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10話 属性診断

「結局、今日は杖を振る練習しかさせてもらえませんでしたわね」


次の授業に向かう途中、ロゼは不満そうに口にしていた。


私ももう少し進んだことが出来ると思っていたが、サディアスが言うにはこの基礎が出来ないと、どんな簡単な魔法も使えないのだと言う。


そんな説明を受けている間にも、ギルバートだけずっと手を休めずに振る練習をひたすらさせられていた。


「ギルバート様、ほんと可哀そうでしたわぁ。あんなに厳しくしなされなくてもよろしいのに……」


今のセレナの頭の中はギルバートの事でいっぱいのようだ。


私は逆にアメリアの事でいっぱいだった。


練習中、サディアスはアメリアの杖の構え方を褒め、他の生徒の前でお手本として見せていた。


サディアスが人を褒めるなんてすごく珍しいことだ。


姪の私が言っているのだから、たまたまや勘違いじゃない。


確実にアメリアには魔法の素質がある。


それはあの誰よりも厳しいサディアスが判断したのだから明確だろう。


そんなことはゲームをしていたら知っていたことなのに、目の前でそれを見せつけられるのはいい気分がしなかった。


私だって、他の勉強はまだしも魔法だけはそれなりにマスターしておきたい。


あれだけ魔法に憧れていたのだ。


魔法のある異世界に来られたならそれを思う存分に使いたいと思うのは当たり前だろう。


やっぱりヒロインと悪役じゃ、その辺の待遇も違うよなぁと少しがっかりしていた。


「次の授業は魔法基礎学ですわ。初日ですから、確か水晶で属性診断があるとか」


『属性』という言葉を聞いて、思い出した。


このゲームの世界の魔法には属性というものが存在し、個人に合った適正が与えられる。


基本の考えた方は、四元素と同じで『火・風・水・土』の四属性だ。


しかし、特例として時に『光・闇』の属性を持って生れて来る者もいるらしく、その光属性にあたいするのがヒロインのアメリアということになる。


アメリアのような光属性の人物の半数は、闇属性以外の四元素の属性も扱うことが出来、能力も高いのだとか。


それに闇属性に対抗できるのもまた、光属性だけである。


だからアメリアは特例を認められ、平民でありながらオーディン魔法学園に通えることが出来たということだ。


私の記憶ではウィリアムは火属性、ルークは風属性、ギルバートは土属性、クラウスは水属性だった気がする。


当然、サディアスは四属性すべて使えるオールラウンダーだけれど、光と闇だけは扱えないはず。


確かもう一人、ラスボス以外に闇魔法が使える人物がいたような気がするけれど、忘れた。


このように攻略対象の属性に対しては記憶をしているのに、悪役のエリザの属性は全く覚えていなかった。


いつぞや、エリザが嫌がらせでアメリアに魔法をかけたことがあるような気がするけど、どんな魔法を使ったのかさらっと流されたので思い出せない。


まぁ、どの道授業が始まれば判明することだ。


講義が始めると最初にそれぞれの属性について説明を始め、一通り終わると名前を呼ばれた者から講師の前に置いてある水晶玉に触れ、属性と魔力の高さを見る。


属性とは違い、魔力は努力次第で上げられるが、最初から高い数値がある人間と低い数値しか持たされていない人間とでは成長のスピードも全く違った。


RPGなどではランクが低い時の方が成長も早く、ランクが高くなるにつれレベルアップが難しくなる。


しかし、この世界の魔法は逆で数値の大きい者は魔力の適正が高いのでどんどん強くなるが、弱い者は努力したところで底は見えているということになる。


出来れば前者でありたいと願いつつも、ヒロインとは違い中ボスクラスの悪役にはチート設定が付いていないことも多いからな。


期待せずに行こうと思いつつも、目の前で結果を知った生徒たちが右往左往しているのを見ているとさすがの私も緊張してきた。


私より先に診断を受けたロゼががっかりした顔で戻って来る。


属性も数値も彼女の期待を越えなかったらしい。


「土属性の84でしたわ。ああ、せめて、火属性や水属性でしたら良かったのに……。数値も二桁は低すぎますわ」


ロゼって意外と魔力が低かったのかと、この時初めて知った。


そして、その後から陽気な顔をしたセレナが戻ってくる。


「わたくし、水属性の350でしたわ! 水属性は土属性と相性がいいので、ギルバート様とわたくしの相性もバッチリですわぁ!」


ロゼの落ち込んだ姿をよそに、セレナは一人浮かれていた。


属性にはそれぞれ好みがあるけれど、魔法を殆ど使っていない状況で三桁はなかなかいい滑り出しだ。


高い人は何もしないうちから四桁はあるというし、サディアスも進学当初からオールラウンダーの四桁数字を叩き出していたと聞く。


親族なのになぜ私の父にはそこまでの実力がなかったのか。


「エリザ・A・ヴァロワ、こちらへ」


ついに私の名前が呼ばれた。


悪役だからってさすがに闇属性ではないだろうし、もしそんな特殊な属性なら私も覚えていたはずだ。


それにエリザはそれほど魔法が得意ではなかった記憶がある。


私はドキドキしながら階段を降り、水晶玉の前に立つ。


そして、その光る水晶玉にゆっくり手を翳した。


そこには『風』という文字と『18』という数字が浮かんだ。


私はそれを見て愕然とする。


「ミス・ヴァロワ、落ち込むことはないですよ。訓練をすれば魔力は上がります。それにあなたの叔父上があれだけ優秀な方なのですから、あなたもきっと素晴らしい素質を持っているはずですよ」


このタイミングでサディアスの名前は上げてもなんの慰めにもなっていなかった。


風属性が問題なのではない。


問題は魔力の数値だ。


ぎりぎり二桁はあったと雖も、『18』ってないにも等しいではないか。


これでも侯爵家の端くれ。


こんなに魔力が少なくてどうする。


両親にはどう伝えればいいのだと、真っ青な顔をして俯きながら席に戻った。


さすがに自分以上に数値の悪い私に同情したのか、ロゼが労って来た。


「気になさることはございませんわ。エリザ様ならきっと、訓練次第でお強くなれます」


自分が私よりマシだからって急に元気を出しやがってとロゼに糾弾したい気持ちだったが辞めた。


これではただの八つ当たりになってしまう。


そんな時、教卓の方からパリンとガラスが弾けるような音がした。


誰もがそれに注目するとそこにはアメリアが立っていた。


アメリアが水晶玉に手を翳すと、水晶玉はその能力の高さに耐え切れず割れてしまったらしい。


「まぁ、驚いた。あなたが特待生だと聞いていたのでもしやとは思っていましたが、まさか光属性を持っていたなんて。しかも、この数値、五桁は超えるなんて学園創立以来のことですよ。ああ、これこそ神の思し召しなのでしょう」


魔法基礎学の講師はアメリアの診断を見て、ひどく感動していた。


当然、周りの生徒たちもざわめき始める。


光属性というだけで珍しいことなのに、数値が五桁もあるなんて。


攻略対象に溺愛されるヒロインを羨ましく思うことはない。


けど、魔法だけはそう思えなかった。

このチート設定がヒロインの特権なのはわかっていたが、私にも多少なりとも対抗できる力ぐらいくれてもいいのに。


私はこの小悪党待遇を呪わずにはいられなかった。

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