真相を知りました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
<して、これからどうする?>
――まずは、旅の支度かな。
領主リィフの任地となるリトルバード地方への距離はざっと五〇〇キロ。
街道などが整備されているわけではないので、徒歩なら一ヶ月、乗り合い馬車などを使っても二十日はかかる距離である。
旅装や食料などの用意が必要だ。
<素直にリトルバードに行く理由もないと思うのじゃが>
――そうかも知れない。
リィフはうなずいた。
――でも、とりあえず、行ってみようと思う。テケテケやグールスライムが住める場所を探さないといけないし。
テケテケやグールスライムを放してやることを考えると、荒野の領地というのは悪くない条件に思えた。
放してやっても人間とのトラブルにはなりにくいはずだ。
安全を確保するとか、暮らしやすい環境を作るとなると、別の苦労はありそうだが。
<まぁ、それもよかろう>
ルルスファルドはのんびりと言ったあと、少し真面目な顔をした。
<叔父御殿に話さねばならぬことがある>
――なに?
<昨日の夜、親父殿に会うてきた>
――仕返しに?
<うむ、親父殿の『恩寵紋』を引っぺがしてやった>
――生きてるの?
<命に別状はない。死ぬほど痛かったはずじゃが。腕の皮ごと引き剥がしてやったのでな>
ルルスファルドは物騒な目をしてくふふと嗤った。
ルルスファルドはジュノーに殺されている。
やり過ぎとはいえないはずだが、想像すると色々なところがヒュンとなった。
<まぁそのあたりはよいのじゃが。話したいのは、叔父御殿の『神槍紋』の封印についてじゃ、記憶を読んでみたが、やっぱり親父殿の指図じゃった。『神槍紋』の力を逆流させる仕掛けじゃった。こういうてはなんじゃが、叔父御殿は、以前はどんくさかったのではないか?>
――うん、ちょっと。
あまり認めたくないが、認めざるを得ないところだ。
<『神槍紋』の力が逆流し、重石のようになっておったのじゃ。いつ死んでもおかしゅうない状態じゃった>
――そんなに?
重石というか、重荷を乗せられていたというのは、感覚的にわかる部分もあるが、いつ死んでもおかしくない、というところまで行くと実感が薄かった。
<親父殿の記憶によると、エルフが噛んでおるようじゃ>
エルフ。
森に住んでいるという戦闘種族だ。
美しい姿と、強大な魔力と身体能力を持ち、敵対したオークの村を焼いたり人間の村を滅ぼしたりする恐ろしい種族と言われている。
リィフとジュノーの母であるルーナに、少し血が混じっていると聞いたことがある。
<叔父御殿の身体がおかしいと気付いたエルフが、叔父御殿にエルフの秘薬を与えた。叔父殿が普通に生きられたのは、そのおかげのようじゃ。『神槍紋』を封印しても魔力と体力がおかしいのもそのせいじゃ。体内のエルフの因子が励起しておる>
――たいないのえるふのいんしがれいき。
いまひとつわからない。
<体質が人よりエルフに近いということじゃ、その顔もエルフの因子の影響が大きいはずじゃ。人の血のみではそんな綺麗な顔にはならん>
――元々、ひとより魔力と体力があったのに、封印のせいで抑えられてたってこと?
顔の話はあえて無視する。
<順序としては、
1、人並みの体力と魔力で生まれる(人並みの体力と魔力)
2、『神槍紋』の封印の影響で虚弱体質に(貧弱な体力と魔力)
3、エルフの秘薬で死なない程度に引き上げ(いまひとつの体力と魔力)
4、『転生賢者紋』を継承。『神槍紋』の封印が外れ、引き上げられた体力と魔力、『神槍紋』の力が表に出る(チート生物)←イマココ
備考:『神槍紋』を再封印してもエルフの秘薬で引き上げられた体力と魔力はそのまま(化物並の体力と魔力)
と言ったところじゃろう>
ルルスファルドはわざわざ虚空に文字を書いて説明した。
――チート生物って何? 化物って書いてエルフと読んでいいの?
色々ツッコみどころが多い。
<チート生物はチート生物じゃ。エルフはまぁ、実際化物じゃ。叔父御殿も会えばわかる。いや、そもそも会うたことはないのかや? 叔父御殿に薬を与えたエルフがおるはずじゃが>
――ないと思う、たぶん。
エルフの血が混じっていると聞いたことはあるが、実際にエルフに会った記憶は無い。
薬だけをもらったのか、あるいは物心つく前の話だったのかも知れない。
<然様か。少々話をそらしてしまったが、問題は『神槍紋』を封印したのは親父殿だという点じゃ。エルフの秘薬がなければ、叔父御殿が衰弱死するような細工をしてな。叔父御殿を殺してでも『神槍紋』を封じ込めたかったということになる>
――だとすると、やっぱり、バレたらまずいよね。『神槍紋』のこと。
昨日から疑ってはいたが、確定してしまったことになる。
ルルスファルドの言葉に嘘がなければの話ではあるが、実際ジュノーはリィフの目の前でルルスファルドを投げ殺している。
ルルスファルドよりジュノーを信用する理由もない。
<そうじゃな。親父殿ごときに今の叔父御殿と儂をどうこうできるとは思わぬが、当面は隠しておいたほうが良かろう。こちらから親父殿の首を取りに行くのであればまた別じゃが。叔父御殿の場合、そういう気性でもあるまい>
――うん。
殺されるところだったと思うとさすがにぞっとしたが、元々リィフは攻撃性が低い。
報復を考えるほど強い感情は湧いてこなかった。
ルルスファルドが腕の皮ごと『恩寵紋』を引っぺがしたばかりでもある。
昨日の今日で追い打ちをかけに行く必要は無いように思えた。
<では、まずはリトルバードとやらに出向いてみるとしよう。どのような土地であれ、叔父御殿と儂とスライムどもがおれば、暮らしてゆくのに苦労はあるまい>
――うん。
人外魔境と言われるリトルバードの領主。
ひとりなら絶望するしかない状況だろうが、ルルスファルドという道連れと協力者がいて、守らなければいけないスライム達がいる。
不安も大きいが、少し、わくわくするような気分もあった。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
売僧僧院編、もとい『神槍』と『天槍』はここまで、次回からは旅支度編をお送りいたします。
次回は夜更新の予定です。
「面白かった」「もう少し読んでもいい」と感じて頂けましたら
『ブックマーク』のところや、その下の☆☆☆☆☆の評価部分をテケテケと叩いて頂けると執筆者の情熱の焔がより高く燃え上がるかと存じます。
【お昼の宣伝でございます】
今月15日に同作者の『魔物の国と裁縫使い』第2巻が発売となりました。
下のバロメッツ「Ꮚ・ω・Ꮚヌエー」より『小説家になろう』内の書報ページがご覧いただけますので、よろしければお立ち寄りください。




