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45話 対戦

私が返事をする前に周りの生徒達が既に私たちが戦うものだと思って噂し始めていた。


奥の方で練習をしていた他属性の生徒達まで集まってくる。


それに気が付いたサディアスが、生徒達を押しのけて私たちの前に現れた。


「おい、何事だ!」


いくら実習中だと言っても、生徒同士で勝手に戦うことは出来ない。


試合ともなれば当然、担当教官の許可が必要だった。


「教官、俺は今からこいつと戦う」


ルークはそう言って再び杖の先で私を差した。


「お前がエリザと?」


さすがにこの組み合わせにはサディアスも驚いたのだろう。


私としては、サディアスが教官の権限でこの場を納めてくれることを願ったが、すぐには却下しなかった。


「お前とエリザの実力には差がありすぎる。もとより勝負にならないだろう?」


「なんだよ。 自分の姪だからって庇っているのか?」


「そうじゃない。ただ――」


「なら、承諾しろよ。俺は今すぐこいつを叩きのめさなきゃ、気が済まねぇんだよ!!」


ルークがあまりにも本気でサディアスに訴えるので、サディアスも適当にあしらうことも出来ずに、戸惑っていた。


そして、息をついて答えた。


「わかった。承認するが、実力に差がありすぎる。お前にハンデを付ける条件で許可しよう!」


「わかった。それで十分だ」


サディアスはあっさり承諾してしまった。


いくらハンデがあっても基礎魔法しか使えない私が勝てるわけがない。


しかし、それもわかった上で、サディアスはハンデを条件に承諾したのだ。


このままではルークの気がおさまらないのだろう。


私はそこまで彼を怒らした覚えはないが、ここまで敵意を丸出しにされたら、勝負を受けないわけにはいかない。


だからこそ、そのハンデが重要になって来る。


「ウォンバス教官」


その時誰かがサディアスに声をかけ、生徒達の傍観の輪から前に出て来た。


彼の名を呼んだのはアメリアだった。


「アメリア……」


このタイミングで彼女が出て来るとは思わず、ルークも驚いた表情で彼女を見つめている。


「そのハンデ、私がエリザ様の補助に回るという条件ではいかがですか?」


「はぁ!?」


私が驚く前に、ルークの方が大声を上げた。


私もアメリアが何を考えてそんな提案を出したのか、全くわからなかった。


「どういうことだ?」


サディアスがアメリアに意図を確認する。


「ルーク様とエリザ様ではいくらハンデを付けたところでは、エリザ様が明らかに不利です。ルーク様は既に中級魔法を取得し、上級魔法の特訓に取り掛かっています。その反面、エリザ様はまだ基礎魔法を取得したのみ。まだ、攻撃魔法も防御魔法も身に着けていない状況で戦うことは出来ません。ならば、私が防御魔法だけでも手助けできないかと。エリザ様を守るという目的以外には一切手助けは致しません。当然、エリザ様の体力が底につき、本人がリタイアを宣言した場合、ルーク様の勝利となります」


なるほどとサディアスも頷いた。


それでも私の勝利は見えてこないんだけれど、とりあえず速攻でやられるということはなさそうだ。


それにアメリアが防御をしてくれるなら、防御に限っては無敵と言っていい。


ルークはどこか納得いかない様子だったが、アメリアが条件を出てきた以上は拒否することも出来ないようだった。


「わかった。つまり俺は、アメリアの防御を掻い潜ってエリザに一撃を与えるか、エリザが音を上げさせて敗北宣言すれば俺の勝ちということだな」


ルークの中では私は一撃で倒されるか、一つも攻撃の出来ないまま体力が尽きて負けを認めるかのどちらかしかないらしい。


私も相当、なめられたものだな。


そもそも私を無視して、対戦の話を進めてほしくないのだが……。


「双方納得したのなら、それで行こう。これはあくまで演習だ。もし、相手に大怪我や命に関わる危険が生じた場合、その場で俺が止める。わかったな」


「ああ」


サディアスの言葉にルークは頷いた。


というか、双方って決めたのはルークとアメリアなんだけど。


元々は私とルークの試合じゃなかったのか?


「では、これにてルーク対エリザの試合を始める。アメリア以外の他の生徒は結界の外へ出るように」


サディアスはそう周りの生徒を遠のかせた後、試合用に結界を張った。


その中には私とルーク、そして私の後ろにはアメリアと監督者としてサディアスだけが残された。


この状態で一体どう戦えと言うのだろう?


このまま何もしないでアメリアの防御魔法に守ってもらって、ルークの魔力が尽きるのを待つのが良案なのではないかと思ったが、いつまでも攻撃してこない私を見たら、絶対ルークはぶちキレると思った。


ならば防御魔法の圏内で戦っているふりをする。


それもルークにばれそうな気がする。


だからと言って、ルークの風魔法に当たって痛い目に合うのも嫌だし、敗北宣言なんて死んでもお断りだ。


そんなことをしたら、今後もっとルークに偉そうな顔をされるだけだ。


それに私は案外負けず嫌いなんだ。


「では、開始する!」


サディアスの合図で試合が始まってしまった。


私が息をつく間もなく、ルークが攻撃を仕掛けてきた。


初端から中級クラスの攻撃魔法を仕掛けるなんて、殺しに来ているだろうと疑わしくなる行動だ。


しかも、私を見る目なんて完全にいっちゃっているぞ。


この攻撃に対してアメリアが瞬時に防御してくれたおかげで無傷で済んだ。


それからもルークは連続して次々に技を仕掛けてくる。


「エリザ、どうした! お前も反撃してこい、のろま!! 怖気づいて身体が固まっちまったか?」


ルークは完全にこちらを馬鹿にしてきている様子だ。


確かにアメリアに守られっぱなしは格好悪いですよ?


それでもさ、魔力が自分より何倍も下の相手に本気出すって、大人げないのにも程があるでしょ!


私も何とかしてルークに攻撃しようとしたが、全くあたる気配がしなかった。


そもそも、攻撃魔法なんて習っていないのだから、まともに攻撃があたるわけがないし、相手に参ったと言わせるほどの持続力もない。


この勝負、どちらかが音を上げるまで終わらないのではないか。


「ほらほら、攻撃してこいよ。そして、魔力を使い切って降参しろ!!」


すごく悔しいが、確かに今の私の魔力量だと攻撃の一つもあてられずに尽きてしまいそうだ。


なら、魔法を少しでも温存して戦うしかない。


私はそう思い、足元の小石に目を付け、風で小石を弾いてルークにあてようとした。


しかし、そんな微かな攻撃さえ簡単に防御された。


アメリアの完璧な防御がなければ、私は恐らく1秒ももたなかっただろう。


これがもう、魔法を使うことを考えず、頭を使うしかない。


そう思い、私はアメリアの防御魔法をあてにしてぐいぐいルークに接近していった。


魔法は中距離、もしくは長距離魔法が基本だが、私はあえて近づいて行く。


少しやりづらそうにしているルークを見ながら、手が伸びそうな距離まで近づいた。


そして、一瞬の隙をついてルークの視界から外れ、ルークの攻撃が私ではなくアメリアに向かうように仕掛けた。


これにはアメリアもルークも驚きを隠せなかった。


しかも、放った魔法を本人が止める手段はない。


「アメリアっ!!」


つい、ルークはアメリアを見て叫んだ。


アメリアも私への防御魔法を辞めて、寸前のところで自分の防御に切り替える。


ルークがアメリアに目を奪われている間、私は彼の杖目掛けて魔法を放った。


杖は手から弾かれ、宙を舞う。


それに気が付いたルークが慌てて杖を方に目を向けたが、少し遅かったようだ。


私は猛ダッシュして杖を掴み、そのまま地面に転がる。


身体中に擦り傷は出来たが、魔法に重要な敵の杖を奪ったのだ。


私はその杖を掲げて宣言した。


「取ったどぉーー!」


周りで見ていた生徒達も皆、呆然と眺めていた。

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