【8話】ユラとの対決
月夜の余韻に浸る某日。
街灯のない路地を歩く青髪の女性は、歩くスピードを少しだけ上げた。
振り向くことなく、されど目的地があるわけでもない。
夜風を堪能しながら、静かな街を行く。
「…………」
静かな空間に靴が地面を蹴る音だけが響く。
月光に照らされたユラは、誰から見てもクール系の美女だった。
こんな夜中に一人で出歩いているのは、不用心にも程があると言いたくなってしまうくらいだ。
「……はぁ」
「…………」
物憂げなため息を吐き、彼女は立ち止まる。
そして首を軽く鳴らしながら呟く。
「で? 私に何か用?」
──ああ。全然バレてんのか。
ひっそりと後方を歩いていたつもりでいたが、彼女には全てお見通しだったらしい。
足音も立てず、距離もかなり空けていた。
にも関わらずこちらの存在を察知するとは感服してしまう。
バレた以上、闇夜に潜み続ける必要もない。
俺はゆっくりと物陰から姿を現した。
「どうもこんばんは」
「ええ。こんばんは……それで、私に用事でも?」
どこまでも冷気を帯びた言葉に、思わず苦笑いが溢れる。
取りつく島がある気はしないが、一応確認しておこうと思い、本題を伝える。
「俺はロザリアの手駒だ」
「は? 誰よそれ」
「午前中に黒髪の女の子に会っただろ。アイツがロザリアだ」
「なるほど。あの道楽に興じてた子の……で? そんな人が私に何か?」
「単刀直入に言う。大人しくロザリアの仲間になってやってくれないか?」
全てを拒絶するような鋭い視線を前にして、俺はそう告げる。
夜風の涼しさが、一瞬で凍えるような寒さへと変わった気がした。
ユラは青い瞳を大きく見開き、険しい表情を浮かべる。
「──死んでもお断りよ」
──だと思った。
素直に頷くはずがない。
第一、そんな簡単に頷かれてはこちらも困る。
ロザリアの指示は──『俺がユラのプライドを粉々に砕くこと』
俺と彼女は分かり合わなくていい。
それこそが、全ての始まりとなるからだ。
「話はそれだけ? ならもう行くわ。これ以上付いてこないで」
「……待てよ。エリート女」
──さて。上部を着飾るのはお終いだ。
先程とは違い、俺は一際低い声でユラを呼び止める。
彼女は背を向けたままだったが、ちゃんと立ち止まりまたため息を吐く。
「…………何?」
「ロザリアの指示でどうしてもお前を連れて来いと言われてる。だから、俺もこのまま引き下がれねぇんだよ」
「へー、じゃあどうするの?」
ユラの纏う空気が周囲を凍り付かせる。
向こうもわかっているようだ。
俺が実力行使を行おうとしていることを。
だから臨戦態勢になっている。
──ふーん。いいじゃん。ロザリアの見立て通り、彼女は強い。
俺は帯刀していた大太刀を鞘から引き抜き、ユラへと向けた。
「分かり合えない者同士……解決方法がどうなるかくらい分かるだろ? エリートさんよ」
「その『エリートさん』という呼び方は気に入らないわね。私は肩書きなんか必要ないくらい強いわよ」
彼女は武器なんか構えない。
それでもとてつもない量の殺気を振り撒き、こちらに顔を向けてきた。
「いいわ。あんまりしつこいようなら、潰しておこうと私も思っていたところだから」
「そりゃ良かった。俺もお前の気取った態度が気に入らなかったんだよなぁ」
かくして俺はユラと向き合う。
己の存在価値を示すため、ロザリアの信頼を得るために……戦いの火蓋を切る。
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