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【10話】死ぬより辛いこと





 ──これはマッズイ!



 背中に走る激痛は消えない。

 息を吸い、吐く度に背中が痛む。

 だから呼吸することすら安易にできない。


「……っか、はぁ……!」


 ここから動けない。

 痛みで頭が回らない。

 視界が歪む。

 視野狭窄にも陥り、コンディションはこれ以上ないくらい最悪だ。

 

 歯を食いしばり、なんとか立ち上がるもユラの方に駆け出すだけの力は残っていない。


「貴方、早く傷の治療しないと死ぬわよ」


「……るせぇ…………黙って、ろよ……!」


「はぁ。忠告してあげてるのに……本当に面倒くさ」


 

 ユラは無傷。

 対して俺は立つのもやっとなくらいの状態。

 優勢なのがどちらかは一目瞭然。

 この圧倒的不利を背負っている中、俺は彼女に勝たなければならない。


 ──しかも、まずは相手の攻撃手段を特定するところからスタートって、流石に苦し過ぎるだろうが。


「……行くぞ」


「どうぞお好きに」


 

 距離を置いても向こうの攻撃は俺に届く。

 だから逃げ腰な防戦は逆に俺を追い詰める。

 ここは彼女との距離を詰め、俺の攻撃が届くレンジに持ち込む。

 そこから彼女の攻撃を回避しつつ、カウンターで一気に決める。


 頭の中で突破方法は思い浮かんだ。

 問題はその理想を実現することがとてつもなく難儀であるということ。


 指に無理やり力を込めて、大太刀を握り締める。



 ──ユラの視線が一瞬外れた今!



 隙は見逃さない。

 相手の反応が最も遅れやすいタイミングを見計らい、俺は急激にユラへと近付く。

 俺の攻撃射程内。

 ただ、単純な斬撃は弾かれる。


 ──攻略不可能な相手はいない。不可視の攻撃にも突破方法が必ずあるはず!


「はぁぁぁ……っ!」


 大きく振りかぶり、大太刀の脅威をユラに示す。

 重心がやや後方に動いたのを見て、俺は大太刀を彼女の首元目掛けて振りかざす。


「何度やっても結果は変わらないわ」


 彼女の言葉通り、同じことを繰り返したとて勝てるとは思わない。

 だから俺は──!


「──えっ?」


「見つけた……お前の攻略法」




 ──大太刀を振り抜かない!


 途中で大太刀の動きを止め、向こうの出方を窺う。

 さっきと同じであれば、ユラは必ず俺の振りかざした大太刀を弾くために何かを行う。

 それを予測して、弾かれる大太刀を彼女に当てようと思わなかった。


 その結果が、ユラの手札を看破するのに繋がった。



 ──暗闇に紛れているが、薄ら月光に反射する金属っぽいものが見える。






 これは……鎖か?



 細長い紐のようなものがユラの周囲に漂っているのが見えた。

 それは真っ黒で頑丈そうな鎖。

 ユラの扱う武器そのものだった。


 周囲に俺たちを照らす街灯はない。

 だから彼女の黒い鎖は視認が難しかった。


「ユラ。お前がしてきた不可視の攻撃。そのカラクリ……看破したぞ!」


「ふぅん……少しはやるよう、ね!」


 こちらを称賛しながらも、ユラは周囲に漂う鎖を操って、こちらへの攻撃を仕掛けてくる。


「──っ!」


「でも……今更遅いわ。私の優勢は覆らない」



 容赦ない彼女の鎖は、俺の腕や足に直撃する。

 彼女の言う通り俺が不利なのは変わりない。

 蓄積されたダメージが消えるわけもなく、彼女の攻撃手段を知り得たところで、鎖が周囲の暗さに同化して見にくいまま。

 彼女の持つアドバンテージは未だに大きい。


「はぁ……はぁ……!」



 ──くそ。背中がメッチャ痛ぇ……!


 無理やり距離を詰めたことによって、その反動が一気に押し寄せた。

 背中に走る痛みは、攻撃を受けた当初よりも酷い。

 呼吸のたびに、耐え難い痛みを感じながら、俺は必死に歯を食いしばる。


「もう立てないでしょう。諦めて降参しなさい」


「…………」


「貴方に勝ち目はないのよ?」


「俺が……負ける……?」



 このまま行けば、俺はユラに勝てない。

 ロザリアの命令を遂行できず、きっと失望させてしまうだろう。

 そうなった時、俺はどうなる?

 ロザリアに見捨てられる?



 ──必要とされず、捨てられるのか?








「嫌だ……」


「は?」


「俺は……負けない……負けたくない…………」



 全身を支配する痛み。

 しかし俺はその激痛を掻き消すくらいの恐怖を感じていた。



 そうそれは──ロザリアから必要とされなくなることだ。


 




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