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異世界転移って災害だろ  作者: 近衛いさみ
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〜メラトニ編〜 1話(はじまり)

「また転移者か? 騎士団の転移者監視隊にとりつげ!!」


 城内に大声が響き渡った。大臣が伝令兵に指示を飛ばしているのだ。転移者が起こす問題はタチが悪い。このメラトニの世界の常識や法が全く通用しないからだ。


 城の門を出た先、外壁沿いに達建物の中に伝令兵が走っていく。


「ガ、ガード様!!」


 伝令兵はドアを勢いよく開け、叫んだ。その声を聞いた一人の男が顔を顰めた。


「ま、またか……」


 彼の名前はガード・リ・アルフォンシスタ。由緒あるガード家の出だが、今は王国騎士団の転移者監視隊の隊長を勤めていた。


「す、すいません。その……」


 アルの態度に伝令兵は言葉に詰まる。


「いい。君のせいではないからな。で?」


 アルは伝令兵に話を続けるよう促した。


「はい。城下町の商店街で転移者が暴れています」


 アルは白銀の兜を外し、黄金色の美しい短髪をかき上げた。


「やはり、またか……。行こう」


 そう言うとアルは机に立てかけてある剣を手にすると部屋を後にした。



「う、うるせー。俺は転移者だぞ? 金なんか払うかー!!」


 転移者の男がナイフを手に叫んでいた。商店街の中心の広場。既に多くの人だかりができていた。


 そんな人だかりをかき分け、アルは転移者の前に歩み出た。


「王国騎士団の者だ。何事か!!」


 アルはぶっきらぼうに叫んだ。こんな事件日常茶飯事だ。転移者は何故か自分の都合でしか物事を考えられない者が多いのだ。


「お、俺は異世界転移してきた。なのにこの仕打ちはなんだ? ゆ、勇者になる男だぞ? それなのに金を払えだ? お前らどうかしてるぞ?」


 どう考えても勇者には見えない、腹の出た中年の男が騒いでいる。物を買うのにお金を払う。子どもでも理解できる。異世界には通貨という概念は存在しないのか?


「王国法だい64条に基づき、お前を処罰する」


 そう言うとアルは剣を抜いた。見事に研ぎ澄まされた美しい刀剣だ。


「ち、ちょ、ま」


 男は剣を見て慌てふためいている。自分もナイフをかざしているくせに。勇者ならそのナイフで対峙して欲しいものだ。アルは呆れた視線を向けた。足を踏み出し、一瞬で転移者の間合いに入る。転移者の目はアルを動きを追えていなかった。

 殺す価値もないと判断したアルは男の右肩を斬りつける。その痛みに男はナイフを放り出した。うずくまる男。もう立ち上がる気力もないようだ。


 アルはその場を一般兵に任せ、城へと歩き出した。


 なんで俺がこんなことを。アルは心の中でため息を漏らす。王国騎士団に入り、魔物や盗賊から国民を救う、国を救うために剣を振るうはずだった。これも全て転移者のせいだ。


 転移者が初めて現れたのは100年ほど前だろうか? そのあまりの強さに転移者は魔王軍を撃退させた。転移者は勇者と讃えられた。実際に今の平和があるのはその転移者のおかげだろう。しかし、その後も転移者は現れ、増え続けた。中にはいい人間もいたが、転移者の多くは問題を起こした。転移者は何故かこのメラトニの世界に過度な期待を持ってやってくる。その期待や独自の概念で問題を起こすのだ。それを仕方なく、アルたち王国騎士団転移者監視隊が問題解決に当たっている。


 城門の前にきたアルを伝令兵が呼び止める。アルはうんざりして振り返った。


「ガード様。転移ゲートが確認されました。もう時期この街に新たな転移者が出現します。至急現場に向かってください」


 転移者が現れる時、空間にゲートが開く。魔法の一種なのだろう。しかし、王国魔法研究所が研究を続けているが、解明はできていない。

 アルは急ぎ、ゲート場所へと向かった。


 ちょうどアルが到着した時、人が転移する瞬間だった。青年だ。若い。黒い短髪の青年だ。背格好はアルと同じくらいだろうか。その筋肉質の体付きにアルは少し好印象を抱いていた。


「お、え、え、え?」


 青年は状況が飲み込めていない。


「え? え? か、監督は?」


「ここはメラトニの世界だ。異世界転移者よ。名前はなんともうす?」


 混乱する転移者の青年にアルは声をかける。


「お、俺は新城直澄あらきなおすみ


「直澄か。俺はガード・リ・アルフォンシスタ。こんなところで立ち話もあれだ。ついてこい」


 戸惑う直澄を引き連れ、アルは城へと向かった。

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