勘違い令嬢は断罪直前全力逃亡で全てを捨て去り置き去りにして最速の冒険者になった。
「ヘンリエッタ……お前に……」
婚約者のエドワード王子が言いかけたところで、ヘンリエッタには全てが理解った。
これってあれだ!
最近流行ってる悪役令嬢が断罪される奴!
そう、貴族女性の間で流行っている小説がある。
王子が身分の低い健気な女に惚れて、嫉妬した婚約者の悪役の女が意地悪をして断罪される奴!
ヘンリエッタに意地悪した覚えは無いけど、これは多分絶対そう!
「理解りました!さようなら!」
ヘンリエッタは身を翻しその場を後にした。
「おい!ちょっと待っ……!」
ふふふ……小説を読みながら考えていたの。
私だったらどうするかって。
それが本当に役立つことになろうとは!!
ヘンリエッタは魔法の才能があった。
珍しい雷魔法だ。
それを利用して身体に微弱な電流を流し、筋肉を魔法でコントロールする事で、ヘンリエッタは全てを置き去りにする走りを手に入れていた。
そして、この才能を利用して冒険者になろうと考えていたのだ!
考えるついでに用意もしていた!
ヘンリエッタは厨二病という奴だった。
こんな日が本当に来るとは思っていないのに、準備はしっかりしちゃうちょっと痛い子だった。
そして、思い込みが激しく、思い立ったらすぐに行動する落ち着きの無い子だった。
ただ、性格は良いと言うことは一応主張しておく。
高速で移動したヘンリエッタは、身なりを冒険者らしく整えた。
そして、書き置きを残してすぐに旅に出た。
――探さないでください。
ヘレナという偽名を使って早速冒険者として登録した。
その強さは折り紙付きだった。
侯爵の父がヘンリエッタが女に生まれた事をどれだけ嘆いたことか。
男に生まれていれば、兄ではなくお前に跡を継がせるのにと。
武芸に秀でたヘンリエッタ改めヘレナは、雷電を纏った剣で目に見えぬ速度でモンスターを撃退していった。
ついた二つ名が“閃光のヘレナ”
もしくは、“せっかちヘレナ”
人の話を聞かない性質は治っていなかった。
ヘレナが冒険者ギルドで次の仕事を探していると、馴染みの冒険者が声を掛けてきた。
「お前また勘違いして盗賊全滅させたんだって?
商人の護衛だけだったはずなのに」
「え?そうだったの?盗賊をどうにかして欲しいって言ってたから全部やっつけろって話だと思っちゃった。
ならもっと報酬貰っても良かったのかな?」
「ちゃんとそこら辺は確認してから依頼受けろよ……ってお前に言っても無駄だろうな。
ところでお前を探してる貴族様がいたらしいぞ?
何をやらかした?」
「げげっ!!いや、何にもしてない!私のことは黙っといてよね!」
「んー……相手次第かな。金を貰えりゃ口はいくらでも軽くなるかな」
「酷い……裏切るなんて」
「まあ、いくら頼んでもお前は俺とパーティ組んでくんないもんな。
なあ……俺たち知り合ってもう一年になるだろ?
パーティ組むよりもさ、俺実はお前のこと……」
「あ!この依頼楽しそう!他の人に取られる前に受注しないと!じゃあね!」
「おう…………本当に人の話聞かねーなぁ」
そして、ヘレナは次の仕事に全力疾走で出かけた。
森の中を駆け抜けるヘレナ。
「おい!ヘンリエッ…………」
むむっ!?どこかで聞いた様な声がした気がした。
しかし今は忙しいので無視。
気のせいかも。
何にせよ面倒臭いので更に速度を上げる。
誰かの声を置き去りにヘレナはモンスターの群れに全力で挑み掛かった。
ヘレナは他の冒険者とパーティを組まない。
誰も彼もがヘレナからすると遅過ぎて足手纏いだ。
なので他の冒険者との仕事中の馴れ合いはしないのである。
しかし、
「最近仕事中に話しかけてくる人が多いわね……」
もしかして同一人物だろうか。
ストーカーって奴?
そういえば貴族が追いかけてきてるとか言ってたわよね?
ギルドの滞在時間も極力減らしましょう。
その後も仕事中の爆走中に話しかける声が聞こえた様な気がする事があったが、それは全て無視した。
気がつけばヘレナはSランク冒険者になっていた。
そして、その日も仕事をしている。
モンスターの群れを蹴散らし、後はボスクラスの奴を倒す所で……。
ボスが真っ二つになった。
「何!?私の獲物が!!誰!?」
「……ようやく俺と話をしてくれる気になったか、ヘンリエッタ」
そこにはかつての婚約者、エドワード王子がいた。
「貴方とはもう婚約破棄したはず!」
「してない!いつしたんだ!……とにかく話を遮らずに聞いてくれ!!」
ヘンリエッタが断罪されて婚約破棄となると勘違いしたあの日、別にエドワード王子はヘンリエッタを責めるつもりは一切無かったらしい。
単に男爵令嬢が変な言い掛かりを付けているが、一応両者の言い分を確かめようとしただけなのに、ヘンリエッタが何故か誰も止められない速度で行方不明になってしまったのだそうだ。
そして、有名な冒険者のヘレナがヘンリエッタでは無いかとの調査報告が来たのでエドワードも何度も確かめようとした。
しかし、ヘンリエッタが確認が難しい速度でいつもエドワードを置き去りにし、なかなか追いかけても捕まらなかったので、今回は依頼の目的の方で待ち伏せしていたそうだ。
「つまり……私たちはまだ……婚約者?」
「そうだ」
「そして……これから断罪される?」
「違う!結婚するんだ!結婚してくれ!」
こうして王子のモンスターの死体に囲まれてのプロポーズは成功した。
その後、二人はたくさんの子供に恵まれた。
子供との追いかけっこでも、エドワードはなかなか子供たちを捕まえる事ができないようだった。
エドワード王子はいつだって妃を追いかけ回していて、その寵愛のほどを知らない者は国内には一人もいなかった。
勢いだけで書きました!
他にも色々な作品を書いているので読んでみてください!
「死んだ姉夫婦の代わりに甥っ子を育ててます!」
という作品は日間、週間ランキング入りしてるので是非一読お願いしますm(._.)m
そっちは頼もしい男性がヒーローです。
読んでいただきありがとうございました!




