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46話 ルークの憂慮

あまりに周りが静かになるので、やっぱりこの決め台詞は古かったかなと反省した。


というか、この世界では何のネタかということすらわからないか。


「お前、卑怯だぞ!」


ルークが慌てて私に近づいて来て、杖を奪おうとした。


するとそれをサディアスが止める。


「試合はこれまで! エリザの勝利」


その言葉を聞いて、ルークが慌ててサディアスの方へ振り向いた。


「ふざけんな! 勝負はまだついてねぇ!!」


ルークがそう言ってサディアスに歯向かうと、彼は冷淡な目線でルークを見つめた。


「お前は剣士が己の剣を奪われても負けていないと言うのだな?」


彼が言っていることはもっともで、ルークにも理屈は理解できたても納得はできないでいた。


「俺の杖を奪って反撃したって、こいつには俺に傷一つ与えられないんだぞ? なら、まだ負けてねぇだろう!?」


「しかし、今のお前の状態では魔法一つ使えない。なら、お前は力づくでエリザから杖を奪うか? 俺は魔法での戦いは認めたが、体術を使ってもいいとは一言も言っていないぞ?」


これにはさすがに言い返す言葉がなかったようだ。


ルークは諦めて、両手を上げて降参したようだ。


「わかった、俺の負けだ! これでいいんだろう?」


サディアスにそう宣言して、再び私の方へ向かって杖を返せと手を伸ばす。


私がそれを恐る恐る渡すと奪い取るように掴んだ。


「人の弱みに付け込んで勝つなんて、お前は本当に最低だな!」


ルークは私にしか聞こえないような小声で言った。


確かに私は少し卑怯な手を使ったかもしれない。


けど、明らかに力の差があると知りながら不利な対戦を申し込んだお前はどうなのだと言いたい。


去っていくルークを睨みつけていると、アメリアが慌てて駆け寄って来た。


「エリザ様大丈夫ですか?」


恐らくアメリアは私のこの擦り傷の事を心配しているのだろう。


私は何でもないと素早く立ち上がり、服についた砂埃を払い落とした。


そして、冷静な顔でアメリアを突き放す。


「アメリアさんには感謝してる。いずれは、この貸しもちゃんと返す。けど、これで私があなたを認める事はないし、仲良くする気もないから、勘違いだけはしないでほしい」


冷たい言い方をしているのはわかっている。


アメリアがいたから今回の勝負は勝てたのだし、もっと感謝を示すべきだったのかもしれないけど、一度だって私から彼女に助けを求めたことなどない。


彼女が私の補助を自らかって出て、彼女の納得する条件で戦っただけだ。


アメリアは相変わらず悲しそうな表情を見せていた。


そういう所がまたイライラする。


こんな風に思う私の心がきっと歪んでいるのだろうな。


「今日のルークは明らかにおかしい。私に突っかかってくるのはいつもの事だけど、それにしたってムキになりすぎだ。あんなあいつをどうにかしてやれるのは、アメリアさん、あなただけでしょ? それがわかっているなら、私に構ってなんていないで早くルークの側に行って、少しでも話を聞いてあげなよ」


私はそう言って、一人保健室に向かった。


かなり強がってどうしたことはないみたいな態度を皆には見せて来たが、本当は相当痛い。


地味に身体中が痛い。


物陰に隠れた瞬間、私はその場でしゃがみ込んだ。


ただでさえ、ルークとの戦いなんて生きた心地しないのに、あれに勝とうだなんて無理をし過ぎた。


私は力尽きてその場で座り込んでいると、あの時と同じように私の目の前には相変わらずにこにこした少年が立っていた。


「やぁ、エリザ。君、すごいことやっているねぇ」


嫌味かと思ってリオを睨みつけた。


「好きでやったんじゃないよ。ってか、なんで今日の私、ルークにこんなに絡まれるわけ?」


まぁそれはとリオは斜め上を見ながら答えた。


「ルークイベントに入ったからじゃない?」


「ルークイベント?」


この間、ギルバートイベントが終わったばかりなのに、次はルークかよと私は重いため息をついた。


休む暇ぐらい与えてほしい。


「そうは言ったって、ルークがエリザに試合を申し込むなんて展開なかったでしょう? これは一体何が起きてんだよぉ!!」


私は空に叫びあげたい気分だった。


「君の拙い頭で考えてみなよ。形は多少変わってはいるけど、筋書の基盤は基本変わっていないんだよ。例えば、君のサボりだって、物語の中でエリザがあまり出なかったシーンや風邪をひいていたなんてシーンがあったんじゃない?」


サボりだとかはっきり言っちゃってくれているけど、確かにゲームを進行する中でエリザがあまり出てこない展開も確かにあるし、思い出してみたら何かにしくじったエリザが風邪をひいて学園に来たシーンがあったような気がする。


そうすると私の意思で行動をとったと思ったものでも、シナリオには何の支障もないことになる。


「ギルバートの親父さんが来た展開も、本来はギルバートがアメリアと一緒に実家に帰る展開だったから来ることはなかったんだろうけど、今回は手紙で済ましたんでしょ? それにアメリアには交際を断られているわけだし。そうなったら、もう親父さんが学園に来てひと騒動起こすしかなくない?」


それもそうだなと納得してしまう自分がいる。


「そして、今回の決闘。何か似たシーンなかった?」


そう言われた瞬間、私はあっと声を上げて答えた。


「これ、ルークと私の試合じゃなくてルークとウィリアムの決闘だ。ウィリアムの魔法技術の高さはルークに劣らないから、私と違って普通に決闘していた。でも、今回は私……。なんで?」


「これがルークルートなら、ウィリアムに負けたルークの元にアメリアが駆け寄る予定になっていたんじゃない? けど、今の三人の関係性だとアメリアはまっすぐルークの元には向かえないのかもしれないね。そうなるとその後の展開に不具合が生じる。だから、ここをウィリアムではなく、君に仕立て上げたってことだよ」


それを聞いて、更に私は落ち込んだ。


「また私はこの世界のプログラムって奴に踊らされているのか。だからって私を使うの辞めてくれないかなぁ。今回、結構危なかったんだよ?」


「でもまぁ、君は所詮脇役で、多少の命の危機にあっても問題のない人物だから捨て駒のように使われたんじゃない? 仕方がないよね。君はしがない悪役なんだから」


「悪役に対して相変わらず容赦ないな、このゲーム……」


目の前に『ゲームプログラマー』って書いたTシャツのやつ出てきたら、ぶっ飛ばしていたところだったわ。


それにしたってどうしてルークはあそこまで私を目の敵にするのだろう。


正規のルートにだって、そこまでルークがエリザに絡んではいなかったと思う。


ただ、ルークの根底にある憂慮していることと言えば、やっぱり父親のことだろうか。


ギルバートの一件もあって、私の父がファルロイド公に目を付けているのも事実だし、現国王が私の父に頼る以上、彼にとって私の父はどこまでも邪魔な存在。


もし彼が屋敷で暴れ回っている原因があるのだとしたら、おそらく私の父の事だろうな。


それで私に八つ当たりして来るのは理解できなくもないが、それにしたって当たりがきついよ。


それに今回はギルバートの時と違って、私はルークに何もしてあげられない。


この問題を解決できるのはヒロインであるアメリアだけなのだ。


だから、ここからは私は直接ルークと関わることは避け、出来るだけアメリアに動いてもらうしかない。


どうにか問題が穏便に終わらせられないものか、私は思案した。

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