豆とともにさようなら、候補達よ
2月3日。
豆、買った。豆、食った。
僕はうぐいす豆を食べる。
落花生をぶん投げる。
落花生をぶちまける。
拾う。
食う。
「めんどくせええええええええええ!!!!」
節分というイベントは嫌いだ。
厄を払う為、豆をぶつけ、豆をぶちまけ、豆をたらふく食べ……
腹壊す。
「今年は豆まき絶対にやらねえからな」
1人で勝手に心意気がこもっていた。
「ゆーにぃ、まme」
「ぶん投げるなよ!!!投げた瞬間殺すぞ!!」
「ひいっ!!」
いつも好意を向ける悠花も真っ青になっていた。
……そんな怖い?
「ほ、ほんとに鬼になっちゃった…?」
「そう思ってるなら出ていってくれ」
「やだ」
「やだ!?」
「ゆーにぃと、豆まきしたい」
「部屋が汚れるだけだろ。却下。」
「ええーー」
むすっと頬が膨れ上がる悠花。
可愛いね。
「じゃあ、ゆーにぃのタンスの5段目の右端にあるものを全部持っていくね」
「やめろ!!!!!!僕のゴッドコレクションだぞ!!!!!」
「持っていくんじゃなくて、もう持っていってた☆」
「てめえ!!!僕のロリコレを返せ!!!」
ロリっ娘コレクションという、僕が1番大好きなエロゲーである。
なんと、蒼井つぼみ……葵が出ている作品でもある。
僕のお気に入りをいつの間に。
「このゲーム、聞いたことある声の人がいるんだけど……」
「気のせいだろ……エロゲーだぞ?エロゲー。僕には年上の友達がいないんだ。つまり、その時点で可能性はゼロだとい」
「あおい………つぼみ…?」
こいつ、わかってんじゃねえの?
僕は全力でシラを切るぞ。
「僕だって聞いたことあるなぁ?としか思わなかったよ、でも可愛いから気にしないことにした」
「私以外を見ちゃダメ!!」
「は!?」
ここで嫉妬されんの!?
普通前回とかの話とかでするよねぇ!?
「私はゆーにぃが好きなの!!!大好きなの!!!愛してるの!!!」
「はいはい、冗談はそこまでで」
「冗談じゃない!!!!」
豆を持っている手と足が震えていた。
いつもとは違う、冗談っ気ゼロの顔ででかい声を出していた。
…本気か。
「私はゆーにぃだけしか見れないの!!!!!こゆなこと、妹の私が言うの……おかしいけど、好きなものは好きなんだもん!!!!」
「……………」
僕はしばらく無言になる。
返す言葉が見当たらなかったからだ。
「……悠花」
「なに…?」
「ごめん。僕は、悠花の気持ちには乗ってあげられない。」
「どうして……」
「……他に、好きな人がいる」
「……………っ!!!」
手に持っていた豆を落とし、全てバラッ、という音を立て床に落ちた。
悠花は顔を真下に向け、いつもにはない、薄々とした声で、ボソボソとつぶやいていた。
「………………のに」
「えっ?」
「私はゆーにぃのいつも1番近くにいたのに!!!!!!!!」
と言った瞬間、部屋のドアをガン!と開け、走って自分の部屋までかけこんでいってしまった。
……そうだよな。
そりゃそうなるよ。
でも、進展の為にも……こうするしかなかったんだ。
悠花……お前のことは好き『だった』よ…
家に居づらくなってしまった。
悠花を振り、複雑な気持ちが続く中、僕はその心を取り払う為にいつものゲーセンに向かっていた。
しかし、待っているのは勇気を振り絞らなければならない展開ばかりだった。
「いらっしゃいシナ、久々だねぇ」
「て、店長……」
「また浮かねえ顔しやがって〜、なんかあったのか〜?」
肩をグリグリと抑えてくる店長。
僕はそんなことに乗っていられる気分ではなかった。
「すまない……今日も1人にさせてくれ」
「う〜ん……1人には、お前は今日もなれねえな、残念ながら」
「ど、どういうことだよ」
「ほら、あっち見な。」
僕は店長の指差す……配置が変わったばかりのドンクロのコーナーを見た。
……りんちゃんが居た。
…嫌な予感がしてくる。
「ま、せいぜい頑張るんだな」
「あ、あぁ……はぁ」
同じことが起こるような。
そんな気は、もうこの頃からしていた。
彼女を泣かせてしまう。
彼女が傷ついてしまう。
でも、言わなければならないこと。
今とずっと同じじゃ……ダメなんだ。
「あっお兄ちゃん!!」
「り、りんちゃん……」
「えへへ〜♪」
いつも通りゲーセンでは甘えてくるりんちゃん。
姉の前じゃそんなことあまり見せないのにね。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「い、いや……」
ダメだ。うやむやにしてはいけない。
彼女の為にも、僕の為にも……!!
「りんちゃん、僕とこうやってべったりできるのも、今日で最後だ」
「ふぇ?どうして?」
「…………僕、好きな人が出来た」
「………!!!」
手に持っていたバチをりんちゃんは落とす。
今日は落下祭だな。
「いずれ言わなきゃいけないとは思っていた。だけど機会がなかった。今、機会が出来た。だから言わせてもらった。」
そう言った後、りんちゃんは落としたバチを拾い、下を向けていた顔をすぐ僕の方に向ける。
「……私は応援するっ」
「…それで、いいのか?」
「うん。だって、好きな人には……頑張ってもらいたいから……私以外の相手でも……」
もう既に涙声になっていた。
もう既に涙をこぼしていた。
「応援しなきゃ……縁を切ることになっちゃうから……それだけは……嫌だもんっ!!」
言い切ったりんちゃんは感極まったのか、大声で泣きだしていた。
その鳴き声は僕の脳裏に深く焼きつく。
「……ごめんな、りんちゃん。でも、応援してくれるのはすごく…嬉しい。感謝するよ」
「……だがらぁっ…ぜっだいにっ……ぜいこう……させてね……?」
「もちろんだ。僕に任せてくれ。りんちゃん、ありがとう」
そうして僕の胸に寄りかかり、りんちゃんはまた更に号泣していた。
これで……いいんだ。
そう、これで。
「……1回だけセッションしよう」
「いいの…?」
「友達なら、いつでもできるだろ?」
そう言って僕らはドンクロに100円ずつ、入れていた。
悲しくも、楽しかった。
りんちゃんが恋人候補として残る、最後の記憶だった。
僕はこんな女の子とは……縁を切れない。
これからは素晴らしい友達として…りんちゃんを見ていこう。
次回で終わります。
残り選択肢は2つ。
僕が決めた最後を見てくれる方は見てください!




