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99人の勇者と平民の俺  作者: 甘党むとう
『99人の勇者と平民の俺』
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第7話 理由

 陰りを帯び始めた街に、少しずつ光が灯り始める。

 あの後、オオカミやカラスに襲われ街まで想像以上に時間がかかった俺たち。女の子が回復薬をたくさん持っていたのでなんとか乗り切れたが、俺の体力はもう限界だった。


 街に着いてすぐ宿屋に行き、俺は昨日の部屋をとった。そこで軽く女の子と話をしたが、あまりの疲労で眠そうに目をこする俺を見て、女の子がまた明日来てもいいですか? と言ってくれた。頷く俺。女の子は異世界に来た時にたくさんのお金を持っていたらしく別で自分の宿をとった。

 

 女の子は皆、始めに多くのお金を与えられるのかもしれない。

 自称神のエロじじいめ。次会ったらぶん殴ってやる。

 毎度お決まりの悪態をついた後、この日も俺は布団に飛び込んで泥のように眠った。


ーーーーーーーーーー


 次の日、朝起きて俺が最初に発した音は腹の音だった。

 そういえば、昨日晩ご飯を食べるのを忘れていた。

 とりあえず何か食べ物を買いに行こう。


 そう思い、俺は部屋を出ようと扉を開けた。

 すると、扉の外に昨日の女の子が立っていた。


「うわぁ!?」


 思わず驚きの声が飛びでる。


「ひゃぁ!?」


 女の子も驚きの声をあげた。


「ごめん! 急に大きな声を出して」

「いえ、こちらこそすいません。こんなところに立っていて」


 気まずい空気が流れる。


「あの、昨日、お腹を空かしているようだったので、食べ物を……」


 この空気に耐えきれなくなったのか、両手を前に出す女の子。

 よく見ると、ピクニックなどで使うブランケットを持っていた。


「持ってきてくれたの?」

「はい……。あっ、でもご迷惑なら帰ります!」

「いやいや、嬉しいよ! 上がって上がって」

「あ、ありがとうございます」


 ありがとうを言うのはこっちの方だ。

 女の子は俺に「どうぞ、食べてください」と言ってブランケットを渡した後、俺に促されるまま椅子に座った。


「昨日は本当にありがとうございました」

「いいよ、気にしないで」


 俺は女の子が持ってきてくれたブランケットからパンをとり、食べながら答えた。

 うまい! こんなに美味しいパンは生まれて初めてだ!!


「本当に助かりました」

「昨日は海斗たちに置いていかれたんだろ?」

「……どうしてそれを?」

「俺も二日前に置いていかれたからな」

「あなたもなんですか??」

「ああ、一緒だな」

「……はい」


 悲しげな表情を見せる女の子。

 おそらくひどいことを言われて、森の中に置いてかれたのだろう。

 何を言われたか、想像に難くない。


「俺は山中悠斗。君の名前は?」

「わ、渡辺桜です」

「桜か。よろしく!」

「よ、よろしくお願いします」

「ところで、あんまりステータスが良くないのか?」

「いえ、ステータスは皆さんに褒めてもらいました。ただ……」

 

 そう言って桜は「ステータス」と言った。


ワタナベサクラ

 職業 勇者

 レベル 2

 HP 52

 MP 81

 ちから 10

 みのまもり 35

 かしこさ 77

 すばやさ 34

 みりょく 3

 

 スキル S 炎帝 レベル1 (炎を自由に操る)


 ……。


 これで置いて行かれるとか、海斗たちはどれだけ高望みをしているんだ?

 ちからやみりょくは低いが、かしこさとMPの値が異常に高い。これなら魔法使いとして充分活躍できるだろう。それになんといっても、Sランクスキルの『炎帝』。炎を自由に操るだなんて、海斗の『水神』とほぼ同じ能力じゃないか!

 これはめちゃくちゃ強いだろ!!


 絶句する俺を見て、桜が口を開いた。


「私、火が怖いんです」


 あっ、そりゃ置いていかれるわ。

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