表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妻のNTRを許す代わりに俺もNTRをすることにした  作者: 田中 又雄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/18

話し合い①

 マンションのエントランスは淡い街灯に照らされ、積もり始めた雪が足元を白く染め、靴底が軽く沈む感触が伝わってきた。


 冷たい風が頰を刺し、息が白く凍る。

好は俺の横でスマホを握りしめ、息を潜めていた。


 彼女の指が少し冷たく、俺の腕を軽く握っていた。


 その触れ方が、彼女の決意を物語っているようで、俺の緊張を少し和らげてくれた。


「亮さん、覚悟はいいですか?」


 彼女の声は低く、目が鋭く光っていた。

俺はゆっくり頷いた。

ここまで来たら、後戻りはできない。

インターホンが鳴った音が、静かな夜に響いた。


「はい、どちら様ですか?」


 スピーカーから響いたのは、女性の声。

柔らかく、警戒心の薄いトーンだったが、わずかに戸惑いが混ざっていた。


 好が俺をチラリと見て、深呼吸した。

彼女の肩が少し上がり、息を整える様子が、普段の冷静な好とは少し違っていた。

俺は喉を鳴らし、声を低く抑えて応じた。


「山田健一さんの奥様ですか? 突然すみません。自分は健一さんと同じ職場の前原凛の夫でして、話をしにきました。今、お時間よろしいですか?」


一瞬の沈黙が流れた。

スピーカーから戸惑いの声が溢れる。

好の握る手が、少し強く締まった。


「……今、主人は家にいますけど……何の用件ですか?」


 声は少し尖っていた。

警戒心が強くなったのがわかった。

好が俺に目で合図し、俺は声を抑えて続けた。


「詳しくは直接お話ししたいんです。健一さんの不倫と妻の妊娠についてです」


また沈黙。

それから、オートロックが解除された。


「どうぞ……上がってください」


 エレベーターで5階まで上がる間、俺の心臓は激しく鼓動を打っていた。


 鏡に映る自分の顔は、青白く、目が血走っていた。

頰が引きつり、拳を握る手が汗ばんでいる。

好はスマホをポケットにしまい、俺の肩を軽く叩いた。

彼女の触れ方は優しく、でも力強かった。


「亮さん、落ち着いて。私がサポートします」


 その言葉に、俺は小さく息を吐いた。

エレベーターのドアが開く音が、耳に刺さった。


 502号室の前に立つと、俺はもう一度深呼吸した。

ドアをノックする手が、わずかに震えた。

内側から足音が近づき、ドアがゆっくり開いた。


 ドアを開けたのは、女性——山田の妻、美香さんだった。


 38歳とは思えない若々しい顔立ちで、黒髪をショートに切り、シンプルなセーターとジーンズ姿。


 目が少し細く、俺たちに警戒心を隠しきれていない。

彼女は俺と好を交互に見て、眉を少し寄せた。

唇が薄く引き結ばれ、手がドアノブを強く握っていた。


「…どうぞ」


 彼女の声は少し震え、落ち着かない様子であった。

俺は頷き、好と一緒に部屋に招かれた。


 リビングは広々として、ソファとテレビ、観葉植物が置かれていた。


 壁には夫婦の写真が飾られ、普通の幸せな家庭の匂いがした。

暖房の効いた空気が、俺の冷えた体を包んだが、心は凍ったままだった。


 すると、奥の部屋から、山田健一が出てきた。

35歳の男は、スーツの上着を脱ぎ、ワイシャツの袖をまくっていた。


 顔には焦りの表情が出て目が細く、口元に薄い笑みを浮かべようとしているが、顔色は青ざめた。


 目に見えて血の気が引くのがわかった。

彼の視線が俺に固定され、額に汗が浮かんだ。

唇が微かに震え、手が無意識に拳を握った。


 俺らが一向に来ないから諦めたとか思っていたのだろうか。

舐めるなよ。


 部屋の空気が一気に凍りつき、美香さんが夫を見て、不安げに声を上げた。


「あなた、知り合いなの? 不倫に妊娠って……何の話?」


 俺は一歩前に出た。

胸の奥の怒りが、言葉として溢れ出した。

俺の声は低く、震えを抑えきれなかった。


「奥さん、あなたのご主人が、私の妻と不倫して…そして、妊娠させた疑いがあるんです」


 美香さんの目が大きく見開かれた。

彼女の顔から血の気が引き、手が口元を覆った。


「え……何……?どういうこと…?」


 山田の顔がさらに青ざめ、唇が震えた。

彼は俺を睨みつけ、声を荒げた。


「ふ、ふざけるな!そんな証拠あるのかよ! 出てけ!」

「証拠なら…ありますよ」と、俺は凛のスマホをポケットから取り出した。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ