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神様のモニタリング 第一章 ~人類滅亡回避のススメ~  作者: 片津間 友雅
学生 初等部編

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第64話 ■「新顔(ニューフェイス)3」

「それでは、始め!」


 バインズ先生の宣誓を同時にレディアンド(名前が長いからレッドでいいや)は一気に間合いを詰めてくる。


 魔法対剣での対決の場合の定石だ。

 模擬戦で魔法において有利とされるのはその距離という事になる。


 二十mという距離は剣にとっては完全に射程範囲外だが、魔法にとっては直ぐ目の前と同じ意味だ。


 そして魔法は撃ちだしたものをただ避ければいい訳ではない。

 ファイアーボールであれば着弾後の爆風。

 エアストームであれば半径数mにわたる衝撃波。

 副産物で発生する現象も驚異的な威力を発揮する。


 それを防ぐためには術者に極力近づく以外にない。

 この世界は、当たり前だけれどゲームのようにフレンドリーファイア無効みたいなオプション設定は出来ない。

 であれば、近づくことで詠唱者への影響があり得る魔法を制限させるのだ。


 もちろん、魔法使いもそこは分かっているから試合開始前に魔法を待機状態で詠唱しておく。

 試合開始とともにぶっ放すのだ。


 レッドの速度は僕が予想していたよりも速い。

 まるで猛禽類を思わせるかのようなダッシュ力だ。八歳だというのに。

 これが天賦(てんぷ)の才というやつなのだろうか。

 二十mの距離を瞬く間に詰めてくる。


「よしっ! もらった!」


 レッドの間合いに入ると同時に右手に持つ剣で打ち込んでくる。

 うん、打ち込みのタイミング、鋭さも合格点。けど……


 ガッ!!


「なっ!」


 レッドの剣は僕に届く五十㎝手前で大きく弾かれる。

 まるで見えない壁に弾かれるように。

 もちろんそれはエアシールドによる防御。

 剣程度であればびくともしない。


「まじかっ! すげぇ!」


 レッドが吼える。だがその顔は喜悦。戦闘狂かな君は?

 そして、次にまさかの行動を起こす。

 不可視のエアシールドを足蹴にして大きく後ろに跳んだのだ。

 直後、レッドがいたところをアイスボールが高速で過ぎていく。


 僕としては、エアシールドにより攻撃が防がれたことによる膠着状態を狙っての魔法。

 それが(かわ)されたのだ。


 直感で自身の危険を察知できるのか。

 しかも、魔法を足場にしようなんていう発想が咄嗟(とっさ)に出てくる。

 それが出来る柔軟さ。戦士として十分な素養だ。


「すごい! これがバルクス伯秘伝の魔法か!」


 ……?、あぁ、そうだ、そういえばそんな()()だった。


 いかんいかん、苦し紛れに言った事がもう流布されていたんだと実感する。

 この世界はネットが無いから口伝(くちづ)てになる。その口伝ての伝聞速度を甘く見すぎていた。

 まぁ、娯楽自体がそこまで多くはないから噂話も娯楽の一つだしね。


 レッドと入れ替わるようにブルスティア(こっちはブルーと呼ぼう)が盾を前に構えながら体勢を低くし突っ込んでくる。


 盾は、攻撃を防ぐだけではなく第二の武器とも言っていい。

 盾術と呼ばれる武術もある位だ。

 盾の重量で相手を抑え込んだり、盾自身で相手を殴るなど用途は多彩にわたる。

 ブルーの盾の使い方を見る限り恐らく盾術を熟知しているのだろう。


 僕は魔法を呟く、それと同時にブルーの前方に魔法陣が浮かび上がる。

 そこから出てきたのは魔法の鎖(チェーンバインド)


 ブルーもラズリアとの魔法教導の様子を聞いて知っていたのであろう。

 向かってくる鎖の線上を避ける。


 けれど彼は知らない。

 奇しくもラズリアがズブかった為、披露される事がなかった誘導性を。

 避けたと思った鎖が方向を変える。


 それに気づいたブルーは盾で()なそうとする。

 その結果、盾には何本かの鎖が絡みつく。


 ブルーは何かを察したのか盾を手放し大きく後ろに跳ぶ。

 それと同時に盾に走る閃光(スパーク)


 ―― ライトニングバインド改 ――


 誘導性を持たせたチェーンバインド改が出来たので勿論、ライトニングバインドにも誘導性を持たせていた。


 ただ、魔法の鎖に帯電用のライトニング、誘導用のエアウィンドの魔法を三重にしたからかなり燃費が悪く、詠唱難度も上がってしまって多用は出来ない欠点がある。


 ところが、本邦初公開の魔法を避けられたという事になる。

 ブルーも勘はかなり良い。


(ま、避けられても問題ないけどね。)


 そう、避けられても問題ない。……イヤホントダヨ……ツヨガリジャナイヨ


 安易に魔法の鎖に絡まれてはいけないという、意識付けが出来れば良いのだ。

 しかも魔法の鎖も直線的ではなく誘導性があるタイプがある。という事も。


 実際に盾がスパークしたのを見て、二人の攻勢に迷いが出たのが分かる。

『女神の加護』で防がれるとはいえ、感電上等で攻めていけばいいと割り切るのは難しいだろう、頭でそう思っても体が動かないのだ。


 そりゃそうだ、感電するのが分かっているのに漏電しているコンセントを触りに行くのはただの馬鹿くらいだ。

 命がかかった実戦であれば活路を開くために……もあるだろうが、訓練でそこまでやる勇気はないだろう。


 そんな二人に対して僕は笑いかける。

 全ては順調、僕の想定通り……


「そっちが来ないのならば、こちらから行くよ。」


 と声を掛けて―――

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