51話 森林演習
全くシナリオ改変が進行していない中、変わったことと言えばクラスで私の悪口が減ったということだろうか。
ルークの私への態度がぼっちになる前ぐらいに戻ったので、周りの生徒も言いづらくなってきたのか、あまり騒ぐことがなくなった。
相変わらずロゼだけは私を目の敵にしてくるけど、最近は嫌味のネタも切れたのかもしれない。
段々、普通の挨拶に聞こえて来る。
なぜかロゼが一言二言話した後、セレナが私に向かって笑顔で手を振るようになってきたのだけれど、あれはどういう意味だろう?
私もとりあえず振り返すようにはしている。
「今日の魔法実習は学園内の中にある森林内の魔物討伐演習だ」
サディアスは実習を始める前に生徒たちにそう告げた。
魔物討伐なんて初めてだし、練習場以外の場所での実習も初めての事なので皆、戸惑っているようだった。
そんな中でとある生徒がサディアスに質問する。
「この学園の森に魔物なんていたんですか?」
確かにそんな話は今までにも聞いたことがいない。
それにもしいたとするなら学園生活の中で誰かが見ているはずだし、生徒が襲われていてもおかしくない。
「本物の魔物はいない。そもそもこの森林も人工的に作ったものだしな。今回の魔物討伐も魔物自体は魔力で作ったただのはりぼてだ。それでも気を抜くんじゃないぞ!」
はりぼてかぁと一気に生徒達の緊張が薄れた気がする。
ついに演習が始まったのかと私も少し不安になっていた。
私はまだ基礎魔法しか取得していないし、攻撃魔法も防御魔法も簡単なものを練習している最中だ。
それにこういうのってグループで行動するものじゃなかったけ?
ぼっちの私からしたら、最悪な展開だ。
「それぞれ四人のグループを作って演習に臨むこと」
ほらほら来たと私は周りを見渡した。
周りの生徒達は次々と仲のいいメンバーでグループを作っている。
「アメリア、一緒にやろう!」
ギルバートが早速アメリアをグループに誘っていた。
「なら、俺も一緒な。ウィルも一緒に行こうぜ!」
今度はルークがウィリアムを誘って、ギルバート達と合流した。
最強メンバー集合って感じかぁ。
一人魔法技術最下位な奴はいるけどな。
そんな風に周りを観察しながらのんびりと構えていると、後ろからサディアスに声をかけられた。
「おい、エリザ。お前は誰と組むんだ?」
それを私に聞くか?と思いながら、サディアスの方を見つめた。
私と組むようなクラスメイトがいるとでも思っているのだろうか。
「そうか。よし、わかった。パワーバランスもあるしな」
サディアスは何かを納得したのか、遠巻きに見えるアメリアを呼んだ。
まさか、アメリアと組めと言うのだろうか?
それはさすがに気まずいが、アメリアならあっさり承諾しそうだ。
しかし、そう言うわけでもなさそうだ。
呼ばれたアメリアはサディアスの前に立って何か指示を聞いていた。
そして改めてサディアスが私を呼んで、私をウィリアム達のグループに入れた。
「ウィリアムもルークも魔法技術は上級者だからな。アメリアまでいたらパワーバランスが崩れるだろう。だから、二人にはギルバートとエリザを手助けしながら、演習に臨んでくれ」
最初、その話を聞いた時は何を考えているんだとサディアスを睨みつけた。
この三人の目的は確実にアメリアなのに彼女を外してどうすんねん!
「おいおい、ふざけんなよ! 俺たちはアメリアと組んだんだぜ?」
「演習は遠足じゃない。あくまで授業だ。アメリアには他の初級の多いチームに入ってもらう。その方が、お互いの勉強にもなるしな」
サディアスが普通に教官らしいことを言っている。
確かにいくらギルバートが最下位だからと言って、首席の三人でフォローするには贅沢すぎる。
そう考えると、首席の二人には最下位の二人を宛がった方がいいという判断だろう。
それには文句言うつもりはないが、ルークのこちらを見る目が怖いんだけど……。
「わかりました。よろしく、エリザ」
ウィリアムはあっさりと承諾する。
折角アメリアと仲直りするチャンスだっただろうに嫌な顔一つしない。
ギルバートも私の顔を見て、笑顔で言った。
「よろしくな! お互い頑張ろうぜ」
私は笑顔を浮かべながら、ほんとになと心で呟く。
納得していないのはやはりルークだけらしい。
「チームも組めたことだし、早速森林内に向かおう。目指すのは森の奥にある塔の手間だそうだ。僕が先頭を歩くから、その後ろにエリザ、ギルバート、最後にルークが付いてくれ。何かあれば、僕とルークがフォローする」
ウィリアムはそう言って笑った。
そう言えば、ゲーム内でもこんなイベントあったような気がする。
その時は最初のメンバーのままで、私の位置にアメリアがいたと思う。
アメリアは魔法の技術が一番なのになぜかウィリアムやルークに助けられているんだよね。
その辺がいかにもお姫様願望って感じなんだけど、そこに私が入るとどうなるんだろう。
ルークが私を助けるとは思えないし、ギルバートがまともな魔法を使えるとは思えない。
そもそもストーリー的にはこの展開はありなのだろうか?
シナリオ通り進めるなら私ではなく、アメリアの方が都合良かったはずだ。
「サディアスの奴、絶対アメリアを俺たちから遠ざけようとしてるんだぜ!」
ルークは私達の後ろにつきながら、未だに悪態をついていた。
この執念深さにほとほと嫌になる。
どうしてこの男はアメリア以外の人間に晒す姿が微妙なのかね。
「確かにアメリアがいないのは残念だけど、俺はエリザと一緒なのも楽しいと思うぜ!」
ギルバートはルークに反してそう答えた。
ルークは置いておいて、これはもしかして私の逆ハーレムターンでないのか?
ハーレムと言っても二人しかいないけど、悪役令嬢物にはよくあるとみーぽんから聞いた気がする。
ほんの少しそんな期待を膨らませながら、ギルバートを見るとなぜかギルバートはファイターポーズをとっていた。
「安心してよ、エリザ! 何かあったら、俺が得意の武術で敵をやっつけてやるからさ!!」
いやいや、これ魔法演習だから。
力づくではりぼてぶっ壊したらたぶん減点だから。
「ギルバート、魔法実習なんだから魔法使えよ。演習にならないだろう?」
思いのほか、まともな返答をするルーク。
ギルバートのおもりはルークに任せるようにしようと決めた。
しかし、魔法学校にあるあるなのだが、どうして演習なのに生徒たちは普段の制服で受けるんだろう。
こういう時はジャージが必須だろう?
特に女子はスカートで丈も割と長めだし、森の中はすごく歩きづらい。
しかし、だからと言ってジャージで魔法の授業を受けている生徒とか見たことないなぁ。
たまには採用してみてもいいと思う。
久々にスエット着たいし、楽だから。
そんなくだらないことを考えていると、予想通り、私は木の根に足を取られて転びそうになった。
「エリザ!!」
前にいたウィリアムが私に気が付いて、咄嗟に私の体を支える。
顔を上げてみるとそこにはウィリアムの顔が間近にあった。
目が合った瞬間、私の心臓が大きな音を立てて跳ね上がる。
ウィリアムも急いで目線を逸らし、私を安全な場所に立たせると何事もなかったように再び歩き出した。
もしかして、この展開はエリザのウィリアムルート?
ウィリアムとの恋愛シチュ到来か!?
私達の間に恋心はないと言ったが、こうなったら別だ。
相手はイケメンだし、文句はない!
そもそも婚約者だし、阻む者もいないだろう。
それでもどこか違和感がする私がいるのも確かだった。
今のウィリアムの考えていることは、私には理解出来ないのだ。




