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第4章 勇気が欲しい

 「ねぇ、紬。昨日何があったの?私に隠してることあるでしょ?」

 

 私は思い切って紬に声をかけた。昨日、家に帰ってから考えたけど、昨日の紬は明らかに何かおかし

 かった。

 

 「そ、そんなことはないけど……」

 

 言うつもりはないみたい。だったら、奥の手を使うしかないかな……

 私は大きく息を吸い、目をつむった。紬の過去を見せて下さい。ジュッ。

 また、ドラマを見ているように昨日の紬の行動が浮かび上がってきた。

 紬、菜穂花に仕込まれて先生にまで怒られちゃったんだ。

 

 「……紬、菜穂花に泥棒みたいに仕込まれたの?」

 

 私は記憶をたどった後、そうつぶやいた。

 

 「なんでわかるの?」

 「分かるから。」

 

 夢來は苦笑いをした。

 

 「こういうことは、全部私に相談しなさいね!親友なんだから!」

 「う……ん」

 

 私のきっぱりとした言葉に安心したのか、紬は嗚咽をあげはじめた。

 紬をこんなに悲しませるなんて……菜穂花のやつ、ゆるさない

 

 「ね~え、夢來さん」

 

 フフン、いいタイミングで声をかけてきてくれたねぇ。よし、決めゼリフ!

 

 「菜穂花、私はあんたを許さない!」

 

 私は少し不気味な笑い声をあげながら菜穂花に向き合う。菜穂花がきょとんとした顔で私を見つめてき 

 た。

 

 「裏で、何やってるの?」

 

 私は一見笑っているように見えているだろう。でも、目だけは笑っていない。

 

 「何って……な~んにもやってないよぉ?」

 

 ふん。嘘つきが。さっき紬の昨日の過去を見た時、あわせて菜穂花の行動も見えてしまっている。

 でも、もう何を言っても意味ない気がする。……諦めないとダメかな。

 

 「もう、いいや。あなたには、諦めついたから」

 「はぁ⁉ふざけないでよ?あんたは私のなんだっていうわけ⁉あんたは親⁉先生⁉」

 「感情的になっちゃって……少しは自制を覚えなさい」

 

 少し前の私だったら絶対にこんなこと言えなかっただろう。でも、紬が私に感情を与えてくれた。

 だから、何があっても紬のことを守るって決めたんだから

 

 「答えろっつってんだろ‼」

 

 でも……さすがに菜穂花の豹変ぶりには興ざめする。

 菜穂花の拳が私の目の前に振りかぶって来る。目に神力を込めた。菜穂花の動きが止まる。

 

 「夢……來⁉」

 「フン!この瞬間に先生が立ち会ってればよかったのに。」

 

 私は動きが鈍った菜穂花の横を鼻であしらいながら通り過ぎた。

 

 「夢來~今何があったの⁉菜穂花によく殴られなかったね!」

 「紬……」

 

 夢來?と紬が少し怪訝な顔をする。

 

 「紬の味方だよ、ずっと。あとさ、菜穂花のこと、ちゃんと先生に言った方がいいと思う」

 「……えぇ、でもぉ。もう信じてもらえないよ。」 

 「いいから、勇気を出して」

 

 私の笑顔に紬のひきつった顔が緩んだ。

 ………………………………………………………………………………………………………………………………

 紬は深呼吸をする。夢來の言葉を聞いた時は先生に言おうってなったけど、実際言うとなると緊張する。

 でも既に先生に声を掛けちゃったんだ。……よし‼

 

 「で、なんで呼び出したんだ?紬」

 「その、本当のことを話に来たんです」

 

 先生がパソコンをいじっていた手を止めた。

 

 「本当のこと?」

 先生に見つめられて、息が上がって来た。フーへー

 

 「えっとですね、私は菜穂花と前中が良かったんです。それで、」

 「また苦しもがきに来たのか。もう嘘をつかなくていい。嘘をつけばつくほど自分を苦しめ……」

 「違うんです‼聞いてください‼」

 

 私の心からの叫びに一瞬先生が目を見開いた。

 

 「私は、私は、もともと菜穂花と仲が良かったんです。でも、ある日私と夢來ちゃん2人で帰ったら次の日

 私はお手洗いに追い詰められて私を見捨てたの?って凄い顔で見られたんです。その日から私は菜穂花達

 から仲間外れにされるようになったんです。だから、鉛筆を盗んだっていうのも陰謀なんです‼」

 先生は私の顔を真正面から見つめる。

 

 「それは……本当か?」

 「本当です」

 

 お願い‼先生、信じて……

 

 「わかった、もう帰れ」

 

 先生の返事はぶっきらぼうだった。でも、紬には分かった。信じてくれたって。

 

 「じゃあ、ありがとうございました。さようなら、先生」

 「おう」

 

 先生に言えて、気が楽になったかも。疑われてるときって、誰でもいい気しないもん。

 紬はスキップをしながら2階から階段を下りる。夢來と帰りたかったな。

 紬は少し速度を落としながら、最後の1段を下りた。ん?下駄箱の陰に人影が見えた。

 もしかして、夢來?私の事待ってて、驚かせようとしてたのかな。よぉし、先生にちゃんと言えたって

 言おう。きっと喜んでくれるはず‼

 

 「夢來ー‼」

 「あ、紬」

 

 紬はその瞬間鳥肌が立った。夢來じゃ、ない。この声は絶対に夢來じゃない。菜穂、花だ。

 どうしよう‼なんでいるの⁉まさか、私が先生に言ったこと知ってるの⁉

 

 「紬、今なにしてたの?」

 

 シルエットになって、だいぶ見えずらいけど、菜穂花の口元は笑っていた。

 

 「べ、別に、ただ遅くなっただけ」

 「嘘つくな‼」

 

 菜穂花が急にとびかかって来る。壁、私、菜穂花という風に挟まれてしまった。

 

 「私たちの事、チクったらどうなるか分かってるよね?」

 

 私たち?まさか‼菜穂花の背後を見ると他の女子達も近づいてきた。

 

 「ヒッ‼」

 

 菜穂花の手元がきらりと光る。

 

 「ちゃ~んと、私がお仕置きしてあげるからね」

 

 ぞっとする笑みに体が固まる。菜穂花の右手が瞬間的に私の首元をつかむ。

 紬はこの上ない絶望感を味わった。

 空いている菜穂花の左手が少しずつ上にあがる。

 

 「やめ、て⁉たす、けて……!」

 

 だが、もう手遅れだった。紬の頬を菜穂花の拳が掠る 

 「どうしてこんなことするの?」

 

 紬は顔に手を当てながら震える声で言った。

 

 「そういう自覚がないところ、ほんと直した方がいいよ?」

 

 勝ち誇ったような笑い声をあげながら菜穂花達は紬の前から立ち去った。 

紬の心のダメージは相当なものだったのでしょう....

紬&夢來vs菜穂花&子分 

ですね

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