朝食を取りました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
「リィフ様、朝食の支度ができました」
テントの外から、ハウザーの声がそう告げた。
ルルスファルドとアルシード、バッカニアと一緒にテントを出ると、コボルトたちが大きな鍋で粥を作っていた。
ここしばらくの間、子犬のようにじゃれついてきていたセルトの姿は見当たらない。
「……セルトは?」
「夜に少し粗相をしまして、朝餉抜きの罰を与えております」
強張った口調でそう答えたハウザーは、リィフに粥の入った椀を出した。
僧院育ちのリィフに気を遣ったのだろうか、肉類が入っていない簡素な粥だ。
気にしないでワイバーンの肉でも骨でも使ってもらって構わないのだが、この場で言うのはやめておくことにした。
「ありがとうございます」
受け取った粥を口に運ぶ。
口の中に、かすかな痛みが走った。
舌を出し、違和感の正体を確かめる。
「……なにか?」
ハウザーの問いに、リィフは草の棘のようなものをつまんで見せた。
「サボテンの棘みたいです……毒が入っていなかったので、油断をしていました」
ルルスファルドが<大丈夫じゃ>と言ったので安心して口に運んだのだが、変な伏兵が潜んでいた。
リィフが口に出した『毒』という単語に、ハウザーたちは表情を引きつらせた。
その表情を確認し、リィフは言った。
「セルトの縄をほどいてあげてください。大体の事情は見当がついていますし、皆さんを恨むつもりもありません。むしろ、私を狙った策謀に、皆さんを巻き込んでしまったのだと思います。申し訳ありません」
粥の入った椀をアルシードに預け、リィフは両手を合わせた。
「……やはり、お見通しでいらしたのですね」
ハウザーは観念したように言った。
「セルトは声が大きいですからね」
と、いうことにしたが、実際はルルスファルドがハウザーの記憶を読むことで、もっと前から把握していた。
リィフに懐いてくれているセルトをハウザーが縛り上げたことで、仕掛けてくるだろうと思ったのだが、結局、粥に変なものは入っていなかった。
本当に毒を盛られてしまったらそれなりに強硬な態度を取らざるを得ないところだったが、セルトの説得が功を奏してくれたのだろう。
「やらなかったのか? ハウザー」
コボルトの一人がそう問いかけた。
「見通されている気がしてな」
ハウザーの独断で中止をしたようだが、他のコボルトたちも似たような印象を持っていたのだろう。特に苦情を申し立てるような気配はなかった。
「事情を聞かせていただけますか?」
だいたいのところは、ハウザーの記憶を読んだルルスファルド経由で把握していたが、本人達の口からきちんと聞かせてもらうべきだろう。
「はい」
ハウザーは居住まいを正す。
「……そのまえに、セルトをほどいてあげてください」
このままだと忘れられてしまうことになりそうだった。
「はい、少々失礼を」
一度中座したハウザーが、セルトを連れて戻って来る。
「うわぁ、リィフ様リィフ様リィフ様っ! 良かった! 良かった……うわあぁぁん!」
「ありがとう。大丈夫?」
リィフに飛びついて尻尾を振ってギャン泣きするという器用な挙動をしたセルトをあやして座らせる。
<この犬ころ、距離感がおかしくないかや?>
何故かルルスファルドが不穏な目をしていた。
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次回更新は明日朝7時を予定しております。
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