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第37話 ギルの悩み

前回のあらすじ!

前回はいつも通り、作者の詰めの甘さが一段と際立った会でした。とうとう、大きめの内容変更をやらかしやがったんです。


ということで、変更点です。


アリルを殺したい衝動に駆られた勢いで、ネックレスを奪っちゃったヒーラン。

結局、奪うという形を取っちゃったけど、可愛い妹アリルのためだもの仕方ないよね。

いろんな積み上がった厄介ごと、今は考えを放棄しよう!

みたいな感じの話でしたが、


アリルに、そのネックレスは今の貴女に似合うものではないわ。

と諭し、今のままでは似合わないから、私に預けなさいと提案。

もともと、加工し直して、何かしら方法を考えて、返そうと思っていたヒーラン。しかし、アリルは何を思ったか、自分がヒーランから見ても立派な貴族に慣れたら返してね。と、提案。

仲良く出来ないのに、難しい事言うのねと、笑いつつも、貴女がディアネル籍でなくなったら考えるよ。と、はぐらかします。

そのまま、ギル様がタイミング悪くきて、終了。


ヒーランは、約束は守れないかもしれないけど、ネックレスは立派にして返そうと思い、デザイン作りに没頭しました。


こんな感じです。思ったより、長くてすいません。では、引き続きお楽しみいただければ幸いです

僕は僕よりもヒールの方が優秀である事を疑った事はない。そして、それを妬んだ事も特にない。

今、ダンスホールで僕の隣に佇む、ヒールの姿は、透き通り輝きを放つ水色の髪に、大きく垂れ下がった瞳を持ち、そこに落とされた泣き黒子、姿は大きな曲線を描き、見る人を魅了している。少し触れれば簡単に壊れてしまいそうな、そんな危うさを感じさせるのに、微笑む姿には、全てのものを包み込みそうな、一種の強さを感じてしまう。彼女を見て湧き出る感情は、美しい以外にありはしないだろう。だからこそ、そんな彼女の隣にいる資格があるのかと、辛く思う事はあるのだが。

それでも妬みに繋がった事はないのだ。僕が彼女に向ける不安は、別の形であるもので、彼女の存在に嫌気がさしたものでは全く無いのだから。だが、そんな噂を流すものや、彼女を悪く言うものは、割と多くいる。今も彼女は多くの感情に晒されているのだろう。

結局は、それらの者たちも彼女を妬んでいるに過ぎないので、僕も気にしてはいないけど。

同様に、僕自身を陰で無能呼ばわりしていても、気にはしなかった。それで、憂さが晴れるなら、それで良いと思うし。

国にとっての実害がないのなら、僕はある程度の事は、寛容でありたい。それが僕が常日頃から思っていた事だった。


ヒールとのダンスが終わると何人かの令嬢から視線を感じた。皇子として、この場だけでも対応はするべきなのだろう。それらしい会話とともに、新しい相手に手を差し伸べる。

僕はある程度、ダンスの相手をしてから、休憩室に移った。そこでまた、ヒールについて考えた。


僕は、国にとって実害がなければ、それで構わなかった。裏で言われる分は気にしないし、貴族として、すべき最低限を守るなら、後は自由にさせてあげたかった。けれど、ヒールだけは、僕の中で憂いが拭えなかった。僕も皇子だ。先祖代々継がれてきた、この国の為なら、なんだってしたいと思うし、辛くても頑張る気持ちはある。だが、僕を要らないとされる事だけは受け入れられなかった。

ヒールが僕を傀儡として、国を裏から乗っ取るつもりなら、まだ良い方かもしれない。それ以上に、王族を不要とされてしまうのは、僕としても困るのだ。


ヒールは法律や制度、事業に関して様々な意見を提案してくれる。それらはどれも理に適っていて、面白いという人は多い。けれど、彼女の意見には、国民の大勢に利益があるかもしれないが、確実に貧困に困るような人が出ても、それらに対する対処なんかは、一切無い。ヒールはいつも提案はするが、無理に考えを押し通したりはしない。決めるのは、僕や仕事に携わる人に一任するのだ。

その無関心さが、僕は怖く思う。今はまだ、立場が子供の為、一つの意見という程を取っているのかもしれないが、いずれ権力を手に入れたら、自由に出来るので、今は積極的で無いだけのようにも思える。


彼女なら、王族のみが路頭に迷ったとしても、その結果、国民全員に利となるなら、そんな法案すらも考え兼ねないとずっと思っていた。または、僕を要らないと捨て置く事も考えられると思っていた。

彼女が敵か味方か、ずっと何を考えているのか、わからなかった。そんな彼女に何も言えない、自分も不甲斐なく思っていた。

そう思ってきた。それが学園に入るまでの僕だった。


僕だったのだが、学園に入って彼女の噂には、また新しいものが追加された。

それが、ディアネル伯爵令嬢への嫉妬だ。


学園に入り、僕とヒールの会話の場面が減り、そして突如現れたアリル嬢。彼女と二人で会話する場面を見られたらしく、噂が生まれていった。

そして、それにより付随して生まれたのが、ヒールがアリル嬢を虐めているという噂だ。


しかしながら、僕はヒールとアリル嬢の関係は知っている。アリル嬢がヒールの元で従者として働いていた事も、そして、アリル嬢がヒールをどう思っているかもだ。

ヒールについて探りを入れたくて、アリル嬢に色々と聞いてみたが、彼女がヒールの事を凄く尊敬していることしか、わからなかった。けれど、そんな相手をヒールが虐めるとは思わなかった。


思わなかったが、ここで一つの疑念が生まれた。ヴィルランク家とディアネル家の繋がりだ。

ディアネル家とヴィルランク家は、どちらもフェルナンド王国で3本指に入る貿易が盛んな領地を持っている。資金も豊富だ。そんな2組が手を組めば、国家の危機を感じずにはいられない。


けれど、初めてアリル嬢の話を聞いた時、少しは考えもしたのだが、王家に向かって、こんなにも分かりやすく繋がりを見せるだろうかと思い、心の隅に追いやっていた。


しかし、学園での生活が進んでいくにつれ、その疑念は大きくなり始めた。

ヒールは学園に入ると、仕事が忙しく話す機会が減った。その時に、アリル嬢を気にかけて欲しいと言われたし、僕の考えた二つの家の関係を考えれば僕もそうすべきだと思った。

そして、それを利用して僕もアリル嬢からヒールの話を色々と聞いたが、特に疑わしいことは何もなかった。これが、アリル嬢は何も知らされていないからなのか、本当に何も無いからなのかはわからないが。

だが、アリル嬢を学園では虐めているように見せかけて、対立関係を演出し、本当は裏でディアネル家とやり取りをしている可能性も考えられるのでは無いかと思い始めた。アリル嬢は囮役なのかもしれないと。


この考えは月日が経つにつれて僕の中でも大きくなり始めていた。

そして、この考えが王宮の方でも極一部で噂されるようになってきたのだ。アリル嬢の事を知っているのは、王宮でも少ないし、ヴィルランク公爵である宰相の耳に届けるわけにはいかないから。その為、小さくはあるが疑いの目が向けられている。

彼らも貴族の一人だが、実家を継げず王宮で役職を得る道を選んだもの達ばかりなので、生まれ故郷よりも、王宮の者として動いてくれる人達ばかりだ。その為、何処かの地域を敵視したり、贔屓にしたりはしない。

王家以外には、平等的な位置を持つ彼らが言った言葉だからこそ、僕の中での疑念は更に強まることになった。


だが、疑問に思う事もある。本当に、ディアネル家とヴィルランク家が反逆を企てていたのなら、何故ヒールは僕に婚約破棄をしても良いと言ったのか。ここがわからない。騙し通してしまいたいのなら、僕や王家の動向を探りやすい、婚約者という立ち位置は手放したくないはずなのだ。にもかかわらず、手放すと言った理由はなんなのだろうか?


今までの考えが全て違い、ヒールに好きな人がいて、その人と結ばれたいからこそ、悪態をつき僕の心を離したい。皇子である僕に、ヒールがそんな事を言うことは出来ないだろうから。そんな理由だけならば、ヒールを惚れさせることの出来なかった僕が、身を引くのは仕方なく思うし、ヒールの為にも、別れようとは思うけど。ヒールからはそんな様子が一切見て取れないのだ。これといって仲の良い異性は知らないし、そんな話も聞かない。

なのに、ヒールは僕に別れても良いと言うのだ。そんなに、僕では嫌なのだろうか?そう思ってしまうほどに。


今のままでは、駄目だ。彼女の心のある場所を探さなくては。


最近は、二人になっても近況報告や当たり障りの無い会話しかしていなかった。


ヒールやヴィルランク家が反逆を企むのなら、それは止めなければいけないし、止める為にも、探りを入れるか、彼らを捕まえなければいけない。


逆に、ヒールが僕と、結婚したく無いだけなら、そこも話し合う必要がある。本当に婚約破棄をするのか、それとも僕に求めるものはなんなのか。


とりあえず、一つ聞いてみるのが、正しいだろう。もし、反逆が最終目標だったとしたら、上手くはぐらかされるかもしれない。けれど、他の可能性を潰す事が出来れば、こちらも行動に迷いがなくなる。その為にも、今から少しずつ目星をつけなければいけないはずだ。


僕はそう心に決めて、一度夜風でも浴びたいなと思い、中庭に向かった。その先でアリル嬢に出くわした。

彼女はヒールの味方ではあるだろうが、何かを聞かされてはいないのだろう。彼女に対してする警戒は特にないはずだ。


とすると、何を話すべきか。


『こんばんわ。ディアネル伯爵令嬢。楽しめてるかい?』

『あ、は、はい!こんばんわですわ。皇子様。』


アリル嬢は、胸の中心で何かを握り締めながら返事をくれた。少したどたどしかったが、笑顔は上手い。

そういえば、先程、今隠しているであろうネックレスが出てきて、騒ぎになっていたな。


『そのネックレスは大切な物なのかな?』

『あ、はい。これは大切な人からいただいたもので、私の宝物なんです。いつも肌身離さず持ち歩いていて、出さないように心がけていたんですが。』


まぁ、そうだろうとは思ったが、貴族社会で付けるには、見劣りする品だとは思ってしまった。また、下手な噂が増えてしまうのだろう。


『そうか。それだけ大切な物なら持ち歩きたいのはわかるけど、付けるのはやめた方が良いよ。今日のように面倒な事になるからさ。』

『そうですよね。それは、わかっていたんですが。。。』


なんだろう?わざと、虐められるように仕向けているのだろうか?そうなるように仕組まれているのか?


『可哀想じゃないですか。アクセサリーなんですもの。着けてあげないと。』

『ふふ。』

ちょっと、声を出して笑ってしまった。まだ、少し口角上がるし、皇子として不味いな。気を引き締め直そう。


『その考えでは、貴族は駄目なんだよ。残念だけど。』

『そうですよね。』

この子が敵とはやはり思えない。スパイとして相応しくは無いと思う。けれど、こんな子だからこそ、守りが弱くなるのかもしれない。ヒールなら、上手く使いそうだとも思った。


『そういえば、ダンスはあまり得意ではないの?』

『いえ、そんな事は無いのですが、最後のステップはよくわからなかったですね。』

『あれ、ごめんね。上手くリード出来てなかったよね。』

『い、いえいえ、皇子様は凄かったですよ。他の方と比べても、凄く踊りやすかったですし。あ、あの出来れば、ダンスの指南を少しして欲しいくらいです。』


同じ日に、婚約者以外の令嬢と二回以上踊るのは良く無いが、この場は非公式だし、教えるだけなら別にいいか。位置を少し良ければ廊下からもこの辺りは見えないだろう。

そう思い、その場で少しダンスの練習の相手をしてあげた。

僕としても気晴らしとしては、ちょうど良かった。


練習としては短すぎる、10分にも満たない時間であったが、気分転換は出来た。


『ありがとうございます。皇子様。やはり、ヒーラン様に聞いていた通り、皇子様は優しい方ですね。』

『別にこれくらいなら、誰でもしてくれるよ。』


そんな感じで、アリルとは一度別れた。


その後、ホールに戻ると、また別の令嬢達の相手をして過ごした。



そろそろ時間になる頃かと思い、辺りを見回すと、ヒールが見当たらなかった。こういう時は最後くらい一緒にいるべきだと、彼女も言っていたはずなのに、見当たらない。


何かあったのだろうかと、探してみると、少し揉めているような声が聞こえた。

ネックレスがどうとか聞こえていたし、手前に見えるのはアリル嬢か?

既に面倒な事になっているのだろうかと思い、急いで声をかけてみたら、その先にいたのはヒールだった。


二人の雰囲気からも、揉めていたという雰囲気ではなかったが、アリル嬢の首元のネックレスが一つ無くなっていた。


僕は平然を装いつつ、二人にもうすぐパーティも終わるので、ホールに戻るように伝えた。


二人は微妙に距離をとって、戻っていったが、何だったのだろうか?


やはり、彼女達に虐めのような雰囲気は感じられない。けれど、あれほど大切にしていると言った、アリル嬢がそのネックレスを外しているのに、悲しげな雰囲気はなかった。


ヒールがアリル嬢を注意しただけ?いや、あれから時間はあったのだし、ヒールがアリル嬢を慰めていた可能性もある。

ディアネル家とヴィルランク家の対立を演出するために、アリル嬢のネックレスを奪わせて、噂自体は流しつつ、アリル嬢へのアフターケアをしていたのかもしれない。


アリル嬢は、ヒールに言われれば、なんでも信じてしまいそうにも見える危うさがあったし。アリル嬢を上手く利用しているのかもしれない。


結果がなんであれ、答えがわからないことばかりだ。

ヒールに探りを入れつつ、最悪の事態にも備えないといけないだろう。


僕は彼女を捕まえ無ければいけない場合の準備とともに、ヒールにどう探りを入れるか、考えながら、一人でホールへ戻っていった。

思ったより長かったですが、今回は変更点ないです。。。たぶん。


シーンを考えた結果、前回の流れでダンスパーティを選んだ結果、思ったよりも長くなってしまいました。


とりあえず、色々あったのにここまで読んでいただけて嬉しいです。感謝です。ありがとうです

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