺が一線を超える決意をしたその時、窓がコンコンと、ノックされた。

 

 ——ここ三階だぞ?

 

 俺は恐怖を感じ、一気に萎えた。

 ゆっくりと、恐る恐る、窓を見る。

 

 カーテンの開けっ放しになった窓の外に枯れ木のような爺さんが浮いていた。


「う、うおわあああ!」

「きゃあああああ!」


 慌てて布団を被って、千沙を隠した。

 俺はそのまま転がるように布団を脱出すると、

 窓まで這いよった。

 開錠して、窓を開ける。


「む、六笠先生! いったい、何をしているんですか!?」


「昨日言ったではないか、明日も稽古をすると……」

「俺、瀕死ですから! 稽古なんて無理ですって!」

「瀕死? おぬし今、交尾しようとしておったではな――」


 ぴしゃっ! ガチャッ! シャアアア!


 窓を閉じて、鍵をかけて、カーテンで覆う。


 クソッ! あの爺さん、運営と繋がってやがる! 

 俺は確信した。

 

 ああ、あれね。いい感じになったら絶対邪魔が入るやつね。と

 納得し、がっくりと肩を落として振り返ると、

 千沙が布団から頭の上半分だけ出して潤んだ瞳でこちらを見上げていた。

 艶やかな唇が、ゆっくりと形をかえる。

 

 ……きて。

 

 俺の理性は天元突破した。

 俺のドリルは、天を衝くドリル――いや、やめておこう。

 

 とにかく、俺は、あれだ。某有名RPGの台詞が頭の中で再生された。



『ゆうべは おたのしみでしたね。』


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