岬 美麗の思惑
私が黒咲様を好ましいと思ったのは、幼い頃親に連れて行かれたパーティでのことでした。
どこかつまらなそうに虚空を見つめていた男の子。どこの家の方かは存じ上げませんでしたが、その容姿もあってか少し気になっていました。
でも、私は日本でもかなり上位の財閥であり、このパーティの主催を務める黒咲財閥の御子息とどうにかして仲良くなり、婚約するように、とお父様から言いつかっておりました。
いくらあの男の子が気になったとは言え、私のような財閥の娘はどれだけ自分より上の財閥の方と結婚できるかが求められます。
さっきの男の子のことは忘れて、黒咲財閥の御子息様をお探ししなくては…と思っていたところでした。
先程の男の子が壇上で黒咲財閥の跡取り息子として紹介されたのです。
私はこれは運命に違いないと思いました。
そこからなんとか黒咲様にお近づきになろうと思いましたが、挨拶が終わるとすぐに姿を消され、そこからお会いすることはありませんでした。両親もガッカリしていましたが、高校生になったら同じ学校に入るだろうと言われてずっとまたお会いする日を楽しみにしていたのです。
そして私は高校生になり、見事に生徒会長として新入生歓迎の挨拶をしている黒咲様を見つけたのです!
ずっとずっと、「私の婚約者になる方」として恋焦がれていました。
絶対に黒咲様と婚約してみせますわ。
この学年で1番大きい財閥は私ですもの。
上の学年はどうか知りませんが、あの日パーティで挨拶をした方々で私と黒咲様と近い年頃の令嬢は私よりも小さい財閥の方ばかりでした。 あのパーティは殆どの財閥が招待されていましたし、そうなるとライバルの中には高確率で私より上の財閥の方はいないでしょう。
あぁ。これも運命かしら。
早く黒咲様に出会いたい。
「榎本さんには、負けませんわぁ…」
殿方に好まれるねっとりとした喋り方を意識しながら、微笑んだ。