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妻のNTRを許す代わりに俺もNTRをすることにした  作者: 田中 又雄


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話し合い②

「ふ、ふざけるな!そんな証拠あるのかよ! 出てけ!」


 山田の声がリビングに響き渡り、部屋の空気がさらに重くなった。


 彼の顔は青ざめたまま、額の汗が一筋流れ落ち、ワイシャツの襟を濡らしていた。


 目が血走り、唇が引きつって震えている。

拳を握る手が白くなり、無意識に足を後ろに引いていた。


 美香さんは夫の横に立ち、混乱した表情で俺たちと山田を交互に見ていた。


 彼女の目には涙が浮かび始め、手がセーターの裾を強く握りしめている。


「あなた……本当なの? 不倫って……妊娠って……何よ、これ……」


 美香さんの声はか細く、震えが止まらない。

彼女の肩がわずかに下がり、膝が軽く曲がるのがわかった。


 妻として、突然の訪問者に戸惑いながらも、夫の異変を感じ取っている様子だった。


 俺の胸に、怒りと哀れみが混ざった感情が込み上げた。

この男が俺の家庭を壊したように、今、この男の家庭が壊れていく。

復讐の味は、思ったより苦かった。


「証拠なら……ありますよ」


 俺はゆっくりとポケットから凛のスマホを取り出した。


 画面をオンにし、事前に準備していたメールのスクリーンショットを開いた。


 そこには、山田から凛へのメッセージが並んでいた。


『今日のホテル、楽しみにしてる』

『あの夜、最高だった』

『奥さんにバレないように気をつける』


 日付は不倫が始まった頃のもの。

さらに、ホテルの予約確認メールや、二人が一緒に写った写真——凛の会社のパーティー後のもの——も添付されていた。


 俺はスマホを美香さんに差し出した。

彼女は震える手で受け取り、画面を覗き込んだ。

目が大きく見開かれ、息を飲む音が聞こえた。


「あなた……これ、本当? 『愛してる』って……こんなメッセージ、送ってたの?」


 美香さんの声がひび割れ、スマホを落としそうになる。

彼女の顔が蒼白くなり、唇が震え、涙がぽろぽろと落ち始めた。


 山田は妻の言葉にハッとして、スマホを奪い取ろうとした。


「美香、見るな! これは……偽物だ! 捏造だ!AIで作ったんだろ!」


 彼の動きは慌てふためき、手が空を切った。

好が素早く俺の横から割り込み、スマホを回収した。


 彼女の表情は冷静で、目が冷たく光っていた。

唇を薄く引き結び、声は低く抑えられていた。


「違うというなら、この日、この時間どこで何をしていたかを教えてくれますか?まさか、ここ書いている日付で、たまたま家にいなかった…なんて言わないですよね?それと、妊娠も事実です。今、DNA鑑定中ですし、もしあなたの子供だというなら、養育費も含めて裁判する予定ですので」


 山田の顔がさらに歪んだ。

彼は俺を睨みつけ、声を荒げたが、喉が詰まったように途切れた。


 額の汗が滴り落ち、ワイシャツが背中に張り付いているのがわかった。


 膝ががくがく震え始め、壁に寄りかかるように体を支えていた。


「くそ……あんな女に…手を出さなきゃよかった…!」と、白状する。


 その言葉に、美香さんが夫を振り向いた。

彼女の目には怒りと悲しみが混ざり、頰が紅潮していた。

声が少し高くなり、指が山田を指した。


「あなた……本当にしたの? 凛さんって、会社の若い子でしょ? 妊娠って……どういうことよ! 私たち、結婚10年なのに……子供もいないのに……こんなこと……」


 美香さんの言葉が涙で途切れ、彼女はソファに崩れ落ちた。


 肩が激しく震え、嗚咽が漏れ始めた。

部屋に彼女の泣き声が響き、観葉植物の葉がわずかに揺れた。

山田は妻を見て、顔を歪め、ようやく膝を折った。


 土下座の形になり、頭を下げた。

声が震え、額を床に擦りつけるようにして言った。


「……すみませんでした。本当に……申し訳ない。慰謝料、払います。お願いです…。会社には言わない方向で…」


 俺の胸に、複雑な感情が渦巻いた。

この男の土下座を見ても、満足感はなかった。

ただ、空虚な達成感だけ。

好が俺の横で、静かに言った。

彼女の声は冷たく、唇が薄く引き結ばれたままだった。


「こちらが動かなきゃ謝罪の一つもしなかったくせに何かを要求できると思わないでください。まぁ、不倫についての慰謝料は後で連絡します。それと、子供ができたら養育費をお願いしますね。拒否すれば裁判は覚悟しといてください。それじゃあ」


 美香さんは夫を睨み、立ち上がろうとしたが、膝が崩れた。

彼女の目には怒りが燃え、声がかすれながらも強く言った。


「あなた……最低…。離婚よ」

「そ、それだけは!俺が愛しているのお前だけだ!!」


 そんなくだらないやり取りを横目に俺達は

俺はもう何も言わず、好と一緒に部屋を出た。


 エレベーターで下りる間、俺の心は空っぽだった。

これで一つ、精算だ。


 好が俺の手を握ってきた。

彼女の指はまだ冷たかったが、優しく包み込むように。


「亮さん……よく頑張りました」


 俺は小さく頷いた。

雪の降る夜、俺たちは家路についた。

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― 新着の感想 ―
美香さんからも凜に慰謝料請求が出来るわけだが…
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