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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

お転婆な令嬢? これは淑女のたしなみです!!

作者: 西の宮

「スザンヌ・ヴァロース公爵令嬢!

お前が学園内で様々な悪事を働き、フラーラ男爵令嬢を始め

リリアンナ子爵令嬢や、ヴィルヘルミナ伯爵令嬢達を虐めた事はわかっている!

私はこの場でお前との婚約を―― 」



ドスッ! 

グサッ!



「……は?」

「きゃっ、えっ?」



 会話を遮るように心臓に突き立てられた2本のナイフを 一瞬見つめた後

ナイジェル王子と“新しい婚約者”フラーラ男爵令嬢は血を吐きながら崩れ落ちる。


 王族の断末魔ってもっと劇的なものかと思っていたけれどこんなものか

馬鹿王子に最後の期待をした私も大概だけど、なんともつまらない幕切れね

やっぱりナイジェル様を略奪した、フラーラの最期の言葉が聞けるように、心臓から少しズラすべきだった?


 本当は撲殺が良かったんだけど


――でもアレを持ち込んだら、流石に目立ちすぎるから仕方ないか



「な、なな ナイジェル様が刺されたぞ!!!」

「おい馬鹿!フラーラ令嬢もだ!」

「王子の方が先……いや、それより医者だ! 誰か今すぐ医者を呼べ!!」



 うーん ちゃんと2人の心臓を刺せたから

医者が来ても手遅れなことを教えてあげた方がいいかしら?



 国王夫妻も参加する、今夜の第2王子ナイジェル様の誕生日パーティの途中に

婚約者である、あの方から婚約破棄を受けるだけでなく

悪役令嬢として、私が犯してもいない罪まで押し付けられる事を

ナイジェル様の弟である 第3王子・シーザー様から聞いてはいたので

念のためにナイフを用意したが、本当に陛下達の前で断罪し始めるなんて――



 ま、彼等にトドメを刺したばかりの私が言えた台詞ではないのだけど!



「国王陛下、王妃殿下、そして皆さま方 もう2人は亡くなってますわ」

「万が一 心臓を刺せなくても確実に殺せるように あのナイフの先端にはギリリムアントの毒を塗っておきましたのでご安心ください

たまたま、本当に偶然なのですが タイミングの悪い事に、王宮の医務室にあるギリリムアント用の薬瓶が昨日割れてしまいましたの 」



 昨日、「うっかり」怪我をして、宮中の医務室に行った時

「たまたま」袖が当たって薬瓶を割ってしまったのだけれど 

こういう偶然って続くものよね?ふふっ



「だ 誰かスザンヌ嬢を、いやこの娘を取り押さえよ!何を呆けておるか 衛兵!」



 我に返った国王の怒声と共に、兵士達が私の所へ駆け寄ってくる

積極的な殿方は好きだけど、そんなに睨まないで欲しいわね



「あら、ごめんあそばせ?」

「まぁ強引な方ね でもそれじゃあ私をリード出来ませんわ ほらもっとしっかり踏み込んで!」

「右 右 左  ああ、もう その足運びじゃ相手の足を踏んでしまいますわよ?」



 私を捕まえようとする兵士達と軽やかに踊りながら、ちゃんと彼等に指摘しないと

おっと、後ろからも抱きつこうだなんて 私襲われているみたいで怖いわ!



「小娘1人に何をしている!さっさと捕えぬか!」



 陛下の更なる怒声が飛ぶが、群がる兵士の間を軽やかに駆け抜ける

王妃様ったらナイジェル様を抱きしめちゃって……毒に触れなきゃいいのだけれど

もう宮内に薬はないものね


 それにしてもさすがお母様のドレス、特注とは聞いていたけど本当に軽やかだわ

でもこの靴じゃ蹴り飛ばせないのが残念

うーん めんどうくさい……やっぱりガツンと殴れないってストレスになるわね

 

 耐えろ、私! 踊れ、衛兵!



「おい、スザンヌ嬢はなんであのドレスで捕まらないんだ?」

「あの靴も走りにくい……って言うか普通ドレスで走れないよな?

 飛んだり跳ねたりしてるけど なんなんだよ」

「衛兵達も何をしてるんだよ! 5人がかりで飛び掛かってるのに またかわされてるぞ!?」

「スザンヌ嬢ってこんなにお転婆な方だったのか……お転婆で済むのかなぁ」



「あら、このくらいは淑女のたしなみですわ!」



 衛兵達とのダンスを見ているギャラリーに向かって叫ぶ。

あの馬鹿……おっと、ナイジェル様とフラーラ嬢殺害を魅せてしまったんだもの

少しくらいは彼等にも説明が必要かしら


 全然 説明になってない?

無実の罪で断罪されそうになったから、2人を殺した うん、とってもシンプル



 ねぇフローラ嬢、あなたがナイジェル様に色々吹き込んで ヴァロース家の根も葉もない悪評を社交界で広めてた事は知ってるのよ?

最近学友達もやけに私を、我が家の人間を避けるからおかしいとは思ってたの

ナイジェル様を使って国王陛下や皇后殿下の前で私を断罪し、ヴァロース家を潰そうとしたんだろうけど


 彼女の話を鵜呑みにして、私を悪役として切り捨てようとしたナイジェル様も王族失格よね

仮にも婚約者の悪評を聞いたなら、王族の方で調査するくらいしなさい


 そもそも令嬢達へのイジメなんてコソコソとやらないわ

何か企むよりも、私はガツンと殺る派ですもの



――フィジカルは裏切らない 

我が家の家訓である 淑女のたしなみは守ります!



「なぁ、リリアナ 君もあんな風に飛び跳ねれるのか?」

「馬鹿なこと言わないでください 出来るわけありません。

 フォーラム様はどうなのです? 殿方なら容易いのかしら」

「無理に決まってるだろう、そんな事出来る人間が居るわけ――居たな?」



 あら、リリアナ様には出来ないらしい

毎日18キロのダンベルを握りながらダンスの練習をしていれば、誰でも出来るようになるのよ?

お母様なんて、私が幼少の頃から20キロのダンベルを両手に握りしめながら

顔色1つ変えず 優雅なステップのお手本を見せてくださったのに 


 最近は非力な令嬢が多いと嘆いていたけれど この事を憂いていたのかしら?


 リリアナ様のダンスは見事だから、毎日鍛えれば 私よりも軽々と飛び跳ねれると思ったのだけど

惜しい才能だわ、もっと早く練習に誘えば良かった



 それはそうと、衛兵とのダンスも飽きてきたし 

 そろそろこの余興を終わりにしようかしら



「か、かっ観念したか スザンヌ嬢! はぁはぁはぁ すこ、あの ちょっと休んでくれないか?」

「はぁはぁ……疲れたぁ いい加減に諦めろ いえ諦めてくれません?」

「なんでこの方は少し息が上がってるだけなん……だ? い 色々、いや全部おかしいだろ コイツ!」



 コイツ呼ばわりなんて酷いお方

この程度のダンスで疲れた、だなんて 衛兵はダンスの練習をあまりなさらないのかしら

それとも衛兵だから 普段は練習と無縁なのかも? 

いくら貴族達のダンスを見ていても、ちゃんと自分で練習しないと踊れないものね



 チラリと玉座の方を見るとシーザー王子がこっそり親指を立てている

ぐっ! 

王子様スマイルの よくやった!って顔は隠しておいた方がいいわよ


 陛下は顔を真っ赤にして怒鳴ってるし、王妃は泣いてるから今ならバレない…のかな



「ええい 使えぬ兵共だ 誰でもいいからあの娘を!スザンヌを捕えよ!」



 何度目かの陛下の声が広間に響くが、呼吸の荒い衛兵達を横目に 貴族達は既にみんな壁際へと避難済み

ちょっと飛び跳ねすぎたかしら? ごめんなさいね、皆様のダンスの邪魔をしてしまって 


 もう私と踊ってくれる方は居ないみたい、これは 本当に潮時ね



「それではみなさま、スザンヌ・ヴァロースの舞踏会はこれにて閉幕とさせていただきます

 わたくしのダンスの相手をしてくださった 衛兵の方々と

 みなさまのお時間をいただきました事に感謝を申し上げます ありがとうございました」



 微笑みをたたえたまま

ダンスのせいで少しボロボロになったドレスの裾を両手で軽く摘み上げ、一礼っと



「では、失礼いたします」



 絹の衣擦れの音を残しながら、しとやかにその場を……

ここからは全力ダッシュ開始!!!

騒ぎを聞きつけたのか、向こうから兵士が多数やってくる。


 5~6人相手くらいなら一昼夜くらいなら踊れても、流石にあれはムリムリ

それに陛下の怒鳴り声がいい加減耳障り、ナイジェル様のうるさい所は父親譲りだったようね 

陛下が怒鳴っている姿なんて初めて見たから知らなかったわ


 シーザー王子に教えていただいた、王族専用の隠し通路へ向かう


 王位継承の件で昔から兄弟仲は悪かったけど、あの方が兄ならそりゃ疲れるわよね 

むしろこの国に、ボンクラな王が誕生するのを阻止したんだから

私って感謝の1つと言わず、2つや3つくらい貰っておけば良かったかしら?

 

でも我が家に置いておいた愛用のダンベルを、隠し部屋に運んでおいてくれたから

シーザー王子には ありがとうございますっと


 こうして愛用のマイ・ダンベルを抱えた スザンヌ・ヴァロースの逃亡劇は始まった



 えっ?なんであんなに動けたのかって?

 そんなの――淑女のたしなみですわ!



断罪シーンも書いたのですが スザンヌのダンベルに潰されたので次回作で使いますね


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ジャンルが恋愛だから読んだのに、なにこれ詐欺じゃん
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