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閃夕

作者: 多我野

 プラネタリウムで宇宙を知った気になるほどおめでたい奴なら、昨日のあの事件で私のことを全て知った気になっているかもしれない。あいにく、私も宇宙もそれほど単純にはできていない。

 真っ暗で何も見えない。ベッドの隅に膝を抱えてもう何時間座っているのだろう。のどが渇いた。お腹がすいた。でも、どうしてもここを動く気力が起きない。めまいと吐き気がさっきからひどい。もう限界だ。鋏が机の上に転がっている。金属部分に触れてみると、ひんやり気持ちいい。首筋にあててみる。それから、口元へ。舌に刃先を当てると、背筋を悪寒が駆けのぼった。机のライトスタンドのスイッチを入れる。ワンピースを脱ぎ捨てる。それから等身大の鏡に自分の姿を映してみる。睨みつける。笑いかける。何だか死にたくなってくる。自分の身体に触れてみる。胸から下腹部にかけてそっと撫でまわすように。今度はその手を顔の方に。触れる度、冷たさに身体が拒もうとする。いつのまにか手先が冷たくなっていたのだろう。

 あいつだけは許さない。絶対に許さない。頭の中でさっきから同じ言葉を復唱している。半分自分の意思で、もう半分は心臓を掴む見えない手によって。なんとなく爪を噛んでみた。そんな癖はないのだが、とにかく少しでも気を紛らわしたい。違和感があった。どうやら爪を噛んでいたはずの歯が、いつのまにか指先にあたっていたようだ。あわてて、噛んでいた部分を見てみると歯型がうっすら浮かんでいた。それを見てなんだか、がっかりした。血でも滲んでいれば面白かったのに。

 私は狂っている。狂ったふりをしていたら、いつの間にか本当に狂ってしまったんだ。首から下が恐怖で震える。なのに、なぜか私は笑っている。

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