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神様のモニタリング 第一章 ~人類滅亡回避のススメ~  作者: 片津間 友雅
学生 中等部編

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第92話 ■「始動 農業改革」

 その日の夜――


 アリシャとリリィは長旅の疲れが出たのか、夕食後すぐにウトウトしだして今ではベットの上で夢の世界だろう。


 ベルが淹れてくれたお茶を飲みながら執務室に集まる。

 集まったメンバーは、僕、ベル、そしてファンナさんだ。


「ファンナさんお待たせ。母さんからの連絡を教えてもらえるかな?」


 僕はファンナさんに切り出す。

 ファンナさんがいれば母さんとリアルタイムで連絡を取る事が出来る。

 いわば人間電話だね。


「はい、それではエル様からお送りいただいた農業改正案についてです」


 ファンナさんはそう言うと一枚の紙を取り出す。


 それは、バルクス領の主要な町村の一覧。

 さらに現状の耕作面積と農民の人数が細かく記載されている。


「まず休耕地に牧草やクローバーを植え家畜を放牧する案ですが、

 レインフォード様もエリザベート様も大変興味を持たれています」


 その言葉にとりあえず一安心する。けれど……


「ですが、家畜の糞が地力を回復させるという理論が本当に正しいのか?

 に疑問を持たざるを得ないと……」

「えっ、そんな……」


 ファンナさんの言葉にショックを受けるベル。

 そんなベルにファンナさんは微笑みかける。


「早とちりしないでベル。理論が正しいのかが疑問なのであって。

 理論が間違っているという意味ではないのよ」

「あっ……」


 そう、父さん達はあくまでも理論の正当性が不明と言っているだけだ。

 つまりは理論の正当性を証明すればいいのだ。


「つまり、理論が正しいという実際の情報が欲しいって事だよね?」

「はい、その通りです。エル様。

 ですので、伯爵家が直接管理しているエルスリードの周辺の村三ヶ所で

 試験導入する事になりました」


 なるほど、この世界にも試験導入という考え方はあるようだ。

 確かに一度に全ての町村で導入するのはリスクが高い。


 もちろん、僕やベルは元世界の実績があるから失敗が無い自信はある。

 僕にとっては「家畜の糞を肥料にする。」と「三圃方式を四圃方式に転換」だと前者の方が容易でリスクが低い事は分かっている。

 だけどこの世界の人にとっては両方とも効果が未知数なのだ。


 領主として改革を行う場合のリスクマネジメントは必要になる。

 もちろん、貴族という立場を使えば、ほぼ何でもできるだろう。

 失敗しても平民に口減らしのために死ね。と暗に言えばいいのだから


 けれどその権力の使い方は人心が離れる危険性を多分に含んでいる。

 当たり前だ、自分のせいで失敗したのに死ねと言ってくるような領主を誰が敬うというのか?


 であれば、町村を説得できる情報があれば導入がスムーズになるのだ。

 町村の代表にとって未知の話であっても成功した情報があれば、それは自分の町村にとっても利益となる。

 だからより民を説得しやすくなる。


「三ヶ所での実施って言うのが限界値って感じなのかな?」


 そこで、ファンナさんが目を瞑る。

 おそらく母さんに精神感応で問い合わせているのだろう。


 いやはや便利だ。今後は手紙を出す必要が無くて済む。

 母さんと直接やり取りが出来ないのはほんのちょっとだけ不便だけどね。


「……何かあった際の補償を考えれば、あと二ヶ所は可能とのことです。

 増加をご依頼しますか?」

「……ううん、父さんと母さんが最適だと考えたんだろうから不要だよ」

「かしこまりました」


 数を増やせば試験導入の時点で生産量を少しでも増やすことは出来る。

 けれど、それには保障を行うための備蓄が必要になる。

 収入と支出の予想から三ヶ所が適切と判断したんだろうし無理する必要はない。


「試験導入としてはどれくらいの期間を想定しているの?」

「三圃方式ですので、三年で一クールとなります。

 今年の春から二クールの六年で過去実績と照らし合わせるとのことです」


 今年の春から導入するとして僕が16歳になる頃に結果が出る感じか。

 こういった農業改革は時間が掛かるからこれでも早い方かもしれない。


「うん、わかったよ。母さんによろしくって伝えてくれるかな?」

「はい、かしこまりました」


 うん、とりあえず休耕地の地力回復問題は進捗があったと見ていいだろう。


「それでは次に、アインズ川流域の未開拓地の開拓についてですが……

 やはり難しいとのことです」

「やっぱり、そうだよね」


 まぁ、これは予想していた事だ。

 この案はいずれノーフォーク農法を導入する際の囲い込みを領主主導で事前に実施しておくことを目的としている。


 開拓と一言で言うが、開拓民が指定された場所に行って耕せば完成……

 なんて簡単な話ではない。


 この世界は魔物と賊(バルクス伯領はそこまでいないがゼロではない)がいる。

 開拓をするにしても、開拓民を守護するための戦力が必要だ。


 そしてそれらを養うための食料・住居が必要と大規模な投資が必要となる一種の大事業ともいえる。


「正確には将来的にはぜひやりたいが、それに先立つお金が無い……です。

 後は開拓民不足もありますが……」


 そう、現状のバルクスの収入を考えれば、そんな余裕は無いのだ。


「バルクス伯だけではないですが、地力回復不足問題が原因で

 耕地面積当たりの農民の数がかなり高くなっています」


 魔法による地力回復が出来ない農民たちは、少しでも収穫量を上げようと耨耕(じょくこう)、つまりは人力による鍬入れや雑草除去を頻繁に行う。


 だけれどそれは人件費という形で戻ってくる。

 結局、収穫量は微増、人件費増と収支に無理が出てきているのだ。


「ですから休耕地問題の改善があれば、収入増が見込めます。

 それと同時に、耕地面積当たりの農民数の適正化が行え、あぶれた農民を開拓民とすることが出来ます」


 ベルと話していた時と同じような事を父さん達も考えていたようだ。


「休耕地問題が解決されるまでは、候補地の選定・計画までに留めておく。

 とのことです」

「うん、現状はそれでいいと思うよ」


「了解しました。それでは次に新規農作物開発について……」


 僕とベルで考えた案が次々とファンナさんを通して検討されていく。


 実際には多くの案が、バルクス伯の収入を考えると様子見になる。

 だけど、父さん達から実施条件を明確にしてもらう事で、どんどんタイムスケジュールは出来ていく。


 こうしてバルクス伯の農業改革は静かに動き出したのである。

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