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【9話】最高の逸材





 こちらの様子を見渡せる時計台の位置に、ロザリアはいた。

 ユラに視線を向けつつ、ロザリアがこちらを見下ろしているのを確認する。

 やっぱり楽しげな様子。

 ユラの殺気を一身に受けている俺の心配などしている感じもなく、ただ今から巻き起こる戦いの観戦に夢中となっている。



 ──いい気なもんだな。俺に戦わせて、自分は高みの見物かよ。


 でもそれはそれで彼女らしいし、俺は彼女の手駒らしい。

 これがロザリアの理想とするものなのだろう。

 自分は外野から手駒を動かして楽しむ。

 ユラの言う通り、ロザリアの気持ちは盤上遊戯を遊ぶ子供そのものなのだ。




 だからこそ、ユラは気に入らなかった。




『手駒になれ』という言葉が心に響かなかったのだ。

 本気だと思えなかった。

 俺も彼女と同じだったら、ロザリアの言葉を鼻で笑って差し出された手を振り払っていたことだろう。



 ──だか俺は知ってしまった。ロザリアの持つ圧倒的な強者の風格を。


 逆らえないと知ってしまった俺は、もう彼女の手駒になるしかなかった。

 そして今、その手駒としての初陣を飾っている。


「武器は使わないのか?」


「他人の心配をしている場合? 自分が死なないことを心配した方がいいわよ」


「準備が整ってんなら、別にいい。全力で行かせてもらう!」



 自分が逆立ちしても敵わない強者に認められるために、俺は剣を握っている。

 それが目の前にいる経歴エリートなユラを倒す理由だ。


 大太刀を構え、地面を強く蹴る。

 距離は一気に詰まる。

 振り抜けば、彼女の首を確実に落とせる範囲。

 しかし当の本人は迎撃の姿勢すら見せない。

 両手はぶらりと下げたまま。


 ──やっぱり武器すら持ってない。


 このまま俺の剣が首を刎ね落とせば、彼女は確実に死ぬ。

 だというのに、無抵抗だと?


「はぁぁぁぁぁぁっ……!」


 どうでもいいか。

 俺はロザリアに勝てと言われた。

 ならば遠慮はいらない。





「沈めよエリートさんよ……!」



「ふっ」



「────っ!」


 

 俺の振った大太刀が、彼女の首筋を撫でる直前。

 ユラは青い瞳を真っ直ぐこちらに向け、余裕の笑みを浮かべた。


 そして、俺の大太刀は──







 彼女の首に届くことはなかった。



「な……に……っ!?」



 大太刀は何かに弾かれ、俺は体勢を大きく崩す。


 ──何が起きた?


 何も見えなかった。

 ただユラが何かしたことは間違いない。

 そうだと分かっているのに、彼女はその場から一歩も動いていない。

 大太刀が弾かれた理由が分からない。



「大見得切ったくせに、その程度なの?」



「……くっ!」



 不可視の攻撃。

 彼女がどんな戦い方をするのか分からない以上、対策の立てようがない。

 一旦距離を取るしかない。


 ユラとの距離を十分取り、安全を確保した。 


「……これがロザリアの見つけた手駒候補か」


「私は手駒にならないわ。そして貴方は私に負ける」



 強い……!

 エリート校出身者である彼女の鼻っ柱をへし折ってやろうと思っていたが、そう簡単には倒せないらしい。

 剣を構え直し、深い呼吸を挟む。


 ──俺の攻撃が通用しないとなると、闇雲な突撃はリスクでしかない。

 だが、間合いを詰めれないんじゃ話にならない。

 考えを巡らせ、ユラに勝つ方法を模索する。


 そんな俺の様子を見て面倒そうな顔をするユラ。


「……で? もう、来ないの?」


「誘いには乗らないぞ」


「別に誘ってるとかじゃないけど……」


 ユラは一歩も動かない。

 動かずとも、俺に勝てる攻撃手段を有しているのだ。

 

「……来ないなら、こっちから仕掛けるけど」


 ユラは一歩こちらに踏み込んでくる。

 

 ──距離を詰められたらマズイ!


 咄嗟に俺は一歩下がる。

 しかし次の瞬間、俺の背には感じたことのないくらいの激痛が走った。



「────はがっ!」



「ああ。勘違いしているようだけど……距離を取っても安全とは限らないわよ」



 ──痛い。痛い。痛い!


 背中の感覚がなくなってゆく。

 そして耐え難い痛みと共に、足の力が抜けてゆく。

 蹲るのも辛い。

 

「が……っ!」



 大量の吐血。

 地面に手を付いたまま、立ち上がれない。

 視線の先には、俺から流れ出した大量の赤い液体。

 


 ──分からなかった。また見えない攻撃だ。



 とんでもない。

 ユラという女性は、見たこともない攻撃手段で俺を追い詰めてくる。


「もう諦めたら? 立てないでしょう?」



 明確な強者。

 でもだからこそ、死んでも倒したいと思ってしまう。






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