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妻のNTRを許す代わりに俺もNTRをすることにした  作者: 田中 又雄


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16/18

結果

 待ち時間の10日間は、俺の人生で一番長い日々だった。


 最終日の朝、会社でデスクに座っていると、スマホが振動した。


 画面に表示されたのは病院の番号。

心臓が一瞬止まったような気がした。


 俺は休憩スペースに移動し、電話に出た。

医師の声は事務的で、淡々と結果が届いたことを知らせた。


「前原様、鑑定結果が出ました。郵送でお送りしますか?それとも受け取りに来られますか?」


 俺は頷き、声が少し上擦った。


「…わかりました。受け取りに行きます」


 電話を切った後、俺は壁に寄りかかり、深呼吸した。

額に汗が浮かび、手が冷たくなっていた。

これで、すべてが決まる。

俺の子か、それともあの男の。

胸の奥がざわついて、吐き気がした。


 仕事は早めに切り上げ、病院へ向かった。

雪が降り積もり、道路が白く覆われ、タクシーのタイヤが軽く滑る音が響いていた。


 病院のロビーは暖かく、消毒液の匂いが鼻を突いた。

受付で結果の封筒を受け取ると、看護師が「ご家族でご確認ください」と優しく言った。


 封筒は薄く、白く、手に持つだけで重く感じた。

俺はそれをカバンに押し込み、家へ急いだ。


 帰宅すると、家は静かだった。

リビングの空気は重く、カーテンが閉まりきっていなかった隙間から、雪の反射光が淡く部屋を照らしていた。


 好はキッチンで夕食の準備をしていたが、俺の顔を見て手を止めた。

彼女の茶髪が少し乱れ、目が心配そうに細くなった。


 俺は封筒をテーブルに置いた。


「亮さん……それ、結果ですか?」


 凛はソファに座っていて、腹をさする手が止まった。

彼女の顔はむくみ、目元に影ができていた。

つわりが悪化して、食欲もなく、毎日吐いていた。


 凛は封筒を見て、唇を震わせた。


「…来たの?」


 俺は頷き、3人でテーブルを囲んだ。

誰もが息を潜め、部屋の時計の針がカチカチと鳴る音だけが響いていた。


「開けるぞ」


 俺は封筒をゆっくり開封した。

紙の音が部屋に響き、好の息が少し速くなった。


 凛は手を膝に置き、指を絡ませて祈るように目を閉じていた。

封を開け、中の紙を取り出す。

俺の手指がわずかに震え、紙が軽く擦れる感触が伝わった。

結果の欄に、黒い文字で書かれていた。


「親子関係……成立。一致率99.99999999999%。」


 部屋が静まり返った。

凛の目がゆっくり開き、紙を覗き込んだ。

彼女の表情が、徐々に変わった。


 目が潤み、唇が震え、安堵の息が漏れた。


「…亮の子……なんだ」


 凛の声が小さく、涙がぽろぽろと落ち始めた。

彼女の肩が緩み、手が腹を優しくさすった。

喜びと安心が混ざった表情で、俺を見て微笑んだ。


「亮……この子、私たちの子だよ。よかった……」


 凛の目には希望が浮かび、頰がわずかに赤らんだ。

つわりの苦しみでやつれていた顔が、一瞬だけ明るくなった。


 俺の胸が、複雑に疼いた。

安堵が一瞬湧いた。


 この子は俺の子。

あの男の種じゃない。

でも、気持ちは晴れることはなかった。


 それでも不倫の傷は癒えない。

この子が俺の子だからといって、凛を許せるわけじゃない。


 好は紙を見て、静かに息を吐いた。

彼女の目が少し曇り、唇が薄く引き結ばれた。


「…そうでしたか。 凛さん、おめでとうございます」


 好の声は穏やかだったが、手が膝の上で軽く震えていた。

彼女の表情は変わらず優しいが、目が少し遠くを見ていた。


 凛は涙を拭い、俺の手を握ろうとした。


「亮……この子のために、私たちやり直そう?

私、変わるから……」


 俺は手を引き、冷たく言った。


「…少し考えさせてくれ」


 すると、凛の顔が歪み、涙がまた溢れた。

彼女の肩が落ち、手が腹を押さえた。


 好の言葉は冷静で、目が俺をまっすぐ見た。

彼女の指がテーブルを軽く叩き、決意を込めたリズムだった。


 俺の頭の中が混乱した。

この子は俺の子。

責任はある。


 でも、凛と一緒に暮らすなんて…出来るのだろうか。

罪悪感が胸を締めつけ、息が浅くなった。

凛の涙がテーブルに落ちる音が、部屋に響いた。


 好の優しさが、俺の心を少し支えていた。

この結果が、俺たちの関係をさらに変えていくようだった。


 夜、俺は一人でベランダに出た。

雪が積もり、冷たい風が顔を打った。


「そっか…」


 後ろから好が寄り添ってきた。

彼女の体温が、俺の背中に伝わった。


「亮さん……私は全てお任せします。どんな結果であろうと」


 好の声は優しく、目が俺を心配そうに見つめていた。


 そうだ、俺は決断しないといけないのだ。


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