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第8章 犬猿の仲誕生‼

「私は保健室の先生でもあるけど、不登校児の親代わりでもあるのよ?そんな人がピリピリ、チクチクしてたら、心を開いて私に相談できると思う?だからこれくらい緩くてちょうどいいってもんよ」

 

 浅田先生がココアシガレットを人差し指と中指で挟んでタバコのようにすう。私も真似して吸う。

 

 「夢來さんは悩みとかないの?」

 

 悩み……無いわけない。紬のことも、菜穂花のことも、はっきり言って朔ちゃんのことも、片っ端から

 相談して楽になりたい。でも、もし相談して他の先生に言われたらもう最悪だし、まして神力関係のことを話せるわけもない。

 

 「いえ。特にないです。」

 

 浅田先生が舐めていたココアシガレットをかみ砕く。

 

 「本当に?本当は、山ほどあるけど相談して他の先生に知られたら最悪って辺りじゃないの?」

 

 図星だ。だからと言って相談する気はまだ怒らないけど。

 

 「図星って感じかな?こう見えて精神カウンセラーの資格は持ってるから。私に解決策が編み出せるかも分かんないし、もし解決策を言ったところで夢來さんの助けとなるかはわからない。でも、相談を聞いてあげる事ならできる。一緒に悩んであげることだってできる。人ってね、悩みを相談するだけで80%は

解消できるんだよね。だから、話せるところだけ、話してみない?」

 

 すぐに答えは出ない。菜穂花のことと紬のことは話してもいいんじゃないか。でも、それに対して私が

 とった行動が正しいかなんてわからない。

 

 「今すぐじゃなくていいよ。私、今から30分間くらい不登校の子にあってくるから。それまでに考えて

 おいてよ。じゃあね」

 「その不登校の子って、誰なんですか」

 「詳しくは言えないけど、あなたと同い年のKさん。男子から暴力振るわれて全治1か月くらいのけがをしてから立ち直れなくなっちゃったみたい。」

 「そう、ですか。」

 

 Kちゃんってたぶん川岸千鶴ちゃんだ。もう5ヶ月は学校に来てないもん。そんな私よりもよっぽど

 深刻な状態のこと触れ合ってる浅田先生は私の悩みなんてちっぽけに感じるんだろうな。

 まあ、相談するかしないかは先生が戻ってきてから考えよう。私は学生バックから問題集をだす。

 学校自体は中高一貫校だけど、高校は別の学校に行きたい。数学のページを開く。私はもう中3の数学

 辺りまではやっていて、得意なのは2次方程式。

  (1)x²+ 2x - 15 = 0

 簡単。本当は学校で問題集を開いちゃいけないんだけどこっそり。

 

 「お待たせ~」

 

 早くない?まだ10分くらいしかたってないはずなんだけど‼

 

 「Kちゃん今日は会いたくなかったみたいでさ。で、どうするの?」

 「相談したいです」

 

 だってこれ圧じゃん!もう圧に押されてるよ!

 

 「そう。どーんと来なさい!なんでも相談に乗ってあげるから。」

 

 もちろん、朔ちゃんや神力関係の相談はしない。分かってもらえない。確実だから

 

 「ええと、私小学生の時に大親友だと思ってた女の子からいじめられたことがあって、それから人と仲良くするのが怖くなったんです。それで中学生になって私は1人が1番楽だって気づいたんです。だから誰とも関わらなかったし、とにかく消極的でした。最初はそれが最善だと思っていました。」


 浅田先生はうんうんと腕を組みながら話を聞いてくれる。

 

 「私のクラスにはNちゃんを中心とした仲良しグループがいるんです。その仲良しグループの主格Nちゃんはいろんな人の悪口をいって他の人に共感を求めるような子でした。私は絶対にあのグループには入らないって固く心に誓っていたんです。ある日、その菜穂……Nちゃんの親友だったTちゃんが私に帰ろうって声をかけてくれたんです。次の日Tちゃんが勝手に私と帰ったことに怒ったNちゃんはグループ全員でTちゃんのことをいじめ始めたんです。私は最初びっくりして助けてあげることができませんでした。そんな私に最初はTちゃんも何で助けてくれなかったの?と怒ることもありました。でも次第に私はちゃんとTちゃんを守ろうっていう意志と勇気が出てきたんです。それから、私はTちゃんという仲間がいればどんなことも乗り越えられるという強い気持ちになっていました。でも、Nちゃん達からのいじめはひどくなって、私はTちゃんに先生にちゃんと言うように勧めたんです。その帰りたぶんTちゃんはNちゃんから何かされて……」

 

 話しているうちに紬を助けられなかった後悔で打ちのめされそうになった。

 

 「Tちゃんは不登校になってしまったんです。親友を失った私はどうすればいいのか分からなくなって

 気にしなかったNちゃん達の悪い噂も耳に入りやすくなってしまったんです。」

 

 私はうつむいた。いざ話すとなると重点を話しそびれてしまう。そのうち解決するとあっさり終わって

 しまうのだろうか。心の中でそんなことで悩むなんて小心者だと思っているんだろうか

 

 「夢來ちゃんは心が優しいんだね」

 

 え?私を責めないの?どうしてちゃんと助けなかったんだとか、もっとこうすればよかったんじゃないかとか

 

 「感受性って知ってる?」

 

 うん。前に本で読んだことある。確か……

 

 「外界の刺激・印象を受けいれる能力、物を感じとる能力だって聞いた事があります」

 

 「頭いいのね。そう。その感受性が豊かな子っていうのは、深堀すると他人の心の機微に聡く、相手の気持ちを読むことが得意な子って意味なわけ。たぶん、夢來ちゃんは感受性が豊かなんだと思うの。すぐ人の失敗は自分のせいだ、とかこれをいって向こうは傷ついてないのか、とか心配して疲れちゃうこととかない?」

 

 私は頭を大きく縦に振る。

 

 「それは人の気持ちを考えられるっていう意味で良いことでもあるんだけど、人の気持ちを考えすぎて、自責の気持ちが強くなる。そうすると、ひどい場合鬱になってしまうの。」

 

 鬱。考えたこともなかった。でも中1の最初のころはちょっと鬱気味だったかも。いろんな意味で。

 

 「だから、自分をほめるといいよ。そうすると心に余裕が持ててもっと視野を広げられたり、良い解決策が見つかったりすることもあるから」

 「でも、褒めるって、正直どうやってやればいいのかわからないんです」

 

 浅田先生がさっとTODOリストを取り出す。

 

 「TODOリストじゃないですか」

 

 浅田先生は最初の1枚をちぎるとボールペンを取り出した。

 

 「なんか今日頑張ったこととかない?」

 

 頑張ったこと?思いつかない……

 

 「難しく考えすぎなくていいのよ。例えば朝目覚まし通りに起きることができた、とか。なんでも」

 「じゃあ……朝お母さんとお父さんは寝てるのに1人で起きられた、かな」

 「うんうん、いいね」

 

 浅田先生はボールペンでスラスラっと書いていく

 

 「朝お母さんとお父さんは寝てるのに1人で起きられたっと、他にある?」

 「ええっと、朝お経を読みました」

 「……お経?まあいいや、朝お経を読んだっと」

 

 気づくとTODOリストが埋まっている。

 

 「こう見ると自分でも頑張ってるって思えるでしょ?これを毎日積み重ねてどこかに貼っておけば自分の頑張りを素直に認めて褒めることができるでしょ?」

 

 私はTODOリストををガン見しながらゆっくりうなずいた。

 

 「このTODOリスト、あげるわ」

 「え、もらえないですよ!」

 「遠慮なんかしないでもらうのが子供の礼儀!今まで頑張って来たご褒美よ。」

 

 私はTODOリストを受け取る。ずっしりとした重みがあった。

 

 「それ360枚入りなの。ここから毎日習慣付けて続けていきなさい」

 

 浅田先生はさてと、と身を乗り出す。

 

 「さっきから思ってたんだけど、あなた頭いいよね!私が来る前にやってたのも問題集でしょ!」

 

 わ、バレちゃった!でも、浅田先生は叱るときの目をしていない。本当に興味津々らしい。

 

 「ね、問題集見せて!解いてみたい!」

 

 いいですよ、と私は問題集を開いた。簡単だって思われるだろうな。私はさっき解いていた問題を開く。

 

 「x²+ 2x - 15 = 0?わからないよ。数学苦手なんだもん」

 

 意外。こういうタイプだから理系ですっていう感じだと思ってたんだけど。

 

 「え?これ中3の問題ですよ?」

 「……え、マジ?教えてください‼夢來先生!」

 「しょうがないですね。与えられた方程式は2次方程式であり、一般的な2次方程式の解き方に従って解いてい

 きます。まず、与えられた方程式を因数分解するか、または二次方程式の解の公式を用いて解を求めます。方程式を因数分解する場合、まずxの2乗に着目して(x±?)(x±?)という形に変形します。このとき、2xの項 と-15の定数項を考慮して適切な値を求めます。因数分解することで(x + 5)(x - 3) = 0となります。

 ここで、解の公式を用いるか、両辺が0となる条件を考えて解を求めます。 よって、x + 5 = 0よりx = -5、x - 3 = 0よりx = 3となるんですよ」

 「へぇ。なんかちょっと良く分からなかったけどすごいね」

 

 うん。この先生、絶対分かってないね、ニッコリ。コンコンと音がして扉が開く。

 

 「夢來、迎えに来たぞ」

 「い~⁉朔ちゃん!何で来たの!」

 「お?夢來ちゃん、彼氏のご到着かな?」

 「「違います‼」」

 

 珍しく朔ちゃんと息が合う。朔ちゃんはふうっとため息をつくと、勝手に私の横に座る。

 

 「朔ちゃんもう帰り?早くない?」

 「今は昼休みだ。」

 「何しに来たの?来なくてもいいんだけどさ」

 「ノートを見せに来たんだよ。授業の」

 「おお~‼それは有難いです!感謝致します!」

 

 私は急いで朔ちゃんのノートを書き写す。ほとんど予習でばっちりだけど、頒布という字の読みをはんぶだと思ってたから知っておいてよかった。よし、国語は写し終わった。次は数学‼

 

 「夢來、ちょっといい?」

 

 この声は浅田先生じゃない。磯良姉ちゃんだ。

 

 「磯良姉ちゃん?入ってきていいよ」

 「失礼します」

 

 磯良姉ちゃんが入ってきた瞬間、朔ちゃんが顔をしかめる。

 

 「夢來、こいつ誰だ」

 「こいつって初対面なのに失礼しちゃうわ。私は中2の宮本磯良。よろしくね」

 

 朔ちゃん!なんで返事しないわけ⁉しかもすっごく敵意の目を向けている。

 

 「お前、人じゃないな。妖気がビンビンしてる。許さない。殺傷しに来たのか⁉」

 「ちょっ、朔ちゃん!あんたバカじゃないの⁉磯良姉ちゃんは仲良しの1学年上のお姉さんだよ⁉

 妖気がビンビンするって……自分の妖気に反応してんじゃないの⁉」

 

 まずい。磯良姉ちゃん、話の意味が分からなくて困ってるに違いない。

 

 「あなた、桐生朔夜といったわよね。夢來からたまに聞くわ。それで、あなたこそ妖気と神力の2つ

 を持っているようだけど……どうしたのかしら?あなたこそ人じゃないわね?お言葉そっくりお返しするわ」

 

 なんで、磯良姉ちゃんは話が通じてるの⁉まさか。だし、磯良姉ちゃんの態度が急に変わった。いつもの優しくていいお姉ちゃんって感じの雰囲気が全くない。

 

 「磯良姉ちゃん、朔夜はね、人なんだけど色々あって神力と妖気を持ってるの。事情はあんまり話せないけどで、磯良姉ちゃんは、まさかと思うけど」

 

 突然磯良姉ちゃんに向かって青いレーザーのようなものが飛ぶ。朔ちゃんが投げたらしい。

 危ないと言いそうになったが、磯良姉ちゃんはさっと身をかわすと赤い球を投げつける。

 

 「ストーップ‼これ以上戦っても意味ないよ。後、磯良姉ちゃん人じゃないんでしょ?少なくとも、

 朔ちゃんの攻撃躱せた時点でただものじゃないよ。教えて」

 

 磯良姉ちゃんがいつものような顔つきでじっと見つめてくる。

 

 「朔夜君も夢來も特別だったのね。まあいいけど。話してあげる。攻撃しちゃった時点でバレちゃったね」

 磯良姉ちゃんが肘をつく。

 

 「ヨゲンノトリっていう妖怪はね、未来の予言をする上に人の心を操れる。

 私はそのヨゲンノトリ。別に人に悪意があるわけではないし、殺傷もしない。ただ人間界にフラッと来て予言をして楽しんでるだけ。朔夜さん、誤解しないでほしいわ」

 「……とにかく妖魔類は全て嫌いだ」

 「あらあら、頭の固い子。よっぽど恨んでるのかしら」

 

 うわぁ、犬猿の仲誕生だよ。犬が磯良姉ちゃんで猿が朔ちゃんだな。めんどくさそう……

朔ちゃんと磯良姉ちゃんって、ある意味相性が良いのではないでしょうか...

活動報告の方に、桜川夢來のプロフィールを載せてみました!

ぜひご覧ください_(._.)_

あと、夢來の読み方ですが、【むく】ではありません!【ゆら】です!

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