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第1話 プロローグ 私とは

わかりにくいところも、あるかもしれませんが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。

わかりにくいところなど、指摘してもらえると嬉しいです。

 8歳の時物凄い高熱で寝込んだことを覚えている。その日、使用人のみんなも凄く大変で、私の為にバタバタと忙しく動いてくれていた気がする。周りについては、あまり覚えていない。けれど、その日に見た夢、いや、その日からたまに見るようになった夢のせいで、その日のことをよく覚えている。


 私は現在、ヒーラン・ヴィルランクという名前でフェルナンド王国の公爵令嬢をしている。それは、8歳の時もその前も、そして現在も変わらない事実で、私は私以外の何者でもないと実感している。それでも、私は別の人の記憶のような何かを持っている。それもまた、事実なのだ。私は、8歳の日から一定の夢を見る。

 その夢は1人の青年の視点で紡がれる。その世界の彼は、日本というこことは全く違った国に住んでいた。記憶の節々から、この国よりは裕福で豊かな国のように感じていた。


 けれど彼は狂っていた。明らかに可笑しな思想の持ち主だった。彼は殺人犯だ。3人殺してる。しかも、狂った理由で。

 1人目は小学生の男の子。学校がいくつかに分かれてるみたいな部分も気になったが今は省こう。彼は、その男の子が、週に2回お家で1人になるのを知っていた。男の子は、至って普通の男の子。週に3回、サッカーの習い事をして、プラスで土日に試合があれば行くし、無ければ片親の母と買い物や遊びに行くようなそんな感じ。サッカーの無い、2日間は学校から帰ると遊びに行くか、お家でゲームという感じ。金銭面はそこまで不自由していなかったため、寂しい思いをさせてる分、ゲームなどはある程度買い与えていたみたい。限度はあるけど。なので、好きなゲームが出ると、しばらくの間遊びに行くことが減り、お家に1人になる事が多かった。彼はここを狙ったのだ。お家に1人で、親など他の人が直ぐに帰って来ない時間を見つけ、彼はこの男の子を殺した。

 関わりも何もなく、用意周到な彼は完全犯罪をやってのけた。

 2人目が、2年目くらいの新婚さんの主婦。夫は出張が多くそれなりのペースで家を空けていた。ご近所関係が希薄で、周りのアパート住人も働き詰めで、話し相手が少なかった。だからといって、不貞を働くような女性でもなかった為に、狙われたのだった。

 そして、最後の3人目が女子高生。ここは、共働きの両親で、女子高生は両親の代わりに、家事などを行なっていた。必然的に家にいることも多いが、友達などと、遊んだりするため、不定期に家を空けていた。それでも、テスト期間などはきちんと帰り勉強をする部分があった。いや、そうやって賄っていたとも言えるかもしれない。けれど、その習慣がわかっていた彼は、テスト期間に狙いを定め、計画を組み立て彼女を殺害した。そして、たまたま不調で仕事を早抜けし帰って来た父親に見つかり、捕まった。そして、死刑となる。


 これが、私にある彼の記憶の約7割近いところだ。こんな記憶を思い出し、8歳といっても、ある程度の公爵令嬢としての教育を受けてきた私としての見解は、彼は私とは別物だし、彼を前世とかそういうものとして認めるわけにはいかない。彼が異常者で、この国の常識からも、彼の国の常識からも外れていることは、断然理解できたからだ。


 しかし、この記憶は定期的に私の元にやってくる。それも、この夢は他の夢とは違っていつもリアルなのだ。夢と例えたが、それと逸脱している為に、一概に夢とは言えないのがもどかしい。彼の考え方や気持ち、殺人を犯した時の感覚、それがなんとなく私の中に浸されるのがよくわかる。それが本当にイライラして、腹ただしかった。私が犯した訳でもないのに、罪の意識への罪悪感と拭えない居心地の悪さ、後戻り出来ず、反省したところで、実際私がした事ではないのだ。結局、私には何も出来ないとしか言いようのないこの感情を何故定期的に浴びせられなければいけないのかという気持ちが心を占めた。


 だから、私は考えた。彼の彼なりの考え方について。彼は殺人をする際、必ずする事がある。それが出来るかどうかを、知る為にも入念な準備を欠かさないのだ。それは、その殺した人間の生きた環境に触れる事。

 彼は必ず、ターゲットを家の中で殺し、殺した後も、家に人が直ぐには来ない状況を好んでいた。死んだその人が好きだったことに触れる為に。

 男の子だったら、ゲームやサッカーのスパイク。きちんとスパイクを磨いて綺麗に整える男の子だったようで、それを追うように、スパイクを磨き、最近遊んでいたと思われるゲームで遊んだ。

 主婦の時は、夫の好物の料理を作り、好きだった乙女ゲームを遊び1ルートクリアした。

 女子高生の時が、一番狂っていると思った。彼は彼女のスマホで友達とメッセのやり取りや、SNSに投稿していた。まるで彼女のように。


 執拗にその人の好きだったことを、その人の代わりに行うことを好んでいた。その人が好きだった物に触れ、同じことを行いどんな気持ちで触れていたのか考えて、そしてそれにもう触れる事が叶わない事を思うと、彼の心は満たされた。人の幸せを奪ってやったという感覚と、その上で自分は生きているという充実感が彼の生命力を満たしていた。


 私は彼の考え方は狂っていると思った。倫理的観点から見たとき間違いだらけのはずだと幼いながらに理解していた。それでも、疑問に思う所もある。人は他の生物を食べ、命を満たし生き抜く糧とする。彼にとってのその対象が、他人の幸福を食す事であっただけで、他の人と何ら変わらないのではないかと。

 私は、人は生きる理由が無ければ生きていくことは、難しいのではないかと考えている。生きる事に大変な人は、生き続ける事で、幸福感や生き延びた事で無意識化で、生きる事を生きる糧としている。それは生物らしく生きていると思うが、逆に生きる事自体は、難しくない人間としては、人間としての新しい欲が必要とされると考えている。それが、彼にとっての殺す事でしかなかったのだと、私は思う。だとしても、生きる事に執着しなくなったのは、集団の中で生活し、豊かになっていったからと考えれば、彼の行動は許されるものではない。


 ただここで、私の視点に移して考えると、少し分からなくなる。私の今住むこの世界は、彼の世界と違って、戦争などが起こる可能性が十分にありえる世界だ。ここ数十年戦争はないが、うちのお爺さんは、戦争で戦功を上げている。人が人を殺す事を当たり前としている世界と言ってもいいのではないだろうか。そして、人から人が戦争によって、土地や人を奪って幸せになっていると考えれば、彼と同じなのではないかと、一瞬考えが揺らいでしまう。

 実際は、全然そんな事はなく、彼のは独り善がりな完全なる傲慢でしか無いのだが。


 しかし、だからこそ、私はあまり言いたくはないが思ってしまった事がある。私は私が人を殺そうとしたら、どう思うのだろうと。

 今わかっているのは、公爵令嬢としては間違っているという事くらいだろうか?


 そんな戯れ言のような事を考えている間に、私は10歳になった。そして、少し私の取り巻く環境と、私にとっての考え方が変わった。

 私は、人の死や殺人という事について知りたくなったが、素直にそれを聞くわけにはいかないと思っていたし、聞いたところで、子供範囲の返答しか見込めないと思っていた。だから、勉学に励む事にしたのだ。歴史の授業などでは、戦争の話なども聞けるし、お爺さんの活躍したことも、無邪気に聞けばある程度の事は聞くことが出来た。ただ、それだけに知識を向けるわけにはいかないので、他の勉強もきちんとした。

 結果、私はこの国の公爵や侯爵の娘の中で一番、頭が良くなっていたらしい。見た目も良く、頭も良く、公爵令嬢として、生まれも良い私を大人達は持て囃してくれた。

 私はそれに満足していた。多少可笑しな考え方を持ってはいるが、その代償への対価がこれなら、悪くはないかなと感じていた。結局のところ、私は子供だ。褒められればやっぱり嬉しい。

 そして、そんな噂が王宮にも届いたらしい。私は王妃様にお呼ばれする事になった。まだまだ子供ではあるから、非公式な会ではあるが、王妃様の茶会だ。粗相をする訳にはいかない。今まで以上に、マナーを覚え直した。


 茶会は恙なく進められたが、途中でとある人物を紹介された。この国の第一皇子様のギルダント様だ。見目麗しく、パッチリと開いた二重の碧眼に、金色の短くそれでも整えられた髪は、絵本で見た皇子様とはこういうものだろうなと、思わずにはいられなかった。

 だから私もなんとなく惹かれた。イケメンで王族とか優良物件じゃん的なくらいには。

 まぁ、だから媚びくらいは売っておいて悪くはないだろうなと思い、愛想を振りまいた。

 皇子様もそれに伴うように愛想良く返してくれた。たぶんだが、皇子様でもう10歳だ。飽きるほど人には媚びを売られているのだろう。返し方が上手すぎた。だからあれは愛想なんだろう。


 しかし、私たちは子供ながらにそれが上手かったのか、何なのか。その後、何度か王宮にお呼ばれした後、私達の婚約が決まっていた。


 断れる訳でも無いし、断る理由もない。向こうは私を好いている気はしなかったが、婚約してしまったのだ、これから少しずつ歩み寄っていけば良いかな、なんて楽観的に考えてしまった。


 しかし、その日再びあの夢を見る。いつもどおりでモヤモヤする夢だが、ある場面で私は起きてしまった。初めてだった。あの夢は夢だと思っているのに、見始めると、彼の死刑当日までの走馬灯のような物語を最後まで必ず見ないと起きれなかった。しかしだ。今日初めて起きたのだ。


 2人目の殺人現場で、彼が主婦の趣味の乙女ゲームが開始され、最初の衝撃がやってきた。皇子様を大きくしたような、ギルダント様と同じ名前のヒーローが出てきた。そして、次の衝撃が訪れる。私を大きくしたような、ヒーラン・ヴィルランクという、悪役令嬢が現れたのだ。


 衝撃のあまり、ヒーラン・ヴィルランクの登場とともに、飛び起きてしまった。途中で起きてしまったのは、初めてだったが、それ以上に思ったことがある。






 私は悪役令嬢なのだろうか?



ここまで読んでくれていたら、ありがとうございます。

冒頭のため、説明に近い文章ですいません。

次の話からは、もう少し会話なども取り入れていきたいと思っています

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