榎本 ナナの思惑
この如月学園に入学して3ヶ月。
生徒会長の黒咲先輩に一目惚れして3ヶ月。
私が黒咲先輩に一目惚れしたのは、入学式の生徒会長挨拶を見た時だ。
今まで見たことのないくらいのイケメン。
私が見てきた今までのイケメンの概念を覆すくらいイケメンだった。
元から私は面食いだが、黒咲先輩は、あの黒咲グループの御曹司だ。顔も良くて家柄もいいなんて惚れるに決まってる。
笑ったところを見たことがないが、無愛想なとこもまたいい。寧ろ自分だけに微笑んでくれたら最強じゃないか。
同じように入学式で黒咲先輩に惚れた同級生は多い。
でも!なにを隠そう私は1年生の中で一番可愛いと言われているんだ。
私自身、顔だけには自信がある。
生徒会へ立候補したい旨を生徒会室に提出しても全くもって返って来ないが、私の顔を覚えてもらえれば入れてもらえるはずだ。
「とは言うものの、出会う機会がないんだよなあーーー」
1年と2年は校舎が違う。登下校する門さえ違う。渡り廊下はあるが、基本的に行ってはならない決まりがある。
「あらぁ?榎本さぁん。ため息なんてついて如何しましたのぉ?」
でたな。岬グループのご令嬢。岬 美麗。
同じく黒咲先輩に恋心を持つライバル。
美麗もこの学年でトップレベルに可愛いとチヤホヤされている。
まあ、私は美麗と違ってこんな誰にでも媚びうるようなねっとりした喋り方しないけど。
「美麗さん。別にちょっと考え事していただけよ」
「あらまぁ。ため息なんて幸せがにげますわよぉ?でも、安心なさって。貴方の幸せが逃げた分、私が黒咲様と幸せになりますわぁ~」
「はぁ!?美麗さんなんて家柄が私よりちょっといいだけでそれ以外は私より劣っているじゃない!私を押し除けて黒咲先輩と結ばれると思わないでよ!」
そう。こいつに私が劣っているのは家柄だけ。でも御曹司やご令嬢の付き合う、結婚するにあたって最も求められるのは家柄と言っても過言じゃない。
で、でも私の家柄がそこまで悪いってわけでもない。絶対黒咲先輩と付き合うのは私なんだから!