少年の姿をした…
できるだけ用語の説明はプロローグで完結するはず。
あと、前回の話に一部修正。
たとえ愛されてなくても」を、なくした
不意に、玄関から音が鳴った気がした。
なんでしょう?姉さん…にしては些か早い…
「どなたかいらっしゃるか」
今度は声が聞こえました。少年でしょうか…少し尖った声がドアの奥からハッキリと聞こえました。私は作業の手を止め、玄関へと向かいました。
「少々お待ちください。」
作業部屋にいるせいで、足場がおぼつかない。若干焦りながらも、ものを踏まないように足踏みをする。
(やっと着いた…)
ドアを開ける。するとそこには、目の下に濃いくまを作った少年が立っていました。私が顔を出すと少年は私の方を見上げ、こう言いました。
「命の神使はいらっしゃるか。」
私は一目見て、どことなくこの少年に違和感を覚えました。どこか既視感と言いますか。少年とは初対面なはずなのに、どこか見覚えがある気がしました。
「いいえ、今はいらっしゃいません。」
「そうか…」
命の神使つまりは姉さんの事なのです。姉さんはまさにその命の神使の仕事で家にいない。それを告げると少年は残念と言いたげな表情を浮かべた。いつもならば、ここで追い返してしまうはずでした。ですが何故でしょうか、私は彼の話を無性に聞いて差し上げようと思いました。
「良ければ話を聞いてもよろしいでしょうか?」
「あなたに?」
「良ければです。無理にとは言いません。」
なぜこうまで言ってしまったのか、私はやはり言葉を取り消そうとしました。
「すまない。たのむ。」
しかし彼の方が先に、話をすることに了解してしまいました。先手を打たれた私は、話に誘ってしまった事を少しばかり後悔しました。仕方なく私は彼を家にあげました。
「そちらにおかけください。」
私も水を配ってから向かいの椅子に腰掛けました。
「私の名前はミコト。ここで命の神使の補佐をしております。あなたの名前は?」
「…俺の名前はアヤト、訳あって命の神使に話をしに来た。」
「その話、というのは。」
私が尋ねると、彼は少し口をつぐんでから私に尋ねた。
「転生門から多くの異世界人が、転生あるいは転移して来ていることをあなたは知っているか?」
転生門、それは異世界と呼ばれるここより外の世界の生命の出入口である門のことです。その門から転生者と呼ばれる異世界の方がやってくることは、誰でも知るところでしょう。勿論知っていると、私は即答する。すると彼はまた、今度は少し不安の混じった声で私に尋ねた。
「では、その異世界人達が辿る末路をあなたは知っているか。」
「…さあ。」
私がそう濁して返すと、彼はその返事を知っていたのでしょう。不安と混じっていた微かな希望のようなものがなくなり、かわりに淡々と諦めたように語り始めました。
「貴方は知らないかもしれないが、彼らは永遠にこの世界をあてもなくさまよっている。器が死んだ後も、魂だけでこの世界を徘徊している。」
彼の話に驚きつつも、私は無言で彼の話を聞き続ける。
「それは何故か。そんなのは知らない、なんだって関係ない。問題なのは彼らが孤独であり続けることだ。それも永遠にな。それって、救われないだろ…!」
彼の口調は段々と熱を増していく。
「信じられるか?勝手に俺たちを呼び出しておいて用が済んだら元の世界には返せない…挙句の果てに生まれ変わることすら許されず!誰にも見られる事も!愛されることも!話をすることすらさせてくれねぇ!それっておかしくねぇか!」
彼はとても悔しそうに、嘆き、怒りを吐き出しました。
「それってあまりにもひでぇ話だとっ…すまない、つい熱くなった。」
「いいえ、お気になさらず。」
私はやはり驚いています。まさかとも思っていなかった結論に至った彼には、久しぶりに驚かされました。まさか私以外にもそれを知る人がいるとは。もしかしてと思いつつも、私は確認します。
「それで、命の神使に何を?」
「…命の神使は転生門の守護者と聞く。俺は門を閉めに来たんだ。守護者を倒して、俺は門を閉める。」
まって、予想の斜めを行かないでください。




