一族の没落を簡単にまとめてみる
私は武士の家系の末裔な訳であるが、いまは一般家庭である。というか、殆どの武士の家系の人はそうであろう。殿様の家系とかはどうか知らんが。その没落はなかなか多種多様であろう。その一例として我が一族のものを、祖父からの聞書きという形でここに記そうと思う。
我が先祖は、なかなか辞めさせてもらえないくらいには重宝されたとか。お城の金庫番だってやったらしい。細かいことは知らん。祖父も聞いた話としていたし。もしかしたら事実でないかも知らんが、そこはどうでもよい。
その人の子か孫の代に御一新、つまりは明治維新があった。どうやらそれが没落の始まりであろうか。
戊辰戦争の時に勤めていた藩からも兵隊を出すことになったけど、御先祖様は多忙のため、家来を参加させている。まさか、戊辰戦争の頃になって槍刀で行かせるわけにもいかないので、最新の鉄砲やらその付属品を買い与えて出兵させている。鉄砲とその付属品はやたらと金がかかったようで、これが後に響いてくる。付属品がなけりゃ鉄砲は棍棒にしかならん。
その戊辰戦争で家来の三人が戦死している。で、家来というのは使用人よりも家族に近く、準家族とも言える存在なので、葬式を出している。これも盛大な出費だそうな。そりゃそうだ。
版籍奉還てのがあったが、これがどうだったかは知らん。しかして持ってた山野がこれをもとに後に国有林野になったのではないかと。その辺はよく分からん。なにしろ情報が錯綜したらしく、御先祖様の日記も要領が掴めん。
そして二年後、廃藩置県である。お仕事が無くなってしまったわけである。まあ、それでも暫く、国が秩禄を呉れているのであるが、それは殆ど借金の返済に消え、さらにそれに奔走した結果、最悪の事態を乗り切れなかった。そう。秩禄処分である。収入、すっぱりなくなりました。一応金禄公債何てのを貰ったが、一日当たりの配当額が東京の最低賃金の三分の一でしかない。それで何とかなるわけなく、売り払って返済の足しにして、それでも返しきれず、屋敷や刀まで差し押さえられてしまう。それで殆ど返したが、残りは先の大戦末期まで返済を続けている。大阪の空襲以来返済先が音信不通なので、うん。気にしたら負けだ。
と、まあこの辺で没落が素晴らしく簡単にまとまったと思う。質問があれば感想にでも、個人メッセージでも良いぞ。