決着がつきました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
――バレてる?
<そのようじゃな。ここまでの使い手となるとごまかしきれぬか>
――封印、外せる?
<使うか>
――うん。
紋章なしでベリスと渡り合えるのはここまでだろう。
リィフは一四歳、ベリスは二八歳。
リィフの倍の時間を生きて修行をしてきた天才だ。
同じ条件で戦えば、絶対に勝てない。
ならば、ここは紋章の力を使うべきだ。
ベリスが全力で来るというなら、こちらも持てる力をすべて使うのが誠意というものだろう。
『神槍紋』のことがマールゥト家に伝わってしまうかもしれないが、そのときのことは、そのとき考えればいい。
今は、この立ち会いの方が大切だと思えた。
<良かろう、励起する>
封印が解かれる。
偽装についてはそのままだ。
『神槍紋』が発光するようなことはなかったが、不可視の魔力がリィフの身体の内外を駆け回り、渦を巻く。
目に見える変化はなかったが、強烈な圧が生じて、僧院の空気を凍り付かせる。
直接それを見ていたわけではないが、マイス僧院の僧侶達、僧院の内外に住まう鳥や小動物たちが息を呑み、その身をすくませる。
暴風のような圧の中、『天槍』ベリスだけが微笑んでいた。
「いいわ。いきり勃っちゃいそう」
そんな言葉を吐きつつ、ベリスもまた導引法のレベルを上げていく。
暴風めいたリィフの魔力とは真逆の、端正に研ぎ澄まされた魔力がベリスの身体と木槍を覆う。
『神槍紋』を持つ少年僧、『天槍』の異名を持つ青年僧は、同時に地面を蹴った。
繰り出された二本の木槍が正面からぶつかり合い、衝撃波を放つ。
足を止めたまま、双方木槍を切り返し、打ち合う。
『突けば槍、払えば薙刀、引かば鎌、とにもかくにも、外れあらまし』
変幻自在にして縦横無尽、マイス僧院で実戦に使われる十字槍のうたい文句そのままの勢いで二本の槍がぶつかりあう。
そして再び距離を取り、双方同時に中段の構えを取った。
基本の構えだが、何が来るかは予想がついた。
――雷霆。
ベリスの必殺の槍。
構えは最初の雷霆と同じだが、その身に練り上げ、両腕と木槍に込められた魔力の量と質は、比較にならない。
魔力の総量としては『神槍紋』を持つリィフのほうが圧倒的に上だが、魔力の滑らかさ、密度などはベリスのほうが格段に上だった。
――凄い。
紋章がなくても、人はここまで強くなれる。
畏敬と憧憬を抱きつつ、リィフもまた呼吸を整える。
ベリスと同じ雷霆の構え。
リィフが知る限りにおいて、最強の槍技が雷霆であり、最強の使い手がベリスである。
ベリスの雷霆に対抗するには、ベリスの雷霆を模倣するしかない。
『神槍紋』から引き出した魔力を全身に通し、そして木槍へと収束させる。
膨大な魔力が電光のような光を放ち、円錐状の穂を形作る。
目には見えないが、ベリスの槍もまた、同様の穂を形成していた。
『神槍紋』にもたらされた膨大極まる魔力が光の巨槍となり、才覚と修練に研ぎ上げられた魔力が、不可視の鋭槍となった。
――あっちの方が、鋭い。
――あっちの方が、強い。
一長一短。
時を同じくして、似た思いを抱いた両者は、同時に最後の一槍を放つ。
小細工もなく、外連味もなく。
ただまっすぐに、最短軌道で繰り出されたリィフの槍を、ベリスは不可視の鋭槍で迎え撃つ
剛槍と鋭槍、神槍と天槍が正面からぶつかりあい、閃光を放った。
ベリスの木槍が、粉みじんに砕け散る。
そのままベリスの胸元に突き刺さろうとした光の巨槍を、リィフは紙一重で消した。
とん。
木槍のタンポの部分がベリスの胸を軽く打ち、静止する。
大山鳴動して鼠一匹、ではないが、ここまでの激烈極まる攻防から考えると、滑稽なほど軽い一槍。
それが、決着の一撃だった。
止めずに振り抜いてしまえば、ベリスは死んでいた。
止めずに振り抜いたほうが、よほど簡単だった。
それを理解できない『天槍』のベリスではない。
ベリスはふぅ、と息をつき、導引法で巡らせていた魔力を散らした。
「私の負けね。ごちそうさま。楽しかったわ」
朗らかな表情で言ったベリスは、合掌をし、一礼をした。
「ありがとうございました」
リィフも合掌をし、礼を返すと、ベリスは「あらやだ」と呟いた。
「なにか」
「ビンビンになっちゃった。興奮しすぎたみたい」
「……」
ビンビンという言葉の意味はわかったが、わからないフリをしておくことにした。
<今のうちに始末しておけ。こやつは後顧の憂いになる>
ルルスファルドは真剣な口調で言った。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回は明日朝更新の予定です。
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それではまた。




