第52話 ■「魔法と鉄の仲介を……」
リスティの魔法の訓練と上級魔法の訓練を始めて三か月ほど経ち季節は秋に移った。
この世界の一年は毎月三十日の十二ヵ月で三百六十日丁度と地球に比べてやや早い周期になっている。
季節的には地域にもよるけれど大体において春と秋が長く、夏と冬が短い感じだ。
ざっくりいうと
一月~二月:冬
三月~六月:春
七月~八月:夏
九月~十二月:秋
になる。十二月なのに気温が穏やかなのにはまだ少し違和感があるけどね。
リスティについては最初の意識付けが上手く行ったから順調に成長している。
毎日魔力をギリギリまで消費させて回復を繰り返すことによる魔力の増強も順調だ。
うーん、ギフト的に前線に立つことが前提になる能力だから軍事的な伸びは高いのかもしれない。
上級魔法については……戦争で無差別大量殺人を目的とした広範囲攻撃を主体としているせいで通常であれば使うには力が強すぎる。
使用位置を指定してから発動させるイメージだから、少人数戦では使い勝手が悪い。
うまく連携しないと味方に被害が出てしまう。
魔力消費も中級魔法の五回分くらいの魔力を一気にごっそり持って行かれる燃費の悪さ。
まぁ本来であれば複数人が同時詠唱を行う事で発動させることが前提だから仕方がない。
僕としても魔力の効率的な消費ツール位に割り切ったほうがよさそうだ。
上級魔法として使えそうなのは今まで手を付けていなかった召喚魔法と治癒魔法くらいかな?
さて、僕としてはここいらで重要性が高い調査したい事が一つある。
それは「なぜ鉄は魔法を阻害するのか?」だ。
まぁ、内容が内容だけにすぐにわかるなんて考えていない。
この中世レベルの技術力だと科学的な見地から調べようにも測定するための機材が無い。
ある程度予想して少しずつ確認していくしかない。
まず前世の世界でもファンタジー作品の中では
「鉄と魔法は相性が悪い」
はよくある設定だ。
理由として挙げられていたのが「妖精が鉄を苦手としているから」
うん、とっても抽象的だ。
まぁ、前世では妖精なんか現実世界で見た事なんてなかったし、そもそも魔法が(僕の知る限り)存在しなかったからそれで十分だった。
もう一つの理由としては「科学技術の象徴である鉄は、魔道技術と方向性が違うから」と言うのもある。
とはいえ、「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。」という法則もあったりするけどね。
前世での理由は空想世界の物語をうまく転がすためという意味合いが強かったと言えるんじゃないかな。
けど魔法が実在するこの世界では、鉄が魔法を阻害する物質として広く認識されている。
しかも鉄の傍で魔法を詠唱してもうまく発動しないという実体験もしている。
つまり僕にとっては空想世界の話ではなくなっている。
可愛い妖精さんのお茶目な仕業ですチャンチャン。
で終わらせることが出来ない。
うーん、とは言え取っ掛かりもない感じではあるんだよね。
今の所、僕の中で思いつくものとしては
1.鉄から出る磁場が影響
2.鉄が魔法力を吸収
3.詠唱する際の人体への何らかの影響
4.やっぱり妖精的な何か
かな。うーんどれもふわっとしている。
まず3については、除外できるかな?
というのも、離れたところで詠唱して鉄に向けてウォーターボールを撃ってみたところ鉄の目前……恐らく三十㎝くらい前で崩れていくかのように消滅した。
延焼効果が高いファイアーボールや速度が速いウォーターアローも同じくらいで消滅した。
ということは人体が原因ではないのだろう。
まぁ、鉄の存在を意識する事自体が駄目って言うのであれば話は別だけれど、一旦は対象外としよう。
とすると1か2なのかな?
1が出る物、2が入る物の違いではあるけれど。
1を理由として考えたのが鉄はNG、銀はOKってことだ。
たしか、銀は非磁性体の一つだったはず。
どこかの研究所が銀に磁場を持たせることに成功したとかいう記事を見た記憶がある。
そういう意味では銅や金も非磁性体だったはずだから何れかは試してみたいところだがこの世界では金や銅はどちらかと言うと希少金属になっている。
正確には銅は結構あるんだけれど鉄と同様、利用価値の低さから錬成技術が劣っている感じだ。
うーん、どうもこの世界の人は、魔法を基準に考え過ぎるきらいがあるよな。
なので銀の価値が恐ろしく高い。
そして鉄や銅、金は価値が恐ろしく低い。
前世で鉄のビルに囲まれていた僕からしたら鉄や銅は、むしろ銀よりも価値が高いんだけれどね。
しかし、もし磁場の問題となると絶縁体を検討する必要があるよな。
絶縁体ってどんなものがあるんだろうか?今度調べてみよう。
2だと本当に目に見えない、そもそもマナみたいなものが
実際存在しているのか?と色々と問題がでてくる。
ここら辺はベルに頼んで計測できるものをいずれ開発してもらおう。
……うん、結局なにも進捗は無かったな。
まぁ、この件についてはのんびり考えていく内容だからね。
とりあえず原因予想できただけ良しとしよう。




