魔法陣を描きました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
テケテケテケテケ。
テケテーケー。
テケテケ、テケテケ。
テケテーケー。
テケ!(ポンポン)
テケ!(ポンポン)
テケテーケー。
領都カマルを離れたリィフたちは、夜道にそんな声を響かせつつ進んで行った。
最初の難所であるゴブリン峠に入ったあたりで、ゴブリン峠の名の由来であるゴブリンたちが現れた。
ゴブリンはスライムを喰う。
夜歩きの道連れとして紋章から出したテケテケやグールスライムたちの声を聞きつけやってきたようだが、そのへんのゴブリンが『剣客紋』を持つテケテケの相手になるはずもない。
テケ!
偽一文字を構えて切り込んだテケテケに散々に打ちのめされ、ギィギィ言って逃げていった。
その気になれば斬り殺すのも容易だが、主人であるリィフが殺生を好まぬことから、峰打ちにとどめていた。
それ以前にテケテケと歌い跳ねるに任せていたリィフの側にもそれなりの落ち度があると言わざるを得ないが。
そうしてゴブリン峠を抜けたところで、ルルスファルドが<叔父御殿>と言った。
――なに?
<一度休むとしよう。『神槍紋』があるとはいえ長旅じゃ、あまり無理はいかん>
――できるだけ、カマルを離れておきたいんだけれど。
僧院の追っ手がかからないとも限らない。
<この速さならそうそう追いつかれはせぬ。せいぜい騎兵が追いつけるかどうかじゃ。やり過ごす手はいくらでもある>
――わかった。でも、どうしよう。
一応の旅支度はしてあるが、テントのようなものまでは用意していない。
<試して欲しいことがある。儂の言うとおり、地面に魔法陣を描くのじゃ>
――わかった。
ルルスファルドの指示に従い、草原に木の枝で魔法陣を描く。
夜の草原なので、木の枝でなにか書いてもよくわからない。
テケー。
インク代わりにグールスライム達に、線に合わせて身体を伸ばして貰う。
グールスライム魔法陣。
テケテケ言っている。
<こんなところじゃな。下書きのスライムどもを目安に、その上に魔力を通すのじゃ。スライムどもに直接魔力を流すでないぞ>
――こう?
『神槍紋』ではなく、『転生賢者紋』のほうから魔力を糸のように伸ばし、地上五センチほどの高さに魔法陣を描く。
<上々じゃ、スライムどもは一度散るがよい>
テケテケー。
インク代わりになっていたスライム達がもとの半球状の姿に戻って散らばった。
<【召喚・白虎門】じゃ>
「しょうかん・びゃっこもん」
魔法陣が淡い光を放ち、魔法陣の上の空間が揺らいだ。
木でできた屋敷の門のようなものが現れる。
テケテケ!
スライム達がびっくりしたような声をあげてポンポン跳ねる。
――これは?
<この向こうに、生まれ変わる前からの儂の住まいがある。開けてみるが良い>
見たところ門しかないのが気になるが、ともかく指示通りに門を開けてみる。
門の向こうには、白い玉砂利が敷かれた広い庭園が広がっていた。
奥の方には瓦葺きの大きな建物があり、その前には白い金属でできた獅子の像が二つ、守護神のように鎮座していた。
空は明るく、青かった。
<カマルから数千キロ西方の洋上に浮く島に続いておる。ついて参れ>
門をくぐったルルスファルドは飛び石の上を浮遊して、建物の前に出る。
<はよう>
――うん。
テケテケー。
リィフとテケテケたちもルルスファルドのあとを追う。
建物の前まで来たところで、ルルスファルドは<しばし待つが良い>と告げ、ふっと姿を消した。
それからしばらくすると、建物の中から人の気配と足音が近づいてきた。
「今開ける」
耳慣れた響き、だが、初めて聞く声がした。
――?
ルルスファルドの声に似ているが、違う。
ちゃんと音として聞こえる声だ。
目を瞬かせたリィフの前で、建物の戸が開かれる。
顔を出したのは初めて見る、だがルルスファルドとよく似た雰囲気をした、一五、六くらいの少女だった。
「ルルス……?」
年齢も違うが、髪色も肌の色も違う。
黒に近い茶色の髪に、日に焼けた肌、緑色の瞳、南国にいそうな雰囲気の快活そうな少女だった。
一〇歳前後でピンク色の髪、すとんとした体型のルルスファルドとは対照的に、かなり『出るところが出た』体型である。
東方の民族衣装を思わせる、身体にぴったりした衣装を身につけていた。
背丈はリィフと同じくらい。
悪戯っぽい表情でリィフの目を見た少女は「うむ」と応じた。
「儂じゃ」
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回は明日昼更新の予定です。
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