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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

数値が高けりゃスペックも高い! ~高血圧戦士は今日も行く~

作者: 佐々荒洞

健康診断でよく目にする数値。それがもし異世界でのスキルに変換されるとしたら……?


診断結果を見て暗い気持ちになったので、せめてこれをネタにしようと書き上げた一本になります。


注:文中には医療用語っぽい単語が出てきますが、素人が思い付きで記述したものですのでフィクションとしてお考え下さい。

数値が思わしくない、体調がよくないといった場合には、適切に医療機関を使いましょう。


――ああ、死んだか、やっぱりな。


真っ暗闇の空間を漂いながら、俺はぼやく。

生活習慣病のデパート状態になっていたからなー。

高血圧、高脂血症、高尿酸値からの痛風および痛風腎エトセトラ、エトセトラ……。


なかったのはメタボリック症候群くらいだったな。食っても太らない体質だったから。でも逆にそれも寿命を縮める原因だったかもしれない。


年に一回の健康診断に行くと、必ず問診で各数値について説教を食らうことになる。

もしこれが太っていれば


「じゃあ、これを機会に減量してみましょうか。」


という、その場で簡単にできるアドバイスが可能なのだが、痩せている俺相手には使えないのだ。


各数値が高いのに痩せているということは、減量というカードが使えない、というデメリットしかないわけで、その分健康へ影響が出るのが早いとも言えるだろう。


BMIと死亡率のグラフを見てみるといい。BMIが低い方のグラフの角度はえげつないぞー。


まあ、そんな状態にもかかわらず激務に追われる日々を続けていたからな。クリスマス前に3徹した辺りで循環器系に重篤なダメージが発生したらしい。あっさりと俺の体は床にのび、意識はこうして闇を漂っているというわけだ。


まあ、唯一の救いは、泣いてくれる人など一人もいないということだな。誰も悲しませずに済むのはありがたいことだ……。


「しくしくしく……」


おや、誰かが泣いている。


闇の中に光る少女が見える。

うずくまっていて顔は見えないが、体全体から光輝を放っていて、まるで人ではないような神々しさだ。


「どうしたのです?何をそんなに泣いているのですか?」


「哀れな魂がいま、命を終えてしまいました。一生のうちにこれといって良いこともなく、ただただ仕事に追いまくられ、伴侶に巡り合うこともできず、生活習慣病にまみれて寂しく一生を終えた魂がいるのです……」


なんだかムカつく物言いだな。


「ひょっとして、俺のことですかね?」


「はい、只管(ひたすら)クロウさん。あなたの命は潰えました。主な死因は過労による循環器系疾患ですが、主でない原因としましては痛風、痛風腎、肝硬変、胆石、尿路結石……」


「もういい。十分だ。勘弁してくれ。だいたい尿路結石って死因になるのかよ。」


「そ・こ・で・慈愛に満ち溢れたわたくしこと女神さまがあなたに恩恵を授けましょう!」


変に言葉を区切りながら少女が立ち上がる。


透き通るような銀髪、炯炯(けいけい)とした光を放つ金色の瞳、凝脂の肌とはまさにこれかという白い肌、そこだけ血を吸ったように赤い唇……。


「女神さま、どこかお悪いんですか?」


「何でよ!女神なんだから至って健康よ!」


「白い肌と赤すぎる唇は昔のサナトリウム文学なんかでよく用いられた表現だし、散大した瞳孔に光をあてるとそんな風に金色に光るし、若いのに白髪というのは何かずいぶんとご苦労があったのでは、と。」


「神なんだからいろいろ神々しさの演出が必要なのよ!特にわたし新米だからそういったギミックに頼りたいのよ!わかって?」


「……失礼いたしました。ときに新米とのお話でしたが、女神さまとしてのご経験はいかほどでしょう?」


「これが初仕事です!」


満面の笑みで言い放った。

急患で運び込まれたら研修医しかいなかった、みたいな状況。


「ご安心ください。女神養成所を優秀な成績で卒業し、シミュレーターによる訓練時間も既定の倍はこなしているわたくしがあなたの来世をプロデュースするのです。どーんと期待しちゃってよいのですよ?」


自分で優秀な成績とか言いますか。あと、既定の倍のシミュレーションを行わないと課題がクリアできなかったのでは?


「クロウさん。あなたはこれから転生します。みんな大好き異世界転生です。そしてあなたが今生で持っていた高い能力を活かして、異世界で無双できるようにしてあげましょう。」


高い能力?理不尽な仕事に対する耐性くらいしか思い浮かばないが。それも耐性があったんじゃなく仕事を辞めるためのエネルギーすら奪われていただけだし。


「女神たるわたくしにはわかるのです、あなたがいかにハイスペックだったかということが。さあ、希望に満ちて転生の門をくぐるのです。そして幸せにおなりなさい。あなたの来世に対する満足度が、わたくしの採用を決定するのです。」


なんと、まだ新米ですらなかった!俺の人生を就職試験にするんじゃねーよ。


「あなたはこれから異世界で目覚めます。職業を決定する神事に向かう日の朝です。大丈夫、その世界での16年間の記憶もちゃんと持っていますので、言語・習慣その他に問題はありません。どうですかこの万全の気配り!家柄も容姿もまったく平均レベルですが、クロウさんには前世で得たハイスペックが与えられています。意気揚々と就職の儀に向かいなさい!さあ、とっとと行ってさっさと幸せになれ、そしてわたくしに感謝せよー!!」


ドーンと蹴飛ばされて転生の門とやらに叩きこまれた。

大丈夫かな、俺の来世。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


目が覚めると俺は異世界にいた。普通な寝心地のベッドの上で、とても普通な天井が目に入った。


クロー・クローニン

それがここでの俺の名だ。


あの女神なりかけが言った通り、普通の家庭に生まれ育った普通の男で、これまでに特に目立ったところはなかった。


「そろそろ時間よ。あんたならきっと手堅い普通の職に就くだろうから、安心して行っておいで。」


とは、母親の言葉である。


「そうだぞ。過度な期待もなければ失望することもない。普通、普通がいいんだ。仕事なんてそんなもんだぞ。」


役所に勤める父親の言であるが、俺の前世記憶からするとあなたは少々勝ち組クラスではあるまいか。


そんなわけで神殿に向かう。就職の儀とやらで勝手に職業が決められるわけだが、ここで示された職業には一定期間従事しなくてはならず、その期間をクリアすれば別の職業に就くことも可能らしい。


事前に配布された整理番号票にしたがって列に並び、順番が来たら布で仕切られたブースに入る。


「まずは能力値の測定を行います。はい、手を出してこの台の上に乗せてください。はい、動かないで息も止めてー。はい、出ました。」


なんだか健康診断を思い出して嫌な汗が出るが、結果はどうだろう。


「はい、すごいですねー。全数値が平均値です。ここまで見事な平均さんは珍しいですねー。」


おい、女神(自称)、ハイスペックどこ行った。


「続いて職業の神託が出ます。はい、どうぞ。」


汗ばんだ手で職業札を受け取る。ちらりと見て、さらに滝のような汗が吹き出した。


「冒険者」


と、そこには記されていたからだ。


『異世界転生って言ったら冒険者でしょー?さあ、冒険をして大活躍しなさい無双なさい!!』


あの女神(自らも就職活動中)のドヤ顔が脳裏をよぎった。


「はーい、職業札を持ったら健康診断を受けてくださーい。列はこちらにお並びくださーい。」


勝手に冒険者にさせられてショックを受けているところに苦手な健康診断か、ダブルパンチだな、これは。


異世界の健康診断は魔法と医学が融合したようなもので、やたらにハイテクだった。一滴血を採って魔法陣の描かれた紙に垂らせばたちどころに結果が出るという代物だ。


そして、苦り切った顔の医者が目の前にいる。


「うーん……。生活習慣病の兆候が出ていますねえ。血圧、尿酸値、血糖値、コレステロール値、γ-GTP、眼圧その他諸々とにかく数値が高いです。まだ若いので、これから生活習慣を改めていきましょう。ご職業は?……ああ、冒険者、それは良い。体を動かして正しい食生活をしてくださいね。」


高いのはこっちかよ!


あの女神もどき、血圧だのなんだのの数値の高さをスペックの高さだと思ってやがるのか!

この人生クリア後のアンケートでは絶対酷評してやろう。どうせ、この人生も長くはなさそうだしなあ……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そういうわけで、冒険の初日である。


神のお告げで決められた職業に就かないわけにはいかないため、母親は泣き、父親は震える手を隠しきれなかったが、まるで我が子を人身御供に出すような表情で見送ってくれたよ。

あの女神エセめ、おぼえてやがれ。


とりあえずの俺の役割は前衛、片手剣と盾を装備し、防御も攻撃も臨機応変に担うという位置づけだ。だから全数値アベレージのキャラは使いにくいんだって!


振り下ろされるゴブリンの剣を必死に盾で受け止めるが、衝撃を殺しきれず、自分の盾で額を打ってしまう。後衛のアーチャー先輩が援護の矢を放ち、ひるんだゴブリンに俺は切りかかるが、ふらついた状態での一撃では倒しきれず、先輩の次の矢でようやくとどめとなる。

隣ではフルアーマー装備のファイター先輩が別のゴブリンを一刀両断。後衛のクレリック同輩(俺と同じ初陣)は脳震盪中の俺にヒールをかけてくれ、そうこうしているうちに詠唱が完了したメイジ先輩の炎魔法(範囲攻撃)が放たれる……。


こうしてどうにか冒険者職初日を乗り越えた俺だが、正直不安しかない。俺、足手まといじゃないだろうか。この先、ちゃんとやっていけるのだろうか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


中途半端なスペックの俺に転機が訪れたのは、就職して一ヶ月後の冒険の最中だった。


「くっ、硬い!いったん下がって、態勢を立て直すんだ!」


リーダーのファイター先輩の指示がダンジョン内に響く。

敵は体長3メートルを超えるヨロイトカゲ、本日の冒険を終えて帰る途中で偶然遭遇してしまったのだ。


硬い鎧のようなウロコに阻まれ剣も矢も通らず、帰路ということでメイジ先輩のMPの残りも少ない。

ここは俺が時間を稼ぐところだろう。


「いったん俺が出ます!その間に態勢を!」


返事も聞かずに突進する。

前足の爪をかわし、ヨロイトカゲの鼻先まで距離を詰める。狙いは装甲のない口の中だ。


「えぇぃっ!」


がむしゃらに剣を突き出すと、狙い通りヨロイトカゲの口の中に剣が通り、

――そして、そのまま噛み砕かれた。


「ぐあぁっ!」


剣と一緒に俺の手の甲にも牙があたり、血が溢れ出す。さいわい嚙み切られはしなかったが、動脈が傷ついたらしく、血流が勢いよく噴き出していく。


……いや、いくらなんでも勢いが良すぎないか?


俺の血流はまっすぐヨロイトカゲの眉間に当たり、そのまま頭部を貫いていた。


≪「High Blood(高血圧) Pressureスプラッシュ」をおぼえた!!≫


はぁ?

高血圧奔流とな?

おい、女神(就職試験きっと落ちる)、お前本当に俺の健康診断の数値が能力だと思ってやがったんだな!


窮地を脱したことを喜ぶ前に、俺はツッコミを入れずにはいられなかった。


その後、ヨロイトカゲは速やかにとどめを刺され、俺はクレリックちゃんのヒールを受けるまで血を噴き出し続け、意識朦朧の状態で帰還することになったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「やったなクロー!今日もお前が立役者だ!」


「すごいよ、クロー君。あのミスリルタートルだって一撃で貫いちゃうんだから。私の矢の出番がないね。」


「まったくだな。お前が甲羅に穴を開けてくれなければ私の魔法も通らなかっただろう。」


「次の止血もわたしに任せてくださいね!」


その後の俺の快進撃はすさまじかった。

俺の血流を止められる敵はなく、パーティーのランクもぐんぐん上がり、

――そして俺は貧血に悩まされていた。


「さあ、どんどん食って、血を貯めてくれ!」


「レバーには造血作用があるんだよ。さあ、美味しく焼けてるよー!」


「あの、レバーにはプリン体が、俺は尿酸値が……!」


「はっはっは、心配するな。悪い血などじゃんじゃん出してしまえば良いのだ!いつものようにな!!」


このままでは、また痛風が俺を襲う。早くなんとかしなければ……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なんだっ!クローの血流で貫けないっ?!」


「みんな下がって!態勢を立て直すのよ!」


俺たちの目の前にいるのはジャイアントスティッキートード。粘液にまみれた巨大カエルだ。この粘液に阻まれて俺の血流は本体まで届かず、苦戦を強いられている。


「よし、ここは私の魔法の出番だな!くらえ必殺、ファイアランス……ぎゃああ!」


前に出たメイジ先輩が巨大カエルの舌に巻き取られた。


「いけないっ!ここは俺が防ぎます!」


とにかく前に出て、巨大カエルの舌に血流を叩きつける。舌が伸びた状態だったのがさいわいし、無事に切断に成功した。

だが、巨大カエルの反撃も素早く、前足の一撃で俺の盾が粉砕される。そしてそこへ切断された舌の残りが伸びてくる。


ガツンッ!


盾を失った俺の左腕に衝撃が伝わるが、思ったよりも小さい威力だった。


≪おめでとう!「尿酸シールド」をおぼえた!≫


見れば俺の左腕を半透明の結晶が覆っている。


普通、尿酸は防具にならねーよ!


心の中で毒づきながらも、動きの止まった舌の断面に右腕を突き入れる。まだ俺の右腕からは血が噴き出たままだ。

ある程度巨大カエルの体内に俺の血が注がれたタイミングで、俺は直感に従い新たなスキルを発動する。


「尿酸結晶化!!」


「ゲコォォォオオ!!」


悲鳴を上げて巨大カエルがのたうち回る。主に関節部で結晶化した尿酸に免疫系が反応し、炎症を起こしているのだ。いわゆる「痛風」である。


苦痛のせいか、その体を覆っていた粘液も流れ去ってしまったようだ。


「メイジ先輩、とどめをお願いします!……できれば、風魔法で。」


その直後、巨大カエルの断末魔がとどろいた。風が当たっても痛いとはまさにこのことだな。

敵とはいえ、同情を禁じ得ない末路だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「くそっ、クローの血流が鱗粉で弾かれちまう!」


「それに、昆虫系の魔物には痛風発作がおきないわ!」


「いったん下がって態勢を立て直すんだ!」


俺たちの目の前にいるのは、巨大蝶型モンスターであるビッグアゲハが一頭と、巨大蟻型モンスターのビッグアント五頭の混成パーティーだ。


「巨大アリだけなら範囲魔法でまとめて吹き飛ばせるんだが、あの巨大チョウチョが魔法を掻き消してしまうんだ。何とかならないかな。」


「よし、ここは俺が出ます!」


≪「高血糖粘着弾」を使え!!≫


なんでメッセージが命令してくるんだよ?


俺が放った「高血糖粘着弾」が巨大チョウチョにへばりつく。と、周囲にいた巨大アリたちがチョウチョに群がり始めた!


「……食ってやがる。アリどもめ、糖の匂いに我を忘れてるんだ。」


味方のはずの巨大アリに食いつくされて、巨大チョウチョは絶命、残った巨大アリたちはメイジ先輩の範囲魔法で消し炭と化した。


聞いた話だが、糖尿病になると糖の匂いに惹かれて尿にアリがたかるということもあるらしい。皆も体調管理には気を付けよう。あと、屋外での放尿は慎むべきだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「むむぅ、さすがはドラゴン。剣も魔法も、血流だって効きやしないぜ。」


「でもあのアイスドラゴンは腹部が弱点のはずよ!どうにかひっくり返せないかしら?」


「はーい。行ってきまーす。」


≪「高脂血焼夷弾」というのを考えてみたの。どう?≫


どう?じゃねーよ。メッセージがあからさまに意思を持ち始めていて怖いんですが。


俺の血にたっぷりと含まれている脂肪を砲弾としてアイスドラゴンにぶつける。

発火した脂肪はアイスドラゴンの背中全体に広がり、暴れようが壁にこすりつけられようがアイスブレスを食らおうが、消火される気配もない。


なんだかリン系統の焼夷弾みたいでそのうち条約で使用が禁止されそうな予感がする。


地面に背中をこすりつけようと仰向けになったアイスドラゴンの腹部に、ファイター先輩の剣が刺さる。


「ギャアァァァス!」


アイスドラゴンの断末魔。俺たちは今日も生き延びたようだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺だって、いつまでも不健康な血液系数値にのみあぐらをかいているつもりはない。

というか血ばかり使っていると本当に貧血がヤバい。何か他のスキルはないだろうか。

というわけで考えたのが、


「高眼圧房水奔流」


である。

眼圧が高いことを利用して、目から房水(眼球内の液体)を噴射して敵を倒そう、という考えだ。URRRRYの人(吸血鬼)も使っていた技だし、いけるのではないか。早速実験してみよう。


だが、スゲー痛いはずなので、すぐ治癒できるようにポーションの瓶を口にくわえた状態でスキルを発動してみる。


……うん、失敗でした。房水が眼の前方向じゃなくて、まさか裏側に向かって噴射されるとは思わなかったわー。脳を貫通していたので、ポーション瓶をくわえていなったら即死だったね。

というわけで、「高眼圧房水奔流」は封印とする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


各種数値が異常なほど悪いので、割と頻繁に病院で検査を受けている。腎臓機能に異常はないか、血管の詰まり具合はどうか、石はたまっていないか、などなど。前世でひどい目にあったので、兆候があったら早めに対処しておきたいのだ。


検査を受けていたある日、病院が多数の魔物の襲撃を受けた。


屋上に上って状況を確認すると、病院が数百という数の魔物に包囲されている。病院の守衛の働きで、侵入は許していないようだ。


「クローさん!Aランク冒険者のあなたなら、この状況をなんとかできるじゃろう?」


振り返れば病院の院長が蒼白な面持ちで立っている。


「わかりました!では、弾薬の提供をお願いします!」


「弾薬?」


「俺に適合する血液をありったけ用意してください。」


こうして俺は輸血を受けながら戦うことになった。健康な輸血用血液であっても、一度俺の体内に入ればあら不思議、兵器レベルの数値の悪さに早変わりだ。俺は屋上から惜しげもなく血流を振り撒き、魔物を切り裂き、燃やし、共食いさせ、病院を守り切った。


この戦いを機に俺はパーティーを抜け、病院の守衛として働くことになった。何故ならここには大量に「弾薬」があるからだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


それから何年か経過した。今も俺は病院の守衛を務めているが、最近は病院事務の勉強も始めている。実はこの病院に勤める女医と結婚したのだ。彼女の親身で厳格な生活管理によって、俺の各種数値は大幅な改善傾向にある。この調子ではスキルが使えなくなる日も遠くはないだろう。


というわけで、いま俺は幸せだ。もしこのまま天寿をまっとうできたら、あの女神さまの評価に星5つ付けてあげても良いと思うくらいには。

これが初投稿となります。少しでもお楽しみくだされば幸いです。

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