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73話 決勝戦

ついに決勝戦が始まる。


誰もが注目する中、その試合は始まった。


クラウスはアメリアの前に立ち、杖を構えながら話しかける。


「お前とこうして戦うことになるとはな」


彼は不敵な笑みを浮かべる。


「学園一と謳われるクラウス様と手合わせいただけるとは光栄です」


彼女もそう言って笑った。


余裕を見せようとするアメリアだったが、先ほど以上に緊張しているのは外から見ても分かった。


最初に攻撃を仕掛けたのはアメリアだった。


水魔法に対抗しやすいのは土魔法だ。


アメリアは土魔法を使って積極的にクラウスを攻めて行った。


アメリアから攻撃を仕掛けるのは珍しい。


今まで見て来た試合でもアメリアは基本防御に力を入れ、攻撃は二の次だった。


しかし、この試合ではアメリアの方から積極的に攻撃を仕掛ける。


それほどクラウスという男を恐れているという証拠だろう。


クラウスは至って冷静だった。


アメリアの攻撃を一つずつ躱し、自分の真上に水の玉を複数作るとそれを銃弾のように放った。


さながらそれはマシンガンで撃ったような攻撃だった。


これにはアメリアも防御に徹するしかない。


この試合は平行線のまま、お互いに大きなダメージを与えられないまま進行していった。


正直なところ、自分はアメリアとクラウスどちらを応援すればいいのかわからなかった。


最初はアメリアが優勝すればと思っていたが、それでは彼女が宮廷魔術師候補として選ばれてしまう。


彼女が学園からいなくなることは願ってもいない幸運だろう。


しかし、それで何事もなく終わるなんてことは考えられない。


それ以上にとんでもないイベントが起きて、私達ではもうどうにも手出しできないようになるのは怖かった。


かといってこのままクラウスが勝てば、アメリアの実力がまだまだだと判断される可能性だってある。


私はこの試合で彼女が光の巫女として相応しい人物だと、宰相自ら太鼓判を押してほしいだけなのだ。


物事はある程度コントロールできる範囲にあるから安心できるのだ。


彼女が我々の視界の外に出た時、この世界がどう変化するかは未知なるルートだ。


彼女が王宮魔術師候補となったところで、私の破滅ルートが回避できるかはわからない。


それに彼女が学園から去ったところで、彼らの想いが途切れるわけでもないだろうし、婚約者として私が邪魔な事には変わりがないのだ。


悩んでいる場合ではないのに、私の頭の中は混乱していた。






リオはクラウスとアメリアの試合を会場の外で静観していた。


今のところ、二人の力の差は五分五分。


これを見て、宰相がどう判断するかはわからない。


もし彼女が王宮魔術師候補として実力を認められれば、この学園から追い出すことが出来、尚且つリオの母親であり、グラブディア王国元王妃を宮廷に上げる事を阻止できる。


ただ、リオにはまだアメリアにこの学園からいなくなってもらっては困る事情があった。


その事にエリザは気づいていない様子だったが、彼女がシナリオの全貌を思い出せばわかることだった。


彼女にとってはアメリアをここで排除できることは好機と思っているかもしれない。


しかし、ことはそう単純ではない。


だからこそ、リオはアメリアをここで勝たすわけにはいかなかった。


リオは周りに見つからないようにそっと杖を出す。


ここで一番気に留めておかなければならない人物、サディアスとウィリアムの様子を窺った。


二人はアメリアの様子に気を取られ、周りには着目する余裕はなさそうだ。


それがわかるとリオはそっと呪文を唱え、杖を振った。






なかなかの接戦になっていた。


二人ともかなり体力を消耗している様子だったが、音を上げるようには見えない。


少しの間、静寂な時が流れる。


このままただ攻撃を仕掛けただけでは決着が付きそうになかったからだ。


アメリアは会場の隅々まで目線を向ける。


クラウスに勝つにはどこを狙えばいいのか、考えていた。


彼に誤魔化しなど通用しそうにない。


彼女が再度杖を構えようとした時、身体が動かないことに気が付いた。


最初はクラウスから攻撃を受けたのかと思っていたが、その様子はない。


ただ、身体が地面に縫い付けられたように動かなくなっていた。


それに何かぞわりと体中に鳥肌が立つような不気味さを感じていた。


これは今まで試合で使われてきた四属性の魔法とは明らかに違う。


どちらかというとアメリアの光魔法に似ていた。


アメリアが動けないことにクラウスは気づいていなかった。


彼は頭上に大きな水の塊を作り、これを最後の攻撃とするつもりのようだった。


その水はあまりに巨大で結界内を埋め尽くすほどの大きさだ。


「アメリア、許せ」


彼はそう言ってアメリアに放った。


これなら、彼女が防御したとしても多少なりともダメージは与えられるだろうと思ったからだ。


しかし、彼女は防御魔法を使おうとはしなかった。


躱すこともなく、そのまま直に魔法を受けるつもりだ。


これにはクラウスは驚き、彼女に向かって手を突き出して叫んだ。


「アメリア!」


アメリアの一番得意とする防御魔法を使わないとは計算違いだ。


彼女の実力ならここで魔力量が尽きたということもないだろう。


クラウスには彼女が何を考えているかわからない。


彼が自分の放った魔法をどうにかしようと再び杖を振ったが間に合わず、その魔法はアメリアに直撃する。


そしてその攻撃の衝撃の後に残ったのは、意識を失い倒れたアメリアだった。


審判も慌てて試合を中断させ、クラウスが慌てて駆け寄る。


「クラウス・テイラーの勝利!」


審判のその声に観戦していた生徒たちが歓声の声を上げていた。


「さすがクラウス様!」


ロゼも椅子から立ち上がって、彼に熱い目線を向ける。


しかし、そんな言葉はクラウスの耳には届いていないようだった。


ぐったりと倒れた彼女を抱え上げ、黙って会場を降りる。


そこにウィリアムやルークも駆け寄ってきた。


「アメリア、大丈夫か!?」


するとクラウスはそんな二人を睨みつけ冷たく言い放った。


「彼女は俺が責任をもって手当てする。お前たちは俺たちにかまうな」


「でも!」


ルークがクラウスの言葉に反抗しようとしたが、彼のその鋭い眼光に言葉を失い沈黙する。


「アメリアは大丈夫なのか?」


ウィリアムは不安そうな顔でクラウスに聞いた。


「問題はない。防御魔法を使わなかったことは想定外だったが、大怪我を負わせる気は元々なかった。今は気を失っているだけだ」


あれだけの魔法だ。


当然だろうと思いながら、心配せずにいられなかった。


クラウスは救護班に囲まれながら、アメリアを連れて保健室に向かう。


それを二人はただ黙って見送っていた。


その後ろには手を震わせたリオが暗い顔をして立っていた。


「この魔法がこんなに強力とは思わなかったけど、これでいい……。これで良かったんだ」


彼は小さな声で呟いた後、その場に膝をついた。


それを見つけたエリザがリオの名を呼ぶ。


「リオ! 大丈夫?」


彼に何があったのかわからず、エリザは混乱していた。


そんなエリザにリオは顔を真っ青にしながらも、いつものように皮肉めいた笑みを浮かべた。


「大丈夫。君が気にする必要はないよ」


彼はそう言って立ち上がったが、身体が思うように動かずふらついていた。


それを慌ててエリザが支える。


「全然大丈夫じゃないじゃん。体調が悪いなら一緒に保健室に行こうよ」


その言葉を聞いて、リオは慌ててエリザを払いのけた。


「大丈夫って言っているだろう! ボクに構わないでくれ」


彼はそう叫んでふらふらしながらもいつもの科学室に向かって歩き出した。


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